とても素敵な作品でした。大好きです。続きを描いてもらえるなら心から欲するけれど、一方ここで終わるからこその作品だとも思う。
このお話、自分はハッピーエンドと考えている。菊次郎も愛されていたが、鴻が最終的に選んだのは司朗だし「司朗といたいから俺は戻る」と鴻は旅立ったのだ。少なくとも双方納得済で離
...続きを読むれ、時空を超えて想い合う認識が互いにあるという意味で切なすぎるハッピーエンドだと感じている。
飛行機が象徴として効果的に描かれているのがすごく素敵だった。青と言えば空と海。青い空で鴻が操る飛行機が海に映る姿を菊次郎は想像していたのだろうか。菊次郎を亡くしたばかりの孤独な司朗が飛行機を飛ばした時、鴻は司朗の元に現れて話がスタートし、最終シーンで鴻が菊次郎のいる時代に戻る時、司朗は再度飛行機を飛ばす。それが水辺に着地した時に鴻は消えており、幼い司朗と菊次郎が笑う写真は両親と笑う司朗のものへと置き換わっている。司朗への思いと共に元の時代に戻った鴻が菊次郎の未練を絶つように動き、それが成功に終わった証があの写真の変化だ。
そして、司朗は「あんた(鴻)の願いは叶えた 次は俺の番だろ」と言いながら3度目の飛行機を飛ばす。鴻に自分の元へ戻って欲しいという司朗の願いと共に飛行機は舞い上がり空の上で作品は終わる。飛行機が着地した時に鴻が戻っているかどうかは読者の想像に委ねられている。
余談だが、菊次郎という名前から鑑みるに嘉山家は長男を亡くしているのかな?次男の菊次郎が継嗣となるが結核を患ってしまい、世話役として雇われた鴻が気に入られて養子縁組で嘉山家に入るということだよね。まぁ菊次郎が結婚後にちゃんと息子を愛せたと仮定すると、司朗の両親も早世したにせよ司朗に愛情を注げたということになる。そうなると司朗と鴻の関係も重澄のキャラも変わってしまうような気がするけれど、細かいことは野暮なのでツッコミ不要ということで。それより、何気ない日常と笑える台詞などが散りばめられている点でもかなり楽しめる素晴らしい作品だと思う。