獅子文六のレビュー一覧
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ネタバレ男性キャラに焦点を当てた短編集、というところでしょうか?
前半は、ほぼ間違いなく小説、って感じですが、後半に行くにつれて、徐々にエッセイみたいなのが増えていくような印象でした。ま、エッセイ、ではなく、エッセイ風小説、なんだろうなあ、おそらく、とか思いつつ読んでおりました。
感想としては、うーむ。獅子文六さんの作品は、どっちかゆうたら、短編より長編のほうが好きかなあ?と思ったイメージが強いですね。楽しかった、のですが、色んな長編を読んだ時の感動ほどは、あまりグッと来なかったなあ、というイメージでしょうか。
ただ、この短編集のタイトルにもなっている「ロボッチイヌ」は、バリ秀逸だな!って思いま -
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新幹線開業前で、おそらく東京ー大阪の出張が止まりが常識だったころののんびりした移動の七時間半で起こる恋愛喜劇。小説がメディアだった最後の頃、時代を鮮やかに切り取る著者の技が生きた作品だ。
もっとも、「東海道線も、昔は、品川駅を出れば、車窓の眺めも、旅情を感じさせたが、今では横浜を過ぎても、藤沢へ行っても、まだ、都市の気分である。まず、平塚を後にして、やっと、海や山のたたずまいに、旅に出た眺めを、感じる」のは、今も変わらない。
「一人前になったコックは、誰も、年月をかけて、師匠からコツを盗んだ連中である。この封建制のために、コックも、日本料理人も、一人前になるには、長い時間を要する」のも相 -
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開巻早々、暢気者にして怠け者の夫・五百助に堪忍袋の緒が切れた妻・駒子さんは亭主を叩き出す。
昭和25年、敗戦により戦前の価値観は暴落し、台頭する自由の風潮の下、駒子さんはあんな役立たずの夫に縛られることはないんじゃないかと、夫なき身辺に現れる男性に改めて目を向けてみたり、追い出された五百助は日頃の妻の一々を煩く思っていたところ、これ幸いと独り身の自由を謳歌して放浪してみたりする。二人それぞれに我が身の自由に思いを巡らせ、彷徨する訳なのだが…。
皮肉と親しみを絶妙な塩梅で効かせて登場人物を描く筆致は流石という感じ。
右往左往の結果さてどうなったかというと、何かを学んだようで人の心なんてままならな -
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文筆家・千野帽子氏が編者の短編集。表題作は眉を顰める向きもあるかも知れないけど、ナンセンスコメディとして面白い。現代の日本だとあながちジョークになってないかも(オリエント工業とか←小声)。ブラックユーモアや諷刺作品、或いは病床エッセイかと思って読み進めると怪しい展開に向かう「文六神曲編」、過去の作品の作中人物が電話をかけてくるメタフィクション風な「南の男」とか意外なバラエティー性は感じるけれど、「文庫で復刊されている文六作品はウィットと諷刺に富んだコメディ調が主流ですが、ちょっとテイストの違う作品をご賞味ください」って感じの、編者の気取った意図が何となしに透けて見えるのがマイナス。
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ネタバレなんてオシャレなんだろう。第一印象はそれだった。
文体というか、当時の言葉づかいというか、粋でもなくモダンというわけではないが、なにやら遠い記憶の、さらに向うのほう、幼いころの憧れていた雰囲気がそこにある。当時の世相、庶民の生活が垣間見れて面白い。
物語の舞台は昭和30年代。昭和が元気で賑やかだった頃。
台湾華僑の家族を中心に、バナナの輸入とシャンソンの話題を軸に、お茶の間ドラマ的なドタバタ喜劇がテンポよく繰り広げられる。お話として罪もなく、大事件もなにも起こらないが、遠く過ぎ去った50年前の庶民の暮しが目の前に甦る感覚が心地よい。言葉づかいや、ファッション、世相なんてものも、資料で見 -
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1950年代から60年代にかけて
神奈川県の箱根山周辺をめぐる観光開発競争が
西武、小田急、藤田観光の3グループ間で行われていた
かつては互いの縄張りを侵さないように共存していたものだが
戦後、GHQの方針による自由経済の強化で
独占禁止の風潮が出てきたことをきっかけに、戦いの幕が開いたのだった
当初、作家の獅子文六は
「箱根山戦争」と呼ばれたそれをモデルに
企業小説のようなものを書こうとしていたらしいのだが
連載中、関係各所から不穏な空気が漂ってきたために(ホンマか)
急遽、路線変更して
大人たちの争いに巻き込まれながらも自分らしさを見失わない
若者たちのエバーグリーンな物語としたのだった