獅子文六のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ずっと読みそびれていた獅子文六さんをようやく読むことができました。
噂通り面白かったです。
主人公の性格がそのまま作品のテンポになっている感じで、この主人公の考えや行動がいちいち面白いのです。クスッとするような面白味というか、「こういう人っているよなぁ、分かる分かる!」という面白味があります。
THE娯楽という感じで本当に楽しく読めました。
主人公とその周りのキャラの濃い人々、舞台が愛媛というとちょっと『坊ちゃん』を思い出します。わざと『坊ちゃん』を思い出させるように書いたのではないかと思いました。『坊ちゃん』のコメディ。真っ直ぐでやんちゃな坊ちゃんに対し、こわがりで逃げ腰で長いものに巻かれて火中の栗は絶対に拾わない犬丸潤吉。『坊ちゃん』も主人公坊ちゃんの性格がそのまま作品となっているし、この作品が新聞小説ということもあって漱石を意識したのかなぁ、なんて思いました。
最後に掲載されている、獅子文六さんが書いた「【付録】てんやわんやの話」を読むと、獅子文六さん自身がとっても面白い人なんだなぁと分かります。目のつけどころや感じ方が多分今でいう芸人さんに近いような気がします。
装幀のイラストも好きです。ゆるっとしていて作品に合っていると思うし、こういう表紙なら若い人も手にとりやすいように感じます。
てんやわんやという言葉はこの本で改めて広まったそうです。びっくり。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前半の部分は獅子文六とは何と身勝手な男だろうと思って読んでいました。
でも話は最初から興味深くて引き込まれて行きました。
読み進むうちに獅子文六の娘に対する深い愛情があふれている事が分かってきます。
獅子文六が結婚という制度に向いてないことや、
子育ても出来る事なら放棄したいという気持ちを持ちながら後半では立派に娘を嫁に出し終えてほっとしているが少し寂しい気持ち等が素直に書かれていて、好感が持てました。
獅子文六の生き方も素敵でした。
もっと早くこの小説を読んでいたら男心が理解出来たかも知れません。
この本を読むのに10日間もかかりました。
少し長いですが、毎日サクサクと読め、私的には久しぶりのヒット作で面白かったです。 -
Posted by ブクログ
次回の読書会課題図書。
「獅子文六」の名を読書会で聞くようになってから気にはなっていたけど手に取ったことはなかった。
昭和初期の文豪と言えばいろんな名前が浮かぶが、40を越えてから初めて知った作家さん。聞くところによると、軽い文体で読みやすいらしい。
…の、わりに分厚くない?
以前、本屋さんで「娘とわたし」を見かけたんだが、分厚かったので買わなかったんだよな。
今回は課題図書なので、否応なく獅子文六デビューしてみた。
舞台は1930年代後半の東京。
主人公の悦ちゃんは、2年前にママを病気で亡くした10歳の女の子。天真爛漫で少しおマセな彼女は、歌謡曲の作詞で生計を立てるパパ、碌さんと暮らしている。
碌さんは再婚は考えていなかったが、奥さんの3回忌が済んで少し心持ちがかわり、親戚の勧めもあって、裕福な家柄でインテリ美人のカオルさんとお見合いをする。
一方、親戚のお誘いで夏の避暑へ出かけるため、悦ちゃんの水着を買いに出かけた「大銀座」で出会ったデパートガールの鏡子さんに、悦ちゃんは新しいママになって貰いたいと熱望するんだが…、
という感じで物語ははじまる。
確かに軽いタッチで読みやすい。
分厚いと思ってたけどぐんぐん読めるし、昭和初期の古い慣習や、当時の言葉遣いもそれほど気にならないくらい、展開も面白い。
おお、コレが獅子文六か!
ラスト3/4くらいは目まぐるしい展開で、頁を繰る手が止まらない。
読み終えてから、「テンプルちゃん」というワードが気になっていろいろ調べてみたが、これも興味深かった。
そしてハタと思った。
この時代って、第二次世界大戦の直前なのでは?
「悦ちゃん」が新聞連載で始まったのが、1936年7月。翌3月に講談社から刊行されたらしい。
物語の中で語られていた、テンプルちゃんことシャーリーテンプルが1929年生まれで今年9歳というのだから、舞台の時代は1938年?
いずれにせよ、世界的にナチスが台頭してきて不穏な空気が包んでいた時代。
ついでに言うなら連載の始まった年の2月に、あの2.26事件が勃発しており、国内にも不穏な空気が満ちていた時期の作品という事になる。
基本的には禄さんの再婚を巡るドタバタ喜劇な内容だが、資本力のない10歳の子どもが…いや、資本力がなければ大人でさえ、明日どうなるかわからない日常の不安な感じ、リアリティのある焦燥の気分はところどころに感じられる。
ラストの大団円に多くの文字数を割かず、なんとなくふんわり終わっているのも、今までの喜劇的で軽快で時に饒舌な印象も受けた作品の展開からは、少し不自然な感じがした。
時代背景に気を取られてちょっと深読みしすぎたかな?
これまた知らなかったけどこの作品、
ドラマ化や映画化もされてたみたい。
鏡子さんの愛らしい姿、カオルさんの水際立ったブルジョワな衣装や、街ごとに違う東京の様子、悦ちゃんの歌声の素晴らしさなどなど、確かに映像で観たくなる。
ここに時代背景とのコントラストを考えるとさらに興味深い。
獅子文六、面白かった!
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Posted by ブクログ
獅子文六初の1936年から連載された新聞小説。当時ののんびりした世相を表しているのか、文体が現在と違う趣がありました。
妻に先立たれた33才の売れない作詞家碌さんが少し駒茶くれた10才の一人娘悦ちゃんが後妻候補を巡っててんやわんやのお話し。
才気溢れる悦ちゃんを嫌う美人の薫嬢、悦ちゃんがお母さんになってと願う慎ましくも美しいデパートガールの鏡子さん。
そこに持参金5万円と薫嬢の美しさに夢中になった碌さん。
結末はハピーエンドのお後よろしいお話しでした。また、最後に悦ちゃんが継母をママとハハが一緒になったのだから、一番いい
お母さんとまるで落語の落ちのようなエンディングに当時の新聞の読者も満足したのだろうと思いを馳せました。