獅子文六のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
戦後ノンキ派な私は、時代を超えて共感すること多し!
ある夫婦それぞれの目線を通して、戦後の価値観の大きな変化を描いています。特に男女間および世代間のギャップの深さを描いていますが、結局のところは、、、というお話し。しかし360度まわって同じ場所に還るわけでなく、螺旋のように円を描きつつ、上下にすこしズレている。そのズレこそが新たな価値観なのかもしれません。まったく別天地へ座標がうつるのでもなく、まったく同じことを繰り返すでもなく。
やっぱり獅子文六の文体の、上品で軽やかなのがすばらしい。いかにも「純文学」といったような重厚さを感じず、文章の飾り立てがほどよく、詩的で読み応えのある表現もちょ -
Posted by ブクログ
獅子文六氏(1893〜1969)は、劇作家、小説家、演出家として昭和の演劇振興に尽力された方。この小説は1962年から1963年に「可否道(コーヒーどう)」という書名で、読売新聞に連載され、1963年に新潮社より刊行されたものを1969年に「コーヒーと恋愛(可否道)」と改題され、角川文庫より文庫化。2013年にちくま文庫より復刊されたとのこと。
昭和の隠れた名作。すっごく面白いかというと、今の感覚の「面白い」にはもの足らない感じがするが、ウィットとか上品なユーモアとかを感じさせる。
主人公は坂井モエ子という脇役として国民的に愛される女優で、美人ではないが、「嫌われない」キャラ。
コーヒ -
Posted by ブクログ
ネタバレ阪神古書ノ市で友と選書のし合いっこをした際にプレゼントしてもらった本。
古書ノ市楽しかったなぁ!
戦後の昭和が舞台の物語。
昭和らしい独特な言葉回しを最初は読みづらく感じたけれど、だんだんクセになって楽しく読み進める事が出来たし、なんなら脳内で口癖がうつッちまったわ…。
ハイカラでユーモアがたっぷりなお話。
登場人物みんながカラッと明るくてサッパリしているのは時代ならではなのかな?
とんでもないクソ女であるアンナですらカラッとしていて憎めない。良い!
コーヒーとタイトルに入っているだけに、コーヒーの蘊蓄も沢山でコーヒーを飲みたくなる。
昔からあるような古い喫茶店でコーヒーをのみながら読み -
Posted by ブクログ
ネタバレ
おもしろかった!もうどっぷり物語の中に入ってました!
時代背景は第二次世界大戦の前。戦争による配給や赤紙等の話もチラホラ。地下のレストゥランの隣のたばこ屋さんの女主人町子のお話。髪を結って着物で出かけ、弟は夜学に通いながら銀行でボーイとして下働きをしてます。
もうこれだけで好き☆
町子の父は働きもせず儲からない発明に没頭しているダメ親父。今で言うなら親ガチャ大はずれ。出来もしない大発明に借金まくって結局失敗し、自殺。
この父にも腹立つけど、町子の想い人の塙さんよ!腹立つのは!甘い言葉並べてその気にさせて結局は他の女と結婚し、そのことを黙ってるなんて!だいたい、町子の父の実験だって失敗するのわ -
Posted by ブクログ
ネタバレ脇役女優坂井モエ子には8歳下の夫がいる。
コーヒーを入れるのが絶妙にうまい妻と、コーヒーの味がわかる夫。
そんな二人の関係は、ある日夫が放った「コーヒーがマズい」の一言から変わっていく。
書かれた当時のハイカラさが、読んでいる今はノスタルジックに感じて新鮮でした。
勉君がモエ子さんを捨ててアンナと駆け落ちしたときに、二人にざまぁを期待したのは最近の流行りの影響でしょうか(^_^;)
自分が捨てたくせに、モエ子さんの家に入り浸る勉君。
モエ子さんを思っているようで実は、自分の可否道のことしか考えていない菅さん。
最後にモエ子さんが二人を振ったところはすっきりしました。
「男って奴は -
Posted by ブクログ
12両編成、食堂車は8号車
11時35分、回送機関車が連結された。機関車がついたとなるととたんに列車がシャンと、生きてきた。機関車なしの列車なんて家屋に過ぎない。準備中の食堂車の風景がうまく描かれている。ステーキの固い肉をどう美味にするかの工夫も参考になる。昭和の素晴らしい時代だ。
11時55分、東京駅15番線入線
本文:上りちどり 午後1時16分頃大津駅から東より、琵琶湖と反対側の線路沿い、緑の家
実際:上りはと 午後0時51分45秒、大阪府三島郡島本町、日紡(現ユニチカ)青葉荘、汽笛はすぐ背後に位置する天王山にこだまする。
名古屋で給水。夕食は予約制、3回転する。
食堂車の実情がよく分 -
Posted by ブクログ
七時間半とは急行列車ちどりが 東京から大阪まで走る時間である。
食堂車で働くサヨ子とコックの喜一は両思いだが 家業の洋食店を継いでほしいという サヨ子のプロポーズに ホテルの料理長になる夢が捨てられない
喜一は迷っている。 皆に評判のよいサヨ子に嫉妬した 美人で高慢な「ちどりガール」有女子は 喜一に気のあるフリをし ほかの乗務員たちの和を乱す。
また、サヨ子を嫁にと一方的に考える 旧家の母親は気のない息子とともに乗車。 有女子を妻にしたいガサツな会社社長も 同じ列車に乗り合わせていた。 さらに時の首相と、それを狙うテロリストの影が…。 果たして列車は無事 大阪にたどり着けるのだろうか?