獅子文六のレビュー一覧

  • コーヒーと恋愛

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    60年も前の作品とは思えないほど馴染むお話。レトロではあるけど古臭くはなく、体験したことのない時代の話だけれどもなんとも懐かしい。全てハッピーエンドで丸く収まるわけではないのも、心情に無理がなくて安心する。穏やかに読める一冊。

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    2021年07月02日
  • コーヒーと恋愛

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    昭和の時代背景が漂うユーモアたっぷりの恋愛小説。主人公、モエ子はドラマの人気端役だが、物語もテレビドラマを観るような感覚で読んだ。
    43歳のオバさん(作中ではおばあさんとまで言う)が主人公の恋愛話は余程変わっていると思うが、その展開も中々新鮮で、恋愛心理だけを延々と書き連ねながら表向きのエピソードはほぼ皆無に近い恋愛小説とはちがって展開を楽しむ事もできる。登場人物それぞれが、人物像を持ち、説得力があり、そして皆に共感できるところは流石と感じる。
    60念前の小説だが、文体はここまで違うか、と思うほど。嫌いではなく、むしろ味わい深いし、面白い言い回しに感心する。終盤の物語のまとめ方がとても好きです

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    2021年03月21日
  • 金色青春譜 ――獅子文六初期小説集

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    「浮世酒場」は執筆当時の時事ネタ盛りだくさんといった感じで、ちょっと私には難しかった。

    「金色青春譜」「楽天公子」の二作は、後々の文六作品の原形のような、カラッとした恋愛小説に仕上がっていて読みやすかった。

    初期の作品ということで粗削りといった印象はあるものの、既に面白い。

    巻末の写真が若くて、神経質そう。こんな愛嬌のある作品ばかり書いているのに。

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    2021年02月14日
  • 悦ちゃん

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    ネタバレ

    獅子文六、素晴らしい。めちゃくちゃ良い。メチャクチャ良いです。ドPOPと軽妙洒脱の極み。この素敵な軽さ、なんなんだろう。ビビっちゃう。

    本当にまあ、驚きでしかないのですが、コレ、第二次世界大戦前の作品なんですよね。この作品が、リアルタイムで新聞連載されてたのが、1936年(昭和11年)7月から1937年(昭和12年)1月まで、だそうです。おっとろしい。昭和10年代の作品なのか!?コレが。有りえないよ、って思う。なんなんだこの古びなさは。奇跡的です。

    個人的に勝手に思うだけなのですが、この作品の舞台設定に、スマホとネットとあとなんか最近のもんをシレッと登場させて、2021年新春注目の新人作家

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    2021年01月07日
  • 七時間半

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    特急で働くこの時代の女性たちの婚活事情。
    面白かった。
    しかし「50そこそこの婆さん」記述にはびっくり!!
    いまは60代でもおばあさんとはなかなか言わないし思えないことも多いけどw

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    2020年10月09日
  • やっさもっさ

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    横浜・野毛の往時を知る人たちは、戦後、米軍の接収地域との境目で、最先端の欧米文化が日本に入ってくる場所だったなどと懐かし気に語るのだが、その時代の雰囲気が伝わってくる一冊。

    この小説に描かれた横浜は、街全体から怪しげな空気が漂ってくる。田舎の少年に「横浜っていかがわしいところ?」と勘違いさせた、「伊勢佐木町ブルース」よりちょっと前。

    それにしても、この30年くらいで横浜もだいぶこぎれいな街に変わったもんだ。

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    2020年08月12日
  • 七時間半

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    フランキー堺主演の特急にっぽんを観る機会を何度も逃して、いてもたってもいられなくて原作を読む。読みながら映像が目に浮かぶキャラ立ちした登場人物たちが繰り広げるドタバタ喜劇。古さを感じさせない洒落た小説。楽しかった。

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    2020年07月06日
  • 七時間半

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    昭和30年代、東京―大阪間を7時間半で結ぶ特急「ちどり」の中で起こるユーモラスなドタバタラブコメディ。
    食堂車でウェイトレスのリーダーである藤倉サヨ子とコック助手・矢板喜一のすれ違い気味な恋の行方、美人乗務員・今出川有女子と彼女に思いを寄せる大阪商人・岸和田社長、大学院生・甲賀恭雄、結核療養所で静養中の佐川英二という3人の男。
    旧子爵家の娘である有女子は3人を手玉にとりながら、喜一にもちょっかいを出し、サヨ子と対立する。
    さらに、列車には総理大臣が乗り込み、あろうことか、爆弾が仕掛けられているという情報が流れ列車内はパニックになり、サスペンス小説の様相も呈してくる。
    60年安保の世相を反映した

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    2020年05月15日
  • 七時間半

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    ネタバレ

    友人から紹介されて読みました。
    獅子文六さんの作品は初めてでした。

    電車の中の7時間半の中での人々の心の動きを描いた物語です。
    藤倉、今出川、という女性の人間性の対比が描かれておりました。実際こんな人いるよな、と思いながら読んでおりました笑
    女性にも好かれる女性、女性から嫌われがちだけど、その美貌から男性から寵愛される女性。僕は前者のほうが好きです笑なんかほっとする人間性の方なんだろうなと思いました。

    それとこの作品のテーマは「すれ違い」なのかなと思いました。
    ちょっとした出来事でも、その人の想いはがらっと変化してしまう。その変化の結果、お互いに通じ合っていたと思っていた状況が変わってしま

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    2020年05月06日
  • バナナ

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    さすが獅子文六!
    読み始めるとテンポよく物事が進んでゆく。

    えーー!と言うラストで、
    思わず次ページをめくってまた戻した!

    時代背景と、この時代を生きた人々の思想、
    またバナナの面白さと、
    シャンソンから、外車、バー…
    出てくるもの全てが魅力的。

    中でも料理、食べ物が美味しそうなものばかり…

    お腹を空かせて、天童さんのオススメのお店を訪れてみたい。

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    2020年05月03日
  • やっさもっさ

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    ネタバレ

    神奈川近代文学館で催されていた「没後50年獅子文六展」へお邪魔する前に、『娘と私』『コーヒーと恋愛』以外の文六作品も読んでおこうと手にした本作。
    横浜中華街も旅程に組み込まれている中、舞台は横浜、そして解説がかなぶん学芸員の方だなんて何たるお誂え向き!
    売れっ子作家だった彼の作品は、本当に退屈と無縁だ。
    近代文学と言う堅苦しい響きから程遠い所で、個性豊かな登場人物達が群像劇を繰り広げる。
    悲劇も喜劇然として、頁を閉じる度に惜しくて堪らない読書も久々だった。

    <Impressed Sentences>
    —亮子も、心細かったろう、この六年間。
    妻を労わる気持ちが湧いてくるのも、久振りのことだった

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    2020年02月29日
  • やっさもっさ

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    神奈川近代文学館の獅子文六展に行き、彼の生涯や人となりに触れたあとに本作を読んだので、色々と感慨深い。
    作中の、混血児を対象にした孤児院が現実に存在したと知って、そちらについてもっと詳細を知りたくなった。
    かなり重たいテーマなのに、そうならないのが獅子文六のすごいところだと思う。

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    2020年01月11日
  • てんやわんや

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    主体性というものを持たず
    「先生」のいいなりに利用されてきた男が
    戦争の時代を経て、侮辱されていると気づき
    呪縛を脱していく話
    自我の目覚めというよりも、絶望からくるニヒリズムなんだが
    1950年代の日本では、これが大変に売れて映画化もされた
    話の舞台となった宇和島市では
    作品にちなんだ饅頭が、今も土産物として売られている

    「先生」の推薦で、軍の情報局に勤務していた主人公は
    戦犯として逮捕されることを恐れ
    やはり「先生」の勧めで
    惚れた女に心を残しつつも
    東京から愛媛県の南予地方へと逃れるのだった
    長閑な田舎ぐらしのなかで東京者は珍しがられ
    いろいろといい思いをさせてもらううちに
    「先生」へ

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    2019年12月22日
  • てんやわんや

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    ヒロイン?の花輪兵子がツボ。
    「アッハッハッハ」って笑い飛ばす性格が最高だった。
    もうちょっと本筋に絡んで欲しかったな。

    今まで読んだ文六作品は全て三人称で書かれていたので、一人称がまず新鮮だったし、戦後の町や人々の描写が克明で、なんだか感動してしまった。

    本作は四国に疎開していた文六先生が東京に戻って6年ぶりに書いた長編小説で、戦中〜戦後の様々な経験がこの小説に反映されていることを窺わせる。新聞小説だし、娯楽映画として愛された作品かもしれないけれど、歴史的価値のある小説だと思うので、もっとたくさんの人に読まれてほしいな。

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    2019年10月03日
  • 悦ちゃん

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    ネタバレ

    途中、碌さんがロクでもないわカオルさんが憎らしいわ悦ちゃんが可哀想だわで泣きそうになった。
    夢月やカオルさんはもっと懲らしめて欲しかったけど、鏡子さんが幸せならそれでいいや!

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    2019年08月31日
  • 七時間半

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    品川ー大阪間を走る特急「ちどり」の七時間半の出来事。
    この作品が執筆された1960年ころの世相などがよく分かります。
    ラブコメというよりお仕事小説としてとても楽しく読みました。この時代、女性の仕事は結婚までの「腰掛け」と言われていましたが、プライドのある仕事っぷりに天晴です。女性の話し言葉に「ァ」とか「ェ」とか入るあたり、昭和の艶のある女優さんたちが頭に浮かびます。喜一は私の脳内では藤山扇治郎さんでした。
    しかし、50歳で「婆ァ」といわれるんだ・・・むぅ。

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    2019年08月14日
  • 七時間半

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    ネタバレ

    特急”ちどり”
    東京 大阪間七時間半の間に起こる物語。

    鮮やかにその時代を感じられ、
    次々と通過する駅の間に物語が進行し、
    次々と展開してゆく。

    話が続いていると思ってページを捲ると
    そこで話がお終いだった程引き込まれる作品。

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    2019年06月07日
  • バナナ

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    降りる駅を乗り過ごすくらい一気読みできた作品。
    時代は全然違うのに共感できる部分があるのが不思議。
    出てくる人に悪者がいないので安心して読めるのに、間延びしない展開。

    獅子文六さんは外れがない。

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    2019年03月17日
  • 娘と私

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    「この作品で、私は、わが身辺に起きた事実を、そのままに書いた」とあり、今まで読んだ獅子文六作品よりも抑制した文章で綴られている。
    題名から想像していた“娘と自分”とのこと以上に、“再婚の妻と自分”とのことに比重が置かれていて、それに関して「自跋」で明かされているし、本書の献辞もその亡妻に贈られている。
    作者は出来るだけ包み隠さず、率直にその時々の心情を振り返って語ろうと努めたのだと思う。「私という人間は、子供だとか、妻だとかのために、犠牲となることを、喜びとするような風に、できあがっていない」と記す、個人主義で我儘でへそ曲がりの作家の、時に妻や娘がいなかったらと我が不自由を嘆き、時に愛情や思慕

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    2018年11月23日
  • 悦ちゃん

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    悦ちゃんが可愛い。悦ちゃんの境遇にはらはら、父親・碌さんの体たらくにイライラ。悦ちゃんがどうなるか、先が気になって一気に読んでしまった。大人達の物語はご都合主義的ではあるけれど、まあご愛敬。ラスト、何とも悦ちゃんらしい一言に、拍手喝采。「よかったね、悦ちゃん」って声をかけたくなった。

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    2018年11月05日