あらすじ
まだテレビが新しかった頃、お茶の間の人気女優 坂井モエ子43歳はコーヒーを淹れさせればピカイチ。そのコーヒーが縁で演劇に情熱を注ぐベンちゃんと仲睦まじい生活が続くはずが、突然“生活革命”を宣言し若い女優の元へ去ってしまう。悲嘆に暮れるモエ子はコーヒー愛好家の友人に相談……ドタバタ劇が始まる。人間味溢れる人々が織りなす軽妙な恋愛ユーモア小説。
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Posted by ブクログ
内容、表現方法などが昔のもので最後まで読み進められるか不安な部分もあったがコーヒーを中心に回る世界が楽しくてさくさく読み進めることが出来た。
時代に関係なくドタバタな恋愛を過ごしている人はいて、さらに若くはない年齢のふたりがメインだが青春の真ん中にいるような感覚になり、安定だけではないこのような人生も悪くないなと思った。
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読売新聞の連載時(1962-63 年)のタイトルは『可否道』。ところが文庫版から『コーヒーと恋愛』という凡庸なタイトルに変更された。映画化もされたが、こちらのタイトルは『「可否道」よりなんじゃもんじゃ』。なにがなんだかわかんない。
主人公は坂井モエ子、43歳。新劇の役者とテレビタレント、二足のわらじをはいている。恋愛も二股。こっちにするかあっちにするか、『可否道』は絶妙なネイミングだと思うのだが。
構成がしっかりしている。モエ子をとりまくコーヒー愛好家(日本可否会)の4人の男たちも個性的でおもしろい。その描き分け、役割分担もよくできている。会話も自然で巧み、しかもしゃれている。さすが劇作家、獅子文六(岩田豊雄)!
連載終了後すぐに映画化されたところを見ると、獅子の頭にはすでにキャスティングがあって、それを念頭に筆を進めたのかも。ちなみにモエ子は森光子、その若い夫は川津祐介、彼を横取りする新人女優アンナは加賀まり子、日本可否会の4人は加東大介、村松達雄、宇佐美淳也、柳家小さん。アンナの伯母に清川虹子、モエ子とアンナのマネージャーに長門裕之。みな適役だ。
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1962年(昭和32年)の読売新聞で連載された、ドタバタ恋愛喜劇。
内容が「主婦向けのお茶の間ライトノベル」という感じで、すっごくおもしろかった!
筆者の獅子文六は、もともと新劇の作家だったが、昭和10年頃から映画とかドラマの原作小説家として人気を得た。でも内容があまりにも大衆的すぎるから、文学界隈では長らく評価されなかった感じがある。ようやく2010年代に入り、筑摩文庫が復刊キャンペーンで続々と刊行して、リバイバルヒットした。
筑摩の帯文がいちいち素晴らしいのだ。
この『コーヒーと恋愛』の帯文は、「こんなに面白い小説が何十年間も読めなかったなんて信じられない」だ。読後、この帯文に完全に同意した。理屈抜きで面白いのだ。
中年のおばさん女優「モエ子」が巻き込まれる恋愛のいざこざがゲラゲラ笑えるし、コーヒーのうんちく話を冷笑する筆致にニヤニヤさせられた。そしてベンちゃんやアンナ、菅さんもキャラが立っていて魅力的だった。
「もっとも、この間死んだ永井荷風なぞは、コーヒーに山盛り5ハイぐらいの砂糖を入れたというから、コーヒー・インテリとしては、下の部であろう。」
なんてクスッとさせる地の文が、物語に知的な軽妙さを添えていて、笑える。
そして怒涛の展開からどんな結末になるのかとハラハラして読み進めると、、、宇治十帖かよ!とツッコミたくなるほど見事な終劇。この展開は、でもむしろ必然かもしれない!と舌を巻いた。
次は『悦ちゃん』か知ら。それとも『胡椒息子』か知ら。また楽しみな作家を発見してしまった。
Posted by ブクログ
1963年に刊行されたこの本、自分が生まれる半世紀も前の話なのになぜか共感できるし、登場人物がいい人すぎる。温かい心で本を閉じた。獅子文六、ちゃっかり登場するのかわいくて好き。
Posted by ブクログ
1963年に刊行された昭和の小説です。
主人公は、テレビタレントのモエ子さん。
ドラマの母親役やオバサン役で人気の女優です。
八つ年下の夫、ベンちゃんは、劇団の舞台装置家。
劇団の若い研究生アンナとベンちゃんの仲を疑って、モエ子さんはヤキモキしています。
モエ子さんはコーヒーを淹れる名手でもあり、コーヒーの同好会「可否会」の会員です。
「可否会」の会員は、モエ子さんの他に、真のコーヒー通の会長、洋画家、大学教授、落語家がいて、全部で5名。
この登場人物たちの滑稽なやりとりや、コーヒーについての多彩な会話やうん蓄が面白くて、楽しく読めました。
とにかくコーヒーの話がたくさん出てくるので、カフェで読むとより気持ちが入りそうです。
2回目を読む時は、カフェで読みたいと思いました。
Posted by ブクログ
面白かったんだけど、モヤモヤするー。
モエ子に感情移入して読むと、まわりの人たちが身勝手で腹立たしいなぁ、って感じるけどモエ子にも「そうじゃない!」って思うところもあって。50年以上の月日が流れて、技術や情報は進化しても人間の感情なんてそうそう進化するものじゃないんだとかんじた。
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60年前の日本で第一次コーヒーブームが起きた時代。
現代のコーヒー好きな人たちと同じように熱を持った人たちがいたそうな。
豆の種類と淹れ方や器具や水の違いや湿度気温、、
更には考え事をしながら淹れると全く美味しくないなどと心理的な影響まで出てくる。
主人公たちは恋愛や夫婦の間に生まれた亀裂をコーヒーと交えて精神的に翻弄していく生活劇。
こんなにも好きな飲み物に惑わされていくなんて。
「コーヒーをいれる方法が芸術だとするならば、飲む目的は宗教に近い。」
こんなことまで言わせるなんて。
コーヒー品評会に採点された豆がまさかのインスタントコーヒーであった!っていうの面白かったな。
難しい顔して言い合いせず、純粋に楽しめればそれで良し。
、、しかしながら、勉君のろくでなし感は好かないなあ。
Posted by ブクログ
どこで紹介されていたかも忘れてしまったほど、ずっとブックマークされていたこの本がようやく読めました!!
2013年にちくま文庫から発売しているけれど、1960年代の著者晩年の作品。タイトルも連載当時は「可否道」だったとか。コーヒーの当て字も新鮮。
古い作品なので、時代もあわせてなんだかとてもおしゃれで新しい。
脇役女優のモエ子も魅力的で、昔のホームドラマが浮かんでくるよう。
昔の文豪作品だけでなく、昔の良き小説にまた出会いたい。
Posted by ブクログ
200ページ(中盤)あたりから、かなり面白くなってきて、もう次の展開が気になって気になって。自分もコーヒーを淹れる仕事をしているから、そして歳も近いことから、モエ子から特に目が離せなくなった。
というか、私が淹れたコーヒーは、旦那さんはおいしいと言ってくれるけど、実際、お客さんにはどう思われているのかな?とか(ごく稀に褒めてもらうこともあるが)、そう言う、自分の生活から見た点でもこの本は、充分に楽しめた。 最後のサッパリした展開も私は好き。
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なかなかおもしろかった☆なーんの事件も起こらないホームドラマを見ているようなお話。主役のモエ子は年増のワキ役専門女優で、なぜか彼女がコーヒーを淹れるとめちゃくちゃ美味いってことからお話は始まる。8歳年下の内縁関係の夫は能書きばかりで働かないし、新人女優は生意気だし、もう周りがワチャワチャしてて楽しい☆最後はブチギレて旅立つモエ子さんにちょっとスッキリ!やっぱり大好きな作者さんだなぁ。
Posted by ブクログ
サニーデイ・サービスが好きなので読んだ。登場人物の立ち位置が新鮮だった年上のキャリア女性と若手作家の夫婦とか、演劇の世界やコーヒー道など懐かしさを感じる部分もありつつ、女性の自立とか恋愛観には現代よりも進んだものがあると感じた。かっこいい。
Posted by ブクログ
獅子文六氏(1893〜1969)は、劇作家、小説家、演出家として昭和の演劇振興に尽力された方。この小説は1962年から1963年に「可否道(コーヒーどう)」という書名で、読売新聞に連載され、1963年に新潮社より刊行されたものを1969年に「コーヒーと恋愛(可否道)」と改題され、角川文庫より文庫化。2013年にちくま文庫より復刊されたとのこと。
昭和の隠れた名作。すっごく面白いかというと、今の感覚の「面白い」にはもの足らない感じがするが、ウィットとか上品なユーモアとかを感じさせる。
主人公は坂井モエ子という脇役として国民的に愛される女優で、美人ではないが、「嫌われない」キャラ。
コーヒーを淹れる腕前が絶品で、そのコーヒーでもって八歳年下の新劇団員のハートを捉えて夫婦となっていたが、44歳になったとき、19歳の新劇女優に夫を奪われる。
彼が去ったあと、コーヒーを淹れるのも朝ごはんを作るのも張り合いが無くなり、自分一人のためならインスタントコーヒーで済ますという日々を送り、荒んだ気持ちが仕事にも影響して、初めて主役を務めたドラマも不評。仕事も暇になったある時、コーヒー仲間に「可否会」の主催者との結婚話を持ちかけられた。コーヒーを通じてその菅先生とは懇意になっていて、何かと相談相手にもなってもらっていて、お互い乗り気ではあったが、菅先生は自分の創設したい「可否道(コーヒーどう)」の助手としてしかモエ子のことを考えておらず、愛を感じられないので、モエ子は「イエス」と言えないでいた。そこへ新しい彼女に去られた元夫が戻ってきて「やっぱりモエちゃんのコーヒーが毎日飲みたい」と復縁を迫るのだが、モエ子は自分への愛情ではなくコーヒー愛からモエ子をパートナーとしたい男達にうんざりし、自分の女優としての仕事を極める勉強のために海外へ旅立つ。
1962年ごろの40代といえば、大正生まれ。モエ子を初め、この頃のテレビ俳優と言えば、新劇出身者が多かったようで、テレビを軽蔑しながらも生活のためにテレビに出続け、心はまだ新劇にあるという人が多かったようだ。テレビがまだ珍しかったころの芸能界やインスタントコーヒーが庶民に普及し始める少し前からコーヒーに親しんでいたインテリ達の生活など、その時代の人達からも今の私達からもちょっと一般人とは違う世界の人達の世界のことが書かれていて、そこが新鮮かな。
あと、セリフがちょっと昔のチャキチャキした江戸弁?みたいで、昔テレビでたまに見た古い白黒時代のドラマや映画を思いだす。
古き良き時代というのか、文化を味わうつもりで読むのがいいかな?
でも、最後のモエ子はかっこいい!
今の芸能人も結婚だの離婚だのドロドロだらけだが、あんなに潔く自分のために旅立つことが出来る生き方は古くない。
Posted by ブクログ
阪神古書ノ市で友と選書のし合いっこをした際にプレゼントしてもらった本。
古書ノ市楽しかったなぁ!
戦後の昭和が舞台の物語。
昭和らしい独特な言葉回しを最初は読みづらく感じたけれど、だんだんクセになって楽しく読み進める事が出来たし、なんなら脳内で口癖がうつッちまったわ…。
ハイカラでユーモアがたっぷりなお話。
登場人物みんながカラッと明るくてサッパリしているのは時代ならではなのかな?
とんでもないクソ女であるアンナですらカラッとしていて憎めない。良い!
コーヒーとタイトルに入っているだけに、コーヒーの蘊蓄も沢山でコーヒーを飲みたくなる。
昔からあるような古い喫茶店でコーヒーをのみながら読みたいなぁ。
可否道には何度も笑ってしまった。なんやねんコーヒー道の家元て!本人は大真面目なのも憎めなくて良い。
最後の方の展開は「やァ、モエ子女史、ほだされちゃァ、いけないよ…」とハラハラしたけれど大笑いしてスッキリ気持ちの良い締めくくり。
そこまで皆を夢中にさせるモエ子女史のコーヒー、味わってみたいもんだなぁ。
あとがきもユーモアたっぷりで良い。それ、コーヒーによる胃もたれでは…?!
昭和の作品がこんなに読みやすく、面白いだなんて。
自分じゃ絶対に選んでいないタイプの本なので出会えて嬉しい一冊。
実写化しても面白そうだなー、と色々想像しながら読んだ。
ベンちゃんは田中圭さんなんかどうだろう!
Posted by ブクログ
昭和のノスタルジーを感じさせる作品でした。
私が生まれた頃、今は亡き両親の新婚だった時代の物語。当時の社会は今のSNS世代から見たらさぞノンビリして、自由で生きやすそうに思えるかもしれません。
そういう意味では結末など気にせず、安心して読める内容でした。
Posted by ブクログ
表紙に惹かれて、読みました。
ちょうど、桜の満開の日に、読み終えることができて、
本当に心地よかったです。
私も、最近コーヒーが好きなので、
この本に出てくる
いろいろなコーヒーが、
美味しそうで、
モエ子さんのコーヒーを、
飲んでみたかったなあ、
美味しそうな、
美しい本との出会いに感謝。
Posted by ブクログ
脇役女優坂井モエ子には8歳下の夫がいる。
コーヒーを入れるのが絶妙にうまい妻と、コーヒーの味がわかる夫。
そんな二人の関係は、ある日夫が放った「コーヒーがマズい」の一言から変わっていく。
書かれた当時のハイカラさが、読んでいる今はノスタルジックに感じて新鮮でした。
勉君がモエ子さんを捨ててアンナと駆け落ちしたときに、二人にざまぁを期待したのは最近の流行りの影響でしょうか(^_^;)
自分が捨てたくせに、モエ子さんの家に入り浸る勉君。
モエ子さんを思っているようで実は、自分の可否道のことしか考えていない菅さん。
最後にモエ子さんが二人を振ったところはすっきりしました。
「男って奴は、どいつもこいつも、コーヒー好きのイヤシンボで、エゴイストで、あたしのコーヒーが目的で、結婚しようなんて、いい出すんだわ。誰が、その手に乗るもんか!」
Posted by ブクログ
軽妙洒脱ってこういうことかのお手本みたいなスッキリでした。スルスル読めて面白かったです。
モエ子女史、格好良い。落ち込み悩むし、苛々したり舞い上がったりもしたけれど、潔いです。ベンちゃんへの啖呵、スッとしました。こうでなくちゃ!
ベンちゃんとアンナは、仕様が無いナア〜となります。呆れ返る。
形式なんて固いこと言わず、蘊蓄も垂れずに美味しいものは美味しい、で良かろうと思います。可否道って!ダサい。誰が、その手に乗るもんか!でも、コーヒーよりお茶のほうが好き。
Posted by ブクログ
約60年前の小説と思えないほど、読みやすく軽快だった。
登場人物が癖のある、理解し難い人ばかりだったけれど、主人公の人柄なのか、文章のせいなのか、深刻さがなく、コミカルでそれがよかった。
この時代の作品で、結婚を選ばずに自分の人生を生きる選択をした女性を書いているのが斬新で、すごいと思う。し、だからこそ古臭い印象なく読めるのかもしれないと思った。
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めっちゃ面白いというわけじゃないけど読みやすくて好き
獅子文六のあとがきで「コーヒー飲みすぎて胃を痛めた、コーヒー小説はもうこりごり」と愚痴を書いてるのが何より面白い。
Posted by ブクログ
60年も前の作品とは思えないほど馴染むお話。レトロではあるけど古臭くはなく、体験したことのない時代の話だけれどもなんとも懐かしい。全てハッピーエンドで丸く収まるわけではないのも、心情に無理がなくて安心する。穏やかに読める一冊。
Posted by ブクログ
昭和の時代背景が漂うユーモアたっぷりの恋愛小説。主人公、モエ子はドラマの人気端役だが、物語もテレビドラマを観るような感覚で読んだ。
43歳のオバさん(作中ではおばあさんとまで言う)が主人公の恋愛話は余程変わっていると思うが、その展開も中々新鮮で、恋愛心理だけを延々と書き連ねながら表向きのエピソードはほぼ皆無に近い恋愛小説とはちがって展開を楽しむ事もできる。登場人物それぞれが、人物像を持ち、説得力があり、そして皆に共感できるところは流石と感じる。
60念前の小説だが、文体はここまで違うか、と思うほど。嫌いではなく、むしろ味わい深いし、面白い言い回しに感心する。終盤の物語のまとめ方がとても好きです。黎明期のテレビ業界事情がかなり詳しく、当時の読者はここにも興味をそそられたのではないかと想像する。今の業界の人が読んでどう感じるか聞いてみたい。
他の作品にも興味がわきました。
あとがきで作者はこの作品でコーヒーをがぶ飲みし、相当体を悪くした模様。書き上げた5年後に死去しているところからも命を削って書いた本であることを知り、読ませてもらったことに感謝する思いが強まった。
Posted by ブクログ
昭和のエンタメって感じでした。最後勉が来たときはヨリ戻されたら嫌だなと思って読んでました。
アンナ図太いですね。身近にいましたこういう女性。芸能界に向いてると思います…
いや、ほんとより戻さず、菅と結婚もしないで良かったです。
Posted by ブクログ
昭和の時代。を彷彿とさせる小説❢
ホームドラマを見終わったような
感覚になり、昭和の時代って
人と人がこんなにも近いんだなと
思わされた。
コーヒーを淹れる腕前がぴか一の
モエ子と、彼女の淹れたコーヒーを
飲んで、まずい❢と言い放ち
アンナの下へ生活革命という
言葉を持ち出して、家を出ていった
勉君……
そして、2人は離婚することになり
モエ子は、仕事も減っていき…
そんな時、コーヒー愛好家の
菅と会う運びとなり…、が
結婚を急いでいるフシのあるモエ子と
持って回った言い回しで、その意思が
見て取れない菅にやきもき、していると
かつて自分の下から去っていった
勉くんが、お風呂を借りに来る…。
それが口実であり
モエ子の淹れたコーヒーを飲みたいという
欲求から、またよりを戻そうとする
姿を目の当たりにし
ついにモエ子は烈火のごとく声をあげる。
『このイヤシンボ!』
私を愛してくれるやつは一人もいない❢
これはモエ子の正直な本音だろう。
『ちょいと❢そんなおお声出さなくても
良いじゃありませんか。モエ子さん。
それに❢
あんたもあんたですよ?
何が、ねえ、ぼくをまた毎日
こんなコーヒー飲めるように
してくれないかな、ですか。
聞いて呆れますよ。
そんな意気地も、カイショもない
男、モエ子さんじゃなくたって
お断りですよ❢』
と、言って一喝してやりたくなる
初めて読んで、とても良い
ドラマを見せてもらえた気分でした。
Posted by ブクログ
コーヒーを淹れるのがやたらウマいゆえに、恋愛がこじれる43歳の女優の話。
特技はその人に興味を持つきっかけとなりえても、内面や性格そのものを表したものではない。
ポップな文体でサッと入ってきて、余韻に浸るとコーヒーや恋愛の本質って何だろ?と思わせる巧さを感じた。
Posted by ブクログ
昭和の、テレビが家庭に普及し国民がテレビドラマを最大の娯楽としていた時代のお話。
書かれたのも1960年代と60年近くも前で、読み始めは時代の背景や話し方などが読みにくかったけど、慣れてくるとスーッとストーリーに入り込めて楽しめた。
特に何か劇的なことが起きるわけでもないけど、脇役女優のモエ子さんの日常が癖になる面白さ。
そして、違和感に感じた昔風の話し言葉や考え方も一周回ってオシャレでハイソに感じる。ただ43歳のモエ子さんが自分の事を「おばあさん」というのはショックを受けた。
ラストのモエ子女史、かっこよかった。今も昔も女性の方が潔い。
Posted by ブクログ
★3.4(おもしろかったけれど4はいかないかな)
■モエ子女子の喜怒哀楽が一番おもしろかった。ちょっとしたことで喜んだり怒ったり悲しんだり楽しんだりと感情表現が豊か。それを表すセリフ回しは今とは言葉遣いが違うので新鮮。昭和37~38年の新聞連載ってことは当時の少なくとも東京ではこういう言葉遣いがされていたのだろうか?
■どういうふうに着地するのか? なんやかんやあっても最後は元の鞘に収まるのでは? と思ってただけに、(タイトルである)コーヒーも恋愛もうっちゃって、自分の夢だった洋行を(スポンサーの力ではなく)自分の力で実現するという潔いラストにはやられた! という感じ。タイトルからするとふつうは「コーヒーが取り持つ恋愛」なのだが、実はベンちゃんも菅も恋愛ではなくコーヒーが目当てだったという逆転の展開。なるほどそうくるのかー! 元のタイトル「可否道」よりもこっちのほうがより作品にあっていると思う(ラストでのどんでん返し的な意味合いも含めて)。
■飄々としたベンちゃんと堅物の菅が対照的。同じくテレビドラマに出つつも新劇を忘れられないモエ子と、新劇よりもテレビで売れることを第一とするアンナも対照的。登場人物の配置はわかりやすく、その分モエ子に感情移入しやすい作りになっているのかな。
■芸能のなかでテレビの影響力が増していく時代。その様子が垣間見えるのはテレビ史という観点からするとけっこう重要な資料になのでは?
■大衆小説? 通俗小説? 新聞連載だから一般大衆が楽しめる内容が求められるわけだが、意外とこれまでにそういう作品って読んでなかったかも。長くて途中やや疲れたがスラスラと読めて、けっこう新鮮だった。
Posted by ブクログ
初獅子文六。最近なぜか古本で見かけるので。
女優モエ子の、コーヒーと8歳下の勉ちゃんとテレビをめぐるドタバタコメディ小説。アンナのはすっぱな調子、可否会のしょうもないコーヒー談義、名脇役女優モエ子のあれやこれや、読んでいてまざまざと目に浮かんでくるようで面白く、軽くすらすらと読める。男と女の感じは昔の時代を思わせるものはあるけど、それでも新時代の鮮やかさ。
最後の見送りシーンは、本当にこのままドラマにできると思う。