小林秀雄のレビュー一覧

  • Xへの手紙・私小説論

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    「かたち」が沁みてくる。このひとはこのひとである以上、どうしようもなかつた、そのことに気づかされる時、「かたち」が浮かび上がつてくる。批評とは問題点を取り上げて改善を促す類のものではなく、この「かたち」に辿り着くことだと思ふ。
    「かたち」を物語として書いたところにも彼の姿が映つてゐるが、彼が生き響いた対象に対して語りかけ、そのぎりぎりの境界に辿り着くまでには、一体どれほどの存在が通り過ぎていつたのか。
    Xへの手紙はそんな彼の歩いた道のひとつの里程標だと思ふ。Xと名づけられた未知の存在。生まれたての物書き。ただひたすらに書いていくことを望んだ新人。表現するとは自分であること以上のことは何もできな

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    2018年05月27日
  • 学生との対話(新潮文庫)

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    文筆家としての自覚と矜持を貫いた小林秀雄は、講演や対談の場での自らの話し言葉を文字にするときは、必ず速記原稿に目を通し、書き言葉に調えることを必須としていたとのこと。
    今回のこの本は、小林氏の著作権継承者である白洲明子氏の検分と容認を得てようやく刊行されたものなのです。
    そのような経緯があるのですが、収録された学生たちの質問と小林氏の応答は、他に類の見ない小林氏の「会話教育」と「質問教育」の実態を、現代に、ひいては後世に伝えるべく、国民文化研究会と新潮社に残された音声を新たに文字化されたものなのです。
    内容ですが、
    講義 文学の雑感
    講義 信ずることと知ること
    講義 「現代思想につおて」後の学

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    2018年04月11日
  • 地獄の季節

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    彼の叫びが木霊する。世界は明滅を繰り返す。
    生きていることが地獄であると知ってしまうことはどれほど窮屈なことだろうか。社会だとか、貧困だとかで地獄なのではない。そんなものは彼が何よりも嫌ったものだ。生きて死ぬこと、このことを前にしては、そんなもの些末なことに過ぎない。どんなにことばの地獄で汚そうとしても、どんなにことばで新しいものを錬金しても、どこまで行ってもことばから離れられない、そして、それゆえにすべてのことが許されてしまっている。だから、地獄なのだ。もう、ひとにもまれて踏みにじられ、そうやって生活して生きるよりほかないのだ。人生は茶番ではない。
    そんな彼の乾いた孤独を誰がわかってくれただ

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    2016年04月09日
  • 考えるヒント4

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    小林秀雄が中原中也について書いてあるということで、考えるヒントの新装版が3まで出るも、なかなか4が出ない為、古書にて購入。

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    2015年10月12日
  • 考えるヒント3

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    「2」に完敗した。いやまるでその難解さに歯が立たなかった。悔しさと劣等感とで仕返しのように流して読んでやろうと、再度齧り始めたら驚きの咀嚼易さだった。しかも今まで読んできたどの文化評論よりも内容が濃く、今まで触れてきたあらゆる言説を網羅していた。
     現在までの文化批評なんざ、およそ小林秀雄の焼き直しに過ぎないということがわかってしまった。
    軽いのも、重いのも、わかりやすいのも、難しいのも。

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    2013年08月31日
  • 地獄の季節

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    ネタバレ

    詩集の題名は『 UNE SAISON EN ENFER 』で、直訳すると『地獄時代』になる。「普仏戦争・ランボーが熱狂的に応援した革命政府(パリ・コミューン)の崩壊・ヴェルレーヌとの地獄の旅」を体験したランボーの青春は確かに「地獄時代」かもしれない。ただ、フランス語の「SAISON」には英語と同じく「季節」という意味があり、「比喩」と見て『地獄の季節』という題名でも問題ないと思う。

    ランボーは自筆原稿・本の多くを燃やし、小林秀雄が『飾画』と訳した『イリュミナシオン』はランボーが「燃やさずに残した詩を未完成のまま編集した詩集」だった。

    このためランボーの詩のテキスト整理に時間がかかり、『地獄

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    2013年04月21日
  • 地獄の季節

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    16でこれを書いた驚きもあるけど、16じゃなきゃ書けないというほうがしっくりくる。鮮烈と成熟の奇跡的な共存。
    もうひとつ言わなければと思うのが、俺はやはりこの小林秀雄訳の岩波文庫版じゃなければ半減すると思ってる。

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    2013年04月05日
  • モオツァルト・無常という事

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    「近代評論の神様」と呼ばれる筆者の戦中〜戦後にかけての評論集。
    天才の息吹を確実に感じる怒涛の文章。
    高校の現代文の先生が猛烈に薦めてたのにも納得。
    この一冊によって評論という行為に無限の可能性を切り拓いてくれた功績は大きい。
    ただ『西行』・『実朝』・『平家物語』などの所謂中世日本史ものはある程度突っ込んだ背景知識が無いと難解か。
    個人的に特に好きなのは『蘇我馬子の墓』と『偶像崇拝』。

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    2012年10月29日
  • 考えるヒント3

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    何度も何度も読み返している。

    小林秀雄の凄いところは、一旦小林秀雄を離れて周遊し、別のジャンルで知見を得た後に、再び小林秀雄に戻った時に感じる。新たな発見がその都度出てくるのだ。

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    2012年05月07日
  • 地獄の季節

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    散文詩集「地獄の季節」「飾画(イリュミナシオン)」の
    カップリング。
    大学生のとき、通学電車の中で貪り読んだのを思い出す。

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    2021年03月24日
  • 地獄の季節

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    小林秀雄訳。現在進行形で苦戦中の本です。おそろしいことに、苦戦が終わる日は永遠に来ないかもしれません。ランボオは18歳でこれを書き、原稿のほとんどを自宅の暖炉で燃やした挙句、あっさりと詩そのものを捨てました。
    言葉の錬金術。眩暈をも定着する狂気。

    Elle est retrouvée.
    Quoi? ― L'Éternité.
    C'est la mer allée
    Avec le soleil.

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    2011年11月21日
  • 地獄の季節

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    ネタバレ

    たかだか16,7歳の「ガキ」にこんな詩を書かれたら、もはやそんじょそこらの詩人はお手上げだろう。ヴェルレーヌをも魅了したランボオのこの一節は、ヌーベルヴァーグの旗手ゴダールの「気狂いピエロ」にも出てくるが、あまりにも強烈だ。

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    2011年10月23日
  • 考えるヒント3

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    私が秀雄信者なのは、何もイケメンだからだけではないのですよwwww ジブリ風に言えば「カッコいいとはこういうことさ」

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    2011年10月02日
  • 地獄の季節

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    こんなにも大きく豊かな広がりがあって、強く重く濃い作品をも、ひとは詩と呼ぶのだろうか。より適切な表現は何かないものだろうか・・・とランボーの詩に触れるたびに考えていた私にとって、この岩波書店の文庫は表紙からすばらしい。

    「ヴェルレーヌが『非凡な心理的自伝』と評した散文詩」という(私にとっては)衝撃的&心底納得する事実や、その他ランボーに関する大まかな情報が、表紙を使って的確に紹介されているのである。
    『非凡』であることは分かりきっていたけど、なるほど、『心理的自伝』とはさすがヴェルレーヌ氏。ものすごくしっくりくる表現である。

    そして『非凡な心理的自伝』は、ランボーが、選び抜いた言葉をもっと

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    2011年09月14日
  • モオツァルト・無常という事

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    久しぶりに再読したけど、やっぱりわかんないとこがある。
    言いたいことが何となくわかりはするけど、こんな狭いスコープではないんだろうなといつも思う。
    徒然草、に至っては未だにわかりません。

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    2011年08月08日
  • 地獄の季節

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    早熟の天才ランボー。10代のうちに早くも筆を置き、武器商人へと転身し多くの謎を残して逝ってしまった。
    彼の代表作である本書は今も血が通っているようで生々しく多くの人を惹きつけます。
    詩人の中でも著しく才能のあった人物です。

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    2011年06月16日
  • モオツァルト・無常という事

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    10年くらい前に読んだけれど、鮮烈な印象は鈍らない。
    「アイネ・クライネ・ナハトムジークなら聴いたことがある」くらいにしかモーツァルトに興味がなくても、じゅうぶん感動できる。モーツァルトの音楽が天国的だと言われる理由に納得したことがあるならば、涙することができる。
    江藤淳の解説も必見。

    ★★★★★の皆さんのレビューを拝見していたら、なんだか更に感動がこみ上げてきました。皆さんにありがとうと言いたい!

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    2011年10月02日
  • モオツァルト・無常という事

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    高校の教科書で「無常という事」と出会い、「解釈を拒絶して動じないものだけが美しい」という言葉に深く打たれた。
    座右の銘にしたいけれど、そこまでよく意味が飲み込めていない。
    無常ということを体感してみたいと思う。

    小林先生は全般的に、読んでなにかすごいことがわかったような気分になる。それを説明しろといわれるとできないんだけど。

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    2010年02月14日
  • 考えるヒント3

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     論理とはまた異なる、別のものがあるのではないか。そんなものを思わせる本であった。小林秀雄は、読めば読むほど奥深く、鋭いものだ。

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    2010年01月27日
  • モオツァルト・無常という事

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    美しい文章という定義付けは難しいだろう。
    たとえばノーベル文学賞に輝くアーネスト・ヘミングウェイの骨太ながらも。危いまでに繊細な心の陰影をのぞかせる文脈とか、妖しく美しくあることが、まるで運命づけられたようにしなやかに律動する川端康成の筆のすさびなどは、その最右翼と目してもよいだろう。

    この本の表題にあるモオツァルトとは、あの18世紀に登場した天才的作曲家のことである。僕はミロス・フォアマンの映画でしか知らないが、この小林の書き残した評伝には間違いなくあの映画で描かれた天才が息づいている。それよりも並々ならぬ著者の洞察力と、その見識の水準のとてつもない高さに、ただただ脱帽するしかないという面

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    2009年10月04日