山田和子のレビュー一覧
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パーマーエルドリッチの次はこちらを。
序盤から引き込まれて一気に読んでしまった。
ディックファンと言いながらまだ数冊しか読めていない新参者の私。
1番好きな作品は変わらずユービックなんだけど、もしSFに慣れていない友人にディック作品をどれか一つ勧めるとしたら、絶対これを選ぶ。
サイエンス感満載な用語は全然出てこないし、日常的な雰囲気の中にディックが紛れ込んでくる感じ、ぜひぜひSF処女たちにおすすめしたい。
それにしてもそう、まさに私が好きな類のお話だよ、こういうお話をもっともっと読みたいんだー!
あと映画好きなら誰もが知るあの映画の発想って、もしかしてこの本から着想を得たのか…?
なん -
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魔法の風を帆にはらみ、海を超える“はてみ丸”。
たったそれだけの言葉だけで、僕の心はアースシーへと舞い戻る。胸の昂ぶりが抑えられない。
たとえそれが、炉辺の明かりに照らされて床に伏せるゲドの脳裏に浮かぶ、夢うつつの思い出だとしても。
アーシュラ・K.ル=グインが最後にゲドの物語を遺してくれたことへの感謝を噛み締める。
序文にてル=グインは、こう宣言する。
“自分の思い描くアースシーを出版社のジャンル分けや批評家の決めつけにあわせることはやめました。ファンタジーは未熟な者が読むものだという考えは、成熟と想像力というものについての凝り固まった誤解から生まれたものです。主人公たちは成長しますし、若 -
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ネタバレ古典と呼ぶほどではないが65年発表というわりに古さは全くない。現在の肌感覚とシンクロする部分があり、極端な世界観にも関わらず現代的で違和感がなく自然に感じる。
まず感じたのは状況と心情の説明がいつもよりしっかりしていることで、今まで読んだ中では最も具体性があり分かりやすかった。
それは新訳のせいもあるだろうし、手堅く焦点の定まった文体で好感が持てる。
社会病理学的実験を試みる後期の作風に移行した後に書き直したものだと思ったが違うようだ。最初から意識が時代を先んじているということだろう。
現代の預言者という謳い文句に最も相応しい作品ではないだろうか。
ほぼ同時期発表の結晶世界が外から内にある中 -
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「我々が見ているこの世界は、本当に現実なんだろうか?」というテーマを、映画のマトリックスが仮想現実を描いたような表現方法で描いているかと思ったら、1959年に発刊された本書で描いた方法は、正直ぶっ飛んでいて驚きました。また、ジャンルはSFですが、まるで良質なミステリー小説を読んでいるようで、とても楽しむことができました。以下あらすじ。
主人公のレイグル・ガムは、新聞の懸賞クイズ〈火星人はどこへ?〉で2年間勝ち続けているチャンピオン。彼は、他の人が外に働きに出かけているときに、一日中懸賞の研究と回答に費やす日々を送っていました。そのような暮らしを続けているうちに、ときどき自分が見ている世界に違 -
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あっという間に暑い夏はすぎて秋。酷暑をふりかえりつつ、タイトルからして暑そうなバラードの作品を読む。燃える世界の改訂版の位置付けとのことですが、読みやすさも違う
し、意味合いも違う文脈が多くなったような気がします。特にラストシーンなどかなり違うのではないでしょうか。これ翻訳の違いなのでしょうか?原文が変わったのでしょうか?
読んだからといってこれからの人生が何か変わるかといえば何も変わらないですが、なんといってもバラードの魅力はそのシュール・リアリズムの絵画のようなビジュアルにも訴える強烈なイメージでしょう。この印象は一生残ります。「沈んだ世界」も再読してみよう。 -
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このSF小説は面白かった。
ジャンルでいえばミリタリーSFになるのかな。
とはいえ、SFと言っても近未来の話で、現時点でも戦場で使われている米軍のドローン無人攻撃機(プレデターとかリーパーみたいな無人の飛行機がミサイルぶっ放すやつね☆)がヒト型の歩兵ドローン(遠隔機動歩兵ティン・マン)になって世界中の紛争地区で戦うという話。
この本を手に取った時は、米軍の遠隔歩兵部隊のパイロット(←パイロットという表現が正しいのかわからないけど、要は歩兵ドローン『ティンマン』を操縦する人)の若者が
俺強いだろ!!!!!ううぇいいいいいい!!!
的なお話を想像したんだけど全く違った。
ある意味、絶対に -
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『エンダーのゲーム』の前身と思われる同名タイトルの短編を含む11の短編集。もしかしたらこの作家は短編の方が上手かもと思うような、クオリティの高いものばかりでした。
本のタイトル作について。
生後6ヶ月で受けたテストで見せた音楽への“天才性”により、クリスチャンは音楽の<創り手>となることを定められる。
彼は両親から引き離され、自然の中で聞こえる鳥の歌や風の歌、雷の音、つららから落ちる水滴の音、リスの鳴き声といった音楽を与えられた<楽器>のみで奏で、そして<聴き手>はそれらに聴き入る。
<創り手>であるクリスチャンは<聴き手>になることは許されないのであるが、ある時一人の<聴き手>がクリスチャ -
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ネタバレ新聞の懸賞クイズ「火星人はどこに?」に2年連続で勝ち続け、クイズの賞金で生計を立てているレイグル・ガム。片田舎の小さいのどかな町で、妹夫婦と共に穏やかな日々を送っているガムは、しばしば自分を取り囲む現実が「現実ではない」という感覚に囚われていた。ある日、甥っ子が遺棄された空き地から拾ってきた古びた電話帳と古雑誌。電話帳に掲載された電話番号はどこにも繋がらず、雑誌のグラビアでは見知らぬ女優について報道されていた。疑惑を確信に変えたガムは、クイズを始めてから一度も出たことの無い町を出て真相を確認しようとする。彼の動きを監視するかのように振る舞う隣家の夫婦、何かを知っているらしい市民活動家の老婦人・
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ディックらしい虚実を取り混ぜたストーリー展開や、面白くて笑える場面も多々あって、とても楽しめました。
しかしながら、ストーリーにいろんな要素を詰め込み過ぎなため、読み終えた後に、その後が気になる人が何人かいて少しモヤモヤした気分が残りましたけどね。
あらすじ:
21世紀も半ば過ぎ、世界は二極化されていた。その一方であるヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)では、ファースト・レディの地位が大統領より高い母権制をとっており、彼女(ニコル・ティポドー)は絶大な権力を持っていた。ある日、マクファーソン法が施行され、一人の精神分析医を除いて診断が禁止され、精神疾患はすべて薬剤治療とするように決まって -
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Posted by ブクログ
とても面白かった。日本人としては多大なシンパシーを禁じ得ない、大地震と後続する火災、津波という巨大災害。カトリック教会の影響力が強く合理的精神が根付いていなかった当時のポルトガルで、宰相がどのように復興を指導したのか。またそこに至るまでのポルトガル史や、大航海時代を経てグローバル化の進んだヨーロッパ情勢も含め、とてもわかりやすくまとめられていた。
災害後、呆然とした国王の「何をどうすればいいのか」という嘆きに、「死者を埋葬し、生者に食糧を配ることです」と宰相が答えたという逸話は、非常に印象的。仕事もこのような明快さ、的確さとリーダーシップで捌いていきたいものだ。