山田和子のレビュー一覧
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SFとかミステリーとか全ジャンルを含めて考えても、P.K.ディックは私のなかで特異で特別な作家。
彼の場合は、小説という創作物の「出来が良くない」方が、時として「読者としての満足感が得られる」事が多いという、グラフでイメージすれば反比例の曲線を持つ、珍しい作家。
起承転結がうまくいっている作品とか、終盤の締めが鮮やかな作品は、実は、この作家に期待する「禍々しさ」「絶無のカオス感」に乏しかったりする。失敗作でも(むしろ失敗作こそ)価値を生んでしまう、失敗作の至芸とでも云うべきか。
本作は、うまくいっちゃってるサイドの傑作。普段の生活空間が異世界に傾いていく過程が鮮やかで、P.K.=粗雑で上等、という前提として読むと面食らうかも知れない。 -
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「SF好きならどう?」と同僚に勧められたのが
この人の「エンダーのゲーム」という作品。
長編と短編があるようですが、
バトル物SFに興味があまり向かなかったので
短編版のこちらを選択しました。
で…
エンダーのゲームに関しては
ガンダムみたいなロボット系のSF好きなら
長編版のほうが楽しめるかもしれません。
その他、短編もなかなか面白い作品が多かったです。
単に「面白い」というより
数年後「あれ…なんか、こんな話どこかで読まなかったっけ…」って
忘れた頃にウズウズしてしまうような、
何か知らないうちに妙な種を植え付けられるような内容が揃っています。
個人的には
・王の食肉
・深呼吸
・四階共用トイレの悪夢(←独りでトイレに行けない怖さ)
そして
・磁器のサラマンダー
です。
磁器のサラマンダーは泣いてしまった… -
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ネタバレ読んでて、エンタメってこういうものだったって思い出した。とくに「エンダーのゲーム(短編版)」。11才の少年が他の誰にも思いつかない戦術でめくるめく大活躍… って、そう、最近忘れてたけど、そういうのがエンタメだった。リアリティとかどうでもよくて、とにかく面白ければいいんだよ。
「ブルーな遺伝子を身につけて」は、正統派SFっぽい顛末に加えて、宇宙服らしき「モンキースーツ」の語感がツボ。猿のスーツなんて不格好なはずなのに、何故かスタイリッシュ。
「アグネスとヘクトルたちの物語」…ステンドグラスの絵の裏表をひっくり返して見ているような話。どっちも表だしどっちも裏。民族弾圧による死の運命から義両親に助けられた過去を持つアグネスは、同じような立場の人間を救おうとして、その結果数十億の人類を死に追いやってしまう。けれどもその一方で、異種生命のヘクトルたちを過去の自分と同じように死の運命から脱出させる。それが皮肉なのか正統な結果なのか、想像の余地を残す形で淡々と語られて面白い。あとは、原理のわからないものを使ってその結果、という内容は、原発なんかを利用してる現実に照らし合わせると笑えない。
「開放の時」、これが一番好きかも知れない。乱視の視界みたいに、いくつもの世界が重なって現れて、主人公は一番良い世界にあたった時に死ねるって話。奥さんは主人公の死によって子供が居る世界を獲得して、哀しみはするけどほっとする。主人公には救いはないんだけど、ちょっとした達成感とともに死んでいく。複雑な幸福感がある話。
「陶器のサラマンダー」も切なくて良い。「無伴奏ソナタ」は、そこまで。他の短編は面白かったけど上4つと比べるとオーソドックス。でも十分に面白かった。
全体を通して、死と生に敏感な作者なんだと感じる。意味のある生き方に強い関心があると言い換えてもいいかも。その上でしっかり読者を引き込む要素を備えてて、主張とかテーマとかに必要以上に傾倒しないのがかっこいい短編集だった。 -
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ネタバレSF短篇集。
SFといってイメージするのはスターウォーズのように超越したテクノロジーを使った戦闘などでしたが、この本の短編はいかにもSFな物語というよりは作者の人生観をSFというジャンルで表現しているような印象を受けました。
宇宙人やタイムマシンが当たり前に出てきますが、それらの登場人物や道具を使って人生の考え方や人の生き方を話に落としこんで、1つ1つの話が教訓や寓話のように生き方の指標を示すような物語になっていると感じました。
11の短編の中では、タイトルになっている無伴奏ソナタとアグネスとヘクトルの物語が気に入りました。人の幸せや向き不向きについて考えさせられる話が少し寂しげで綺麗な話だと思います。 -
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まず、この文庫本の最初に『はじめに---作者への公開書簡---』が置かれています。この文章が書かれた時代のアメリカにおけるSF作品への状況が透けて見えてきます。
その上でこの短篇集を読むと、なかなかドロッとキテるな、というのが第一印象。『はじめに…』にも書かれている「”本格”SF以外に目を向けようとしない狭い範囲の読者のためだけの作家ではないのだ。」がよくよく分かってきます。
作者のあとがきにはこう書かれています。
---これらの短編すべてで繰り返されているモチーフがある---残酷なまでの苦痛と、グロテスクなまでの醜悪さだ。繰り返しあらわれる主題もある---死の愛好、喜びに対する支払いきれないほど高い代償、因果応報への非現実的な信頼だ。
この文章が全てを語っています。確かに”本格”SFを愛好する私のような人にはチト辛い短篇集でした。 -
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ゲド戦記別冊。
ゲド戦記の作者アーシュラ・K.ル=グウィンの作品解説、エッセイ、講演などが5編、短編が2編、ゲド戦記の翻訳者である清水真砂子さんと作家中島京子さんの解説が2編という構成の短編集。
岩波少年文庫から出ているのがちょっと驚き。一応ターゲットは少年少女なのか・・・?
ゲド戦記は昔読んで難しくてよくわからなかったというボーとした記憶がある。
(たぶん)未読の「アースシーの風」、「ドラゴンフライ アースシーの五つの物語」を読んでみようかな。
p137
「第一歩はまず振り返って自分の影についていくこと」
p139
「自分自身の影をうまく扱うことを学びさえすれば、この世界のために、なにか真に役立つことをしたことになる。」
p140
「三十年か四十年かかって成長してきた影を意識にのぼらせてそれと対面することが何よりも大切」
p151
「道徳的な善をなすための大いなる手立ては想像力である」