山田和子のレビュー一覧

  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    ネタバレ

    SF短篇集。
    SFといってイメージするのはスターウォーズのように超越したテクノロジーを使った戦闘などでしたが、この本の短編はいかにもSFな物語というよりは作者の人生観をSFというジャンルで表現しているような印象を受けました。
    宇宙人やタイムマシンが当たり前に出てきますが、それらの登場人物や道具を使って人生の考え方や人の生き方を話に落としこんで、1つ1つの話が教訓や寓話のように生き方の指標を示すような物語になっていると感じました。
    11の短編の中では、タイトルになっている無伴奏ソナタとアグネスとヘクトルの物語が気に入りました。人の幸せや向き不向きについて考えさせられる話が少し寂しげで綺麗な話だと

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    2015年03月04日
  • 時は乱れて

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    ネタバレ

    久しぶりのディック.今は亡きサンリオ文庫から出ていたものらしい.
    ディックお得意の「模造記憶」「泥沼化した戦争」「並行世界(ちょっと違うか?)」がキーワードだが,比較的前期の作品であるために,作者自身がパラノイア化したともいえる後期作品とは異なり,短編の延長のようで読みやすい.
    「なぜ彼らの側についたんだ?彼らは女性や子どもを殺しているんだ−」
    「それは彼らの方が正しいからだ.」
    今の世の中でこんな台詞を読むとゾッとしないでもないが,何が「正しい」かは読んでからのお楽しみ.

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    2014年08月24日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    まず、この文庫本の最初に『はじめに---作者への公開書簡---』が置かれています。この文章が書かれた時代のアメリカにおけるSF作品への状況が透けて見えてきます。
    その上でこの短篇集を読むと、なかなかドロッとキテるな、というのが第一印象。『はじめに…』にも書かれている「”本格”SF以外に目を向けようとしない狭い範囲の読者のためだけの作家ではないのだ。」がよくよく分かってきます。
    作者のあとがきにはこう書かれています。
    ---これらの短編すべてで繰り返されているモチーフがある---残酷なまでの苦痛と、グロテスクなまでの醜悪さだ。繰り返しあらわれる主題もある---死の愛好、喜びに対する支払いきれない

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    2014年06月22日
  • 時は乱れて

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    初期の作品ではあるがディックのパラノイアの予兆のようなものを感じる。
    得意の現実崩壊系の作品で、プロットが面白く・破綻も無くしっかりしていて珍しく綺麗にまとまっている。
    良く言えばまとも、悪く言えばディックの良さが足りないかなと言ったところ。

    でもこういう話はすごく好きですw

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    2014年02月06日
  • 火明かり ゲド戦記別冊

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    ゲド戦記別冊。
    ゲド戦記の作者アーシュラ・K.ル=グウィンの作品解説、エッセイ、講演などが5編、短編が2編、ゲド戦記の翻訳者である清水真砂子さんと作家中島京子さんの解説が2編という構成の短編集。
    岩波少年文庫から出ているのがちょっと驚き。一応ターゲットは少年少女なのか・・・?
    ゲド戦記は昔読んで難しくてよくわからなかったというボーとした記憶がある。
    (たぶん)未読の「アースシーの風」、「ドラゴンフライ アースシーの五つの物語」を読んでみようかな。

    p137
    「第一歩はまず振り返って自分の影についていくこと」

    p139
    「自分自身の影をうまく扱うことを学びさえすれば、この世界のために、なにか

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    2025年11月13日
  • 無限病院

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    とてもテーマと題材が好きでした。
    病院・医療・ディストピア・宇宙など心躍るテーマが盛りだくさんです。

    冒頭の一気に引き込まれる設定に心を掴まれたが、中盤から最後にかけては少し置いてけぼりにされてしまった感覚があります。

    私自身の読解力が欠けていることもありますが、なかなかに難しい内容ではないかと思います。

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    2025年11月11日
  • 火明かり ゲド戦記別冊

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    短編2編と、講演の内容。
    講演の部分を読んで、ゲド戦記全体の傾向に納得。勇者の物語~ジェンダー、普通のおじさんおばさんになることを選んだゲドとテナー等々。この問題はなかなかスッキリいかない、根が深い。今は大分マシになったとは思うけれど。

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    2025年06月24日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    文通百合タイムトラベルSF。うつくしい。仕掛けが凝っている

    主要なSF賞を総なめにしたということで、もうちょっといかにもSFっぽいやつ(ハードSF的な?)かと漠然と思っていたがイメージと違った。でもヒューゴー賞やネビュラ賞ってこういうのが多いような気もする

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    2024年07月13日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    さすが古典SF作家の短編集と思わせる一冊!
    作品の多彩さもそうなのですが、最近のSFの傑作たちに通じるアイディアも随所に見られ、普遍的なSFの血脈を感じました。

    もっとも印象的だった短編は表題作の「無伴奏ソナタ」
    音楽を愛した天才が、国家から音楽をはじめ多くのものを奪われていく姿を描いた短編。

    国に逆らうと分かっていながらも音楽を創ろうとする主人公の静かな熱意と過酷な人生に思いをはせるとともに、ラストシーンの素晴らしさが強く印象に残ります。文章が主人公から距離をとった冷静な語り口なのですが、その分深く静かな感動がゆっくりと押し寄せてきました。

    SF作品でありながらもホラーの雰囲気を感じる

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    2022年10月18日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    手紙のやり取りを通して物語を進めていく実験的手法は面白いが、英語でないと判らないらしい文章の面白さが伝わらず残念。相手への奇想天外な手紙送出方法や、赤と青をイメージする書き出し、PSの使い方、時間SFにおいて納得できるストーリー、良い面はたくさんあるのだが、今一つキャラクターの気持ちに入り込めなかった。SFアニメ化して連続ものでやると、手紙の現れ方がビジュアライズされて面白いかも。二人の美少女のタイムトラベルバトルとして京アニで作れないかな?地味な手紙のやり取りはバイオレットエバーガーデンで克服済みだし・・・

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    2022年09月04日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    2021-10-31
    なかなか凝った構成と美しい文章。百合ではあるのだけど、むしろふたつの魂の交流の詩。
    最後の最後でタイトルの意味が明らかになった時の爽快感たるや。人を選ぶと思うけど、刺さる人には奥底まで刺さる美編

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    2021年11月01日
  • シミュラクラ〔新訳版〕

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    ディックにしては珍しい(?)群像劇。登場人物が20人を超える多さで、かつ場面の転換も多いので、途中でどういう展開かよくわからなくなることがしばしば。
    世界設定がワルシャワを中心とする共産主義体制とヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)に二極化された社会であったり、タイムトラベル装置でナチスのゲーリング元帥を呼び出す展開、模造人間(シミュラクラ)や火星生物の登場、…などなど、おもしろそうな要素で溢れているにも関わらず、これらがうまく物語に溶け込んでいない印象(結局、ゲーリングはなんで召喚したのか?笑)。 
    最後は尻すぼみ、というか投げっぱなしで終わったし、これまで読んできたディックの長篇小説の中

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    2018年10月28日
  • 時は乱れて

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    物語の大きな構造の真相は早めにわかる。その上でその理由や背景を押し知るべく登場人物の描写を読み取るのに力が入るのだが、いざ終盤で全てが明かされても、何か物足りなかったかなぁ

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    2015年02月03日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    完全に表紙とタイトルの響きに惹かれて購入し、読んだ。
    筆者と作品について何も知らず、
    勝手に現代的なゴリゴリのリアルでハードなSF
    を書く人なのではと想像していたのだが、
    多少グロく、幻想的で、ちょっと日常を踏み外した
    ところにある「世にも奇妙な物語」的と受け止める。
    確かに表題作は本のタイトルに選ばれるのも当然だが、
    この中で一番は《大衆》の物語であり、
    《支配者》の物語であると思う。

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    2014年09月30日