山田和子のレビュー一覧
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読み終わるのに一ヶ月以上かかってしまった…
「マジックリアリズム医療SF」や三体の劉慈欣のキャッチコピーで手を取ったものの、プロローグでワクワクしたのも束の間、本編に入るとひたすらに迷路のような話を永遠と読まされ(?)、なかなか思うように読み進められなかった…。途中で安部公房の『密会』を読んでしまって、あれこれが答えでは?みたいな気持ちになったのもある。三体は、誰にでも問答無用に勧めていたけれど、こちらは誰にでも勧められる本ではないし、これ第一作か、まだ二作あるのか読めるかなという気持ちも強い笑。
最後の最後でプロローグに繋がっていくような展開が始まった時からあとはようやくまた読めるようにな -
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旱魃世界
人類の愚かな振舞いにより、海からの水の恵みが途絶えた世界。
湖は干からび川は流れを止め、生き物は死に向かい、陸地は砂漠化していく。
人は海水を蒸留して得るわずかな水と引き換えに、愚かにも、更に塩で海を浸食していく。
連想されるのはマッカーシー「ザ・ロード」でありマルセル・セロー「極北」であり、映画「マッドマックス」や「風の谷のナウシカ」だろうけど、水を求めて南へ向かう姿は、なぜかスタインベック「怒りの葡萄」をイメージしてしまう。
主人公が「意識の中に携えてきた内なる景観(イナーランドスケープ)の周辺領域を越える旅」とは、なんだったのか……最後まで読んでも捉えることは難しい。
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リスボン地震は18世紀の中頃に発生している。当然ながら、地震そのものはそれまでにも、そのあとにも起こるのだが、リスボン地震は当時のヨーロッパに与えた文明史的な意味において、大きな衝撃を与えている。
リスボンはポルトガルの首都であり、18世紀に繁栄していたわけだが、地震直前のリスボンにおいては崩壊の兆しがあったという。莫大な富はあるものの、王室が独占し民衆は貧困のなかにあった。そんななかでリスボン地震は起こる。
リスボン地震の前後のポルトガルを描きながら、当時の宗教観や哲学、地震学の兆し、復興にも触れる。リスボン地震を総括する本としては、とてもよくまとまっていると思う。 -
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タイムトラベルとパラレルワールドをはじめとして、模造人間(シミュラクラ)、小型宇宙船、火星移住、架空歴史、管理社会、ミュータント、超能力、未来戦争、などなど、SFガジェットてんこ盛りの長編。数十人の登場人物に、主人公級の人物が何人もいて、それぞれに絡み合いながらプロットが駆動していく。要素が多すぎて目が回る上に、物語がどこに向かっているのか戸惑ってしまうが、その中でもディック作品共通のテーマ性は感じられ、キャラクターに魅力もありテンポも良いので、面白く一気に読み進めることができた。終盤のたたみかけるような展開にもワクワクしたものの、まとまらずに突き放されるので読後感はややモヤモヤ。ここから想像
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#日本SF読者クラブ 現在の世界情勢を反映した近未来(?)が舞台で、遠隔操作型ロボット兵器が登場する。映画的な面白さがあるが、映像化は無理だろう。「宇宙の戦士」を映画化した時は、登場人物にパワードスーツを着せなかった。皆同じ姿形になって、見た目で区別できないから。スターウォーズのストームトルーパーを思い浮かべれば、理解できるだろう。ティン・メン(遠隔機動歩兵)の姿だからこそ、物語として成り立つ。話としては、少々暗いかな。
自律型ドローン兵器が登場してきても、やはり引き金を引くのは人間じゃないとだめという考えが根底にある。確かに、ターミネーターができたら怖い。 -
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SFとかミステリーとか全ジャンルを含めて考えても、P.K.ディックは私のなかで特異で特別な作家。
彼の場合は、小説という創作物の「出来が良くない」方が、時として「読者としての満足感が得られる」事が多いという、グラフでイメージすれば反比例の曲線を持つ、珍しい作家。
起承転結がうまくいっている作品とか、終盤の締めが鮮やかな作品は、実は、この作家に期待する「禍々しさ」「絶無のカオス感」に乏しかったりする。失敗作でも(むしろ失敗作こそ)価値を生んでしまう、失敗作の至芸とでも云うべきか。
本作は、うまくいっちゃってるサイドの傑作。普段の生活空間が異世界に傾いていく過程が鮮やかで、P.K.=粗雑で上 -
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「SF好きならどう?」と同僚に勧められたのが
この人の「エンダーのゲーム」という作品。
長編と短編があるようですが、
バトル物SFに興味があまり向かなかったので
短編版のこちらを選択しました。
で…
エンダーのゲームに関しては
ガンダムみたいなロボット系のSF好きなら
長編版のほうが楽しめるかもしれません。
その他、短編もなかなか面白い作品が多かったです。
単に「面白い」というより
数年後「あれ…なんか、こんな話どこかで読まなかったっけ…」って
忘れた頃にウズウズしてしまうような、
何か知らないうちに妙な種を植え付けられるような内容が揃っています。
個人的には
・王の食肉
・深呼吸
・四階 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ読んでて、エンタメってこういうものだったって思い出した。とくに「エンダーのゲーム(短編版)」。11才の少年が他の誰にも思いつかない戦術でめくるめく大活躍… って、そう、最近忘れてたけど、そういうのがエンタメだった。リアリティとかどうでもよくて、とにかく面白ければいいんだよ。
「ブルーな遺伝子を身につけて」は、正統派SFっぽい顛末に加えて、宇宙服らしき「モンキースーツ」の語感がツボ。猿のスーツなんて不格好なはずなのに、何故かスタイリッシュ。
「アグネスとヘクトルたちの物語」…ステンドグラスの絵の裏表をひっくり返して見ているような話。どっちも表だしどっちも裏。民族弾圧による死の運命から義両親に