山田和子のレビュー一覧

  • 無限病院

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    読み終わるのに一ヶ月以上かかってしまった…
    「マジックリアリズム医療SF」や三体の劉慈欣のキャッチコピーで手を取ったものの、プロローグでワクワクしたのも束の間、本編に入るとひたすらに迷路のような話を永遠と読まされ(?)、なかなか思うように読み進められなかった…。途中で安部公房の『密会』を読んでしまって、あれこれが答えでは?みたいな気持ちになったのもある。三体は、誰にでも問答無用に勧めていたけれど、こちらは誰にでも勧められる本ではないし、これ第一作か、まだ二作あるのか読めるかなという気持ちも強い笑。

    最後の最後でプロローグに繋がっていくような展開が始まった時からあとはようやくまた読めるようにな

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    2024年12月02日
  • 旱魃世界

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    旱魃世界

    人類の愚かな振舞いにより、海からの水の恵みが途絶えた世界。
    湖は干からび川は流れを止め、生き物は死に向かい、陸地は砂漠化していく。
    人は海水を蒸留して得るわずかな水と引き換えに、愚かにも、更に塩で海を浸食していく。

    連想されるのはマッカーシー「ザ・ロード」でありマルセル・セロー「極北」であり、映画「マッドマックス」や「風の谷のナウシカ」だろうけど、水を求めて南へ向かう姿は、なぜかスタインベック「怒りの葡萄」をイメージしてしまう。

    主人公が「意識の中に携えてきた内なる景観(イナーランドスケープ)の周辺領域を越える旅」とは、なんだったのか……最後まで読んでも捉えることは難しい。

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    2024年02月14日
  • リスボン大地震:世界を変えた巨大災害

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    リスボン地震は18世紀の中頃に発生している。当然ながら、地震そのものはそれまでにも、そのあとにも起こるのだが、リスボン地震は当時のヨーロッパに与えた文明史的な意味において、大きな衝撃を与えている。

    リスボンはポルトガルの首都であり、18世紀に繁栄していたわけだが、地震直前のリスボンにおいては崩壊の兆しがあったという。莫大な富はあるものの、王室が独占し民衆は貧困のなかにあった。そんななかでリスボン地震は起こる。

    リスボン地震の前後のポルトガルを描きながら、当時の宗教観や哲学、地震学の兆し、復興にも触れる。リスボン地震を総括する本としては、とてもよくまとまっていると思う。

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    2024年01月14日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    「エンダーのゲーム」が気になって読み始めたが、宇宙を舞台としていないわりと現実に則した短編も多く、読んでいてダレることがなかった。友人や家族との何気ない会話や出来事をきっかけに、これほど多様な物語にまで膨らませて作品に仕上げる作者の力量に驚かされる。「エンダーのゲーム」の長編も読んでみたいと思えた。

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    2023年03月10日
  • 太陽の帝国

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    救われた少年兵の中には新しい生活に馴染めず戦闘に戻っていく子がそれなりにいると聞くけど、その心理ってこういうことなのかもと思ってしまった。ジムは兵士ではなかったけれど親と離れて捕虜として収容されて、戦争の中でできることをなんでもやって生き延びた。幼さも賢さも全部使って適応して本当に想像を絶する。戦勝国の被害者の経験を読む機会は多くないけど戦争ってほんとに誰にとっても平等にひどいものだと思う。いまもあちこちでこんな暴力と残虐性に晒されてる人たちがいることも、私たちに迫ってくるかもしれないことも、本当に辛い。

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    2022年10月23日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    レッドとブルーの文通のバリエーションが規格外で面白かった。英語の韻の踏み方や引用の面白さはわからなかった。

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    2021年09月10日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    書簡ものは良い。交互にやり取りする手紙に表れる感情の変化が面白いからだ。原文を読めたり引用に関する知識があればより楽しめると思うが、それでなくても十分楽しめた。タイトルの意味が最後にわかって良かった。

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    2021年07月22日
  • シミュラクラ〔新訳版〕

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    タイムトラベルとパラレルワールドをはじめとして、模造人間(シミュラクラ)、小型宇宙船、火星移住、架空歴史、管理社会、ミュータント、超能力、未来戦争、などなど、SFガジェットてんこ盛りの長編。数十人の登場人物に、主人公級の人物が何人もいて、それぞれに絡み合いながらプロットが駆動していく。要素が多すぎて目が回る上に、物語がどこに向かっているのか戸惑ってしまうが、その中でもディック作品共通のテーマ性は感じられ、キャラクターに魅力もありテンポも良いので、面白く一気に読み進めることができた。終盤のたたみかけるような展開にもワクワクしたものの、まとまらずに突き放されるので読後感はややモヤモヤ。ここから想像

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    2021年03月16日
  • シミュラクラ〔新訳版〕

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    ネタバレ

    フィリップ・K・ディック作品!
    ジャケ買いではなく、シミュラクラという響きを聞いたことあったからのタイトル買い。

    途中じゃん!?って感じで終わった。

    登場人物が多すぎて全然把握できない。
    そもそもストーリーも把握しにくい。それがディック流っぽくはあるが。
    半分くらい読み進めてようやくなんとかわかってきた、気がしてくるという感じだった。

    ある意味地味なブレードランナーって感じかもしれない。
    そもそも、シミュラクラそのものが全然出てこない。
    映像で見てもたぶん理解できないと思う。

    が、おもしろくなくはなかった。不思議。

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    2020年12月21日
  • 遠隔機動歩兵 -ティン・メン-

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    #日本SF読者クラブ 現在の世界情勢を反映した近未来(?)が舞台で、遠隔操作型ロボット兵器が登場する。映画的な面白さがあるが、映像化は無理だろう。「宇宙の戦士」を映画化した時は、登場人物にパワードスーツを着せなかった。皆同じ姿形になって、見た目で区別できないから。スターウォーズのストームトルーパーを思い浮かべれば、理解できるだろう。ティン・メン(遠隔機動歩兵)の姿だからこそ、物語として成り立つ。話としては、少々暗いかな。
     自律型ドローン兵器が登場してきても、やはり引き金を引くのは人間じゃないとだめという考えが根底にある。確かに、ターミネーターができたら怖い。

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    2019年11月30日
  • シミュラクラ〔新訳版〕

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    評価4にしたけど、これ傑作じゃないかな?念動力、時間移動、ガジェット、火星、異星生物…登場人物が多いのでメモを取ったほうがいいかも。

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    2019年02月28日
  • 時は乱れて

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    いま自分がいるところは、本当に自分の居場所なのだろうか。
    このような不安を微かに(しかし確実に)感じながら生きている男の物語。

    上記の不安は、作者が以後の作品で反映させていく不安群――たとえば、自分が記憶していることは、本当に自分の記憶なのだろうかという不安――の一つと考えてよいでしょう。

    戦後アメリカが舞台ということで、共産圏に対する不安や敵意なども描かれていて、SFという要素以外でも知れるところがあります。

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    2019年02月02日
  • 時は乱れて

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    SFとかミステリーとか全ジャンルを含めて考えても、P.K.ディックは私のなかで特異で特別な作家。

    彼の場合は、小説という創作物の「出来が良くない」方が、時として「読者としての満足感が得られる」事が多いという、グラフでイメージすれば反比例の曲線を持つ、珍しい作家。

    起承転結がうまくいっている作品とか、終盤の締めが鮮やかな作品は、実は、この作家に期待する「禍々しさ」「絶無のカオス感」に乏しかったりする。失敗作でも(むしろ失敗作こそ)価値を生んでしまう、失敗作の至芸とでも云うべきか。

    本作は、うまくいっちゃってるサイドの傑作。普段の生活空間が異世界に傾いていく過程が鮮やかで、P.K.=粗雑で上

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    2019年01月02日
  • 時は乱れて

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    他の作品と文体が違うので戸惑うが、読み進めればいつものディック小説。映画「トゥルーマン・ショー」がインスパイアされた物語。

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    2018年12月20日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    「SF好きならどう?」と同僚に勧められたのが
    この人の「エンダーのゲーム」という作品。
    長編と短編があるようですが、
    バトル物SFに興味があまり向かなかったので
    短編版のこちらを選択しました。
    で…
    エンダーのゲームに関しては
    ガンダムみたいなロボット系のSF好きなら
    長編版のほうが楽しめるかもしれません。

    その他、短編もなかなか面白い作品が多かったです。
    単に「面白い」というより
    数年後「あれ…なんか、こんな話どこかで読まなかったっけ…」って
    忘れた頃にウズウズしてしまうような、
    何か知らないうちに妙な種を植え付けられるような内容が揃っています。

    個人的には
    ・王の食肉
    ・深呼吸
    ・四階

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    2018年12月02日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    怖い、恐い、コワイ。広くいろんな意味で。
    「エンダーのゲーム」の背景に対するクールで静かな恐さ、「王の食肉」のタイトルそのままの生々しさ、「タイムリッド」の軽く乾いた感じ、などさまざまなコワさの11編。
    残酷で、時に人の心の罪悪感を突く。
    思うようにならなさ、無力感が漂う。
    どれもが怖くて、虚しいような悲しさもあった。
    当初、多少の苦手意識を抱えながら読んでいたけれど、今はいい意味でもう一度読みたいという気になっている。

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    2020年05月23日
  • 時は乱れて

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    ハードカバーを見て、表紙のかっこよさで読んでみたいと思った本。
    洋物なのに大変読みやすく、内容もすごく面白かった。30年前の本だというのが驚きです。
    ただ、後半の急展開になかなか付いていけなかった。終わり方もここで終わり!?て感じで、もう少し先を読みたかった。

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    2016年11月25日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    ネタバレ

    読んでて、エンタメってこういうものだったって思い出した。とくに「エンダーのゲーム(短編版)」。11才の少年が他の誰にも思いつかない戦術でめくるめく大活躍… って、そう、最近忘れてたけど、そういうのがエンタメだった。リアリティとかどうでもよくて、とにかく面白ければいいんだよ。

    「ブルーな遺伝子を身につけて」は、正統派SFっぽい顛末に加えて、宇宙服らしき「モンキースーツ」の語感がツボ。猿のスーツなんて不格好なはずなのに、何故かスタイリッシュ。

    「アグネスとヘクトルたちの物語」…ステンドグラスの絵の裏表をひっくり返して見ているような話。どっちも表だしどっちも裏。民族弾圧による死の運命から義両親に

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    2016年11月12日
  • 幻影の都市

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    これは栗本薫グインサーガーの原作ではないか・・・
    表紙   6点まつざき あけみ
    展開   7点1967年著作
    文章   6点
    内容 725点
    合計 744点

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    2016年07月21日
  • 時は乱れて

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    映画ブレードランナーの原作SF作家として有名なヒィリップKディックの作品。初ディック。
    新聞の懸賞クイズに2年間勝ち続けている男が、日常の存在感に違和感を感じるところから物語が始まる。最初は古いアメリカンファミリーの日常描写かなと思っていたら、段々とSFになっていくあたりの展開がうまいと思った。映画にもしやすいような展開だ。ソ連やら核戦争のことを起こる可能性が高い前提で書かれているところが時代を感じる。ただし古臭い感じはあまりなく、すっきり読めた。
    ブレードランナー原作の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も読んでみようと思う。

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    2016年02月14日