羽根由のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とても整理された内容の書籍である。
頭が整理されて『未来のために考えること』の萌芽が芽生えた気がする。
AIや機械学習の未来に関しては、様々な意見・考え方の違いがあるようだ。そして何冊か本を読んでみて、近しい意見なのに現実の利益や頑固さの中に微妙なニュアンスの違いがあり、問題を考えることから人を遠ざける一因となっている。
《超賢い知性体 》ー 多くの面で人類を上回る能力を持つ可能性のある「機械」。
【AIを使って他者と差別化したい】【AIに負けない能力開発】【AIを違う側に子供を育てたい】などなど、自分と家族だけが逃れるハウツー本も大量過ぎるほどに書店に並び売れているようだ。
元来、未来を予測するのは不可能である。
考えても仕方ない。考える意味が無い。なるようにしかならない…
そして無垢な科学は人を幸せにするために核爆弾を作った。他にも良かれと考えた行動が人を不幸にする可能性を孕んでいるものは多い。
そして、これらの技術は純真な探究から生まれた。AIを日々研究開発していく人々も同じなのだろう。
(仕事だからねー。っていう人も多そうだが笑)
著者はノルウェーで最初『作る』ことに従事していたが、「このままでは大変なことになる」と気付き、『その倫理性」に目を向けるようになり、組織を作り出した。
そこで著者のストルムケ氏は先ず、大局的な視点を失わずにケース分けし、比較しながら段階を追って『分からない未来』を様々な可能性に『本書の後半を費やしている】
明るいものは少ない。
もう、開発は止めよう…と思いたくなる事例が多い。でも、止められない。人間の性か。
多くの人に、AI機械学習が素晴らしいものだと伝えつつ、未来のその危険な可能性をアピールしていく。
そして、学者先生だけの論議だけでなく、皆それぞれが学び、真っ当な議論を交わす。
ごく近い未来に、もっともと有意義な《AIと人間の共存》に関する開かれた、且つ冷静な議論の場がネット上などで【真面目に】生まれることを希う。
その基礎知識のために(偏りはあるが)この本にも目を通しておくのは私達のために出来ることの一つでは無いだろうか。
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Posted by ブクログ
スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ステファン・トゥンベリ」の共著の長篇ミステリ作品『熊と踊れ(原題:Bjorndansen、英題:The Father)』を読みました。
「アーナルデュル・インドリダソン」、「ジョー・ネスボ」、「レイフ・GW・ペーション」の作品に続き、北欧ミステリです。
-----story-------------
ハヤカワ・ミステリ文庫創刊40周年記念作品
〈上〉
凶暴な父によって崩壊した家庭で育った「レオ」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三人の兄弟。
独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。
その目的とは、史上例のない銀行強盗計画を決行することだった――。
連続する容赦無い襲撃。
市警の「ブロンクス警部」は、事件解決に執念を燃やすが……。
はたして勝つのは兄弟か、警察か。
スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。
最高熱度の北欧ミステリ。
〈下〉
緻密かつ大胆な犯行で警察を翻弄し、次々と銀行を襲撃していく「レオ」たち。
その暴力の扱い方は少年時代に父から学んだものだった。
かつて彼らに何がおこったのか。
そして今、父は何を思うのか――。
過去と現在から語られる"家族"の物語は、轟く銃声と悲しみの叫びを伴って一気に結末へと突き進む。
スウェーデン最高の人気を誇り、北欧ミステリの頂点「ガラスの鍵」賞を受賞した鬼才が、圧倒的なリアリティで描く渾身の大作
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1990年代の初頭にスウェーデンを恐怖に陥れた正体不明の強盗団… まるで軍事作戦のような統率の取れた的確な動き、軍用銃を駆使し、ためらわずに発砲する手口は"軍人ギャング"と称された、、、
彼らは1991年(平成11年)秋から、1993年(平成15年)末までに、軍の武器庫からの略奪を2件、現金輸送車の襲撃を1件(未遂3件)、銀行や郵便局の強盗を9件、さらにはストックホルム中央駅で爆弾事件まで起こした… 警察は、この強盗団の正体を全くつかめなかったが、犯行の計画性、周到性、狂暴性等から、初犯ではないと思われていた。
ところが一段が逮捕されてみると、その中心となっていたのは20歳前後の三兄弟とその友人たちで、前科もなければ裏社会とのつながりもない若者たちであるとわかった… 前段が長くなりましたが、本作品は、当時スウェーデン公営テレビ記者として現場でこの事件を報道していた「アンデシュ・ルースルンド」と、犯行の中心人物だった三兄弟と実の兄弟である「ステファン・トゥンベリ」が、その一連の事件をモデルに描いたフィクション作品です、、、
とはいえ、事件に関わっていた当事者たちが描き、事件のあった場所や手口等の大部分が事実に基づいていることから、ノンフィクション作品のようなリアリティや臨場感があり、読んでいるうちに、ぐいぐいと作品の中に惹きつけられていきました… 上下巻で1,100ページ程度の大作でしたが、長くは感じませんでしたね。
暴力的な父親「イヴァン・ドゥヴニヤック」の影響下で育った「レオ(レオナルド)」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三兄弟… 長兄「レオ」が中心になり、「レオ」の恋人「アンネリー・エリクソン」や幼馴染の青年「ヤスベル」を巻きこんで、壮大な強盗計画を企てる、、、
ストックホルム防衛管区の動員用武器庫に侵入し、二個中隊分の装備がまかなえるほどの銃や爆薬を盗み出し、これを使って彼らは現金輸送車や銀行を襲い始める… 彼らは20代から10代後半とまだ若いが、リーダーである長兄「レオ」が立てる緻密な計画と冷静な指揮により、強奪は順調に進む。
事件を捜査し彼らを追う警部「ヨン・ブロンクス」も優秀だが、手を替え品を替える手口で翻弄し、尻尾を掴ませない… だが、首謀者たる「レオ」の欲望と目的は、なかなか満たされない、、、
予定では、もっと早くに巨額の金を強奪して、人生をやり直すつもりだったのだが、毎回見込みよりも少ない額しか手に入らないのだ… そういうこともあって、犯行グループの中には次第に軋みが生じ、二人の弟が離反する。
しかし最後の襲撃に執念を募らせる「レオ」は、とうとうある人物をグループに引き入れ、危険な賭けに出る… カリスマ的リーダーの「レオ」、一度決めたら譲らない「フェリックス」、まだ無邪気さが残る「ヴィンセント」、軍隊から抜けた後、尊敬する「レオ」に従い仲間になる「ヤスベル」、強盗や警察側だけでなく犯行現場に居合わせた被害者も含め、登場人物は全員、複雑で多面的な個性を持ち、それぞれに共感しながら読み進める感じでしたね、、、
犯行に向けて周到に準備を整える場面や、突入し犯行に及ぶ一部始終などの、微に入り細を穿つ描写のリアリティには、ホントに関心しました… 四人の息づかいが感じられ、自分も共犯者のひとりとしてこれから強盗に行くのだと錯覚してしまうような気分に浸れるほどの巧みさでした。
ミステリというよりは、家族・兄弟の愛憎や絆を描いたヒューマンドラマという印象ですね… 特に、家族を裏切ることの罪深さを説きつつ、妻を激しく暴行してしまう父親「イヴァン」の存在は強烈な印象が残りましたね、、、
そんな粗暴な父親を憎み拒絶する兄弟ですが、その憎い父から学んだ暴力を有効な道具として使いこなすことで犯行を完璧なものにしようとする「レオ」… 冷静に気持ちをコントロールしようとしますが、他者を屈服させる快感と昂揚により、次第に自らの大きさを勘違いしてしまうんですよね。
暴力により支配すること、コントロールされることの恐ろしさを改めて感じました、、、
でも、本作品、次々と犯行を重ねるのですが、「暴力」はあっても「死」がないのは良かったかな… これで多くの命が奪われたら、救いがないですもんね。
本作品は、続篇が『兄弟の血―熊と踊れⅡ』として刊行されているようです… こちらも読んでみたいですね。
以下、主な登場人物です。
「レオ(レオナルド)」
ドゥヴニヤック家の三兄弟の長男
「フェリックス」
ドゥヴニヤック家の三兄弟の次男
「ヴィンセント」
ドゥヴニヤック家の三兄弟の三男
「イヴァン・ドゥヴニヤック」
三兄弟の父
「ブリット=マリー・アクセルソン」
三兄弟の母
「ヤスベル」
三兄弟の幼なじみ
「アンネリー・エリクソン」
レオの恋人。シングルマザー
「セバスチャン」
アンネリーの息子
「ヨン・ブロンクス」
ストックホルム市警警部
「レナート・カールストレム」
ストックホルム市警警視正
「サンナ」
ストックホルム市警鑑識官
「ガッペ」
建設業者
「サム」
ヨンの兄。服役囚 -
Posted by ブクログ
スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ステファン・トゥンベリ」の共著の長篇ミステリ作品『熊と踊れ(原題:Bjorndansen、英題:The Father)』を読みました。
「アーナルデュル・インドリダソン」、「ジョー・ネスボ」、「レイフ・GW・ペーション」の作品に続き、北欧ミステリです。
-----story-------------
ハヤカワ・ミステリ文庫創刊40周年記念作品
〈上〉
凶暴な父によって崩壊した家庭で育った「レオ」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三人の兄弟。
独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。
その目的とは、史上例のない銀行強盗計画を決行することだった――。
連続する容赦無い襲撃。
市警の「ブロンクス警部」は、事件解決に執念を燃やすが……。
はたして勝つのは兄弟か、警察か。
スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。
最高熱度の北欧ミステリ。
〈下〉
緻密かつ大胆な犯行で警察を翻弄し、次々と銀行を襲撃していく「レオ」たち。
その暴力の扱い方は少年時代に父から学んだものだった。
かつて彼らに何がおこったのか。
そして今、父は何を思うのか――。
過去と現在から語られる"家族"の物語は、轟く銃声と悲しみの叫びを伴って一気に結末へと突き進む。
スウェーデン最高の人気を誇り、北欧ミステリの頂点「ガラスの鍵」賞を受賞した鬼才が、圧倒的なリアリティで描く渾身の大作
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1990年代の初頭にスウェーデンを恐怖に陥れた正体不明の強盗団… まるで軍事作戦のような統率の取れた的確な動き、軍用銃を駆使し、ためらわずに発砲する手口は"軍人ギャング"と称された、、、
彼らは1991年(平成11年)秋から、1993年(平成15年)末までに、軍の武器庫からの略奪を2件、現金輸送車の襲撃を1件(未遂3件)、銀行や郵便局の強盗を9件、さらにはストックホルム中央駅で爆弾事件まで起こした… 警察は、この強盗団の正体を全くつかめなかったが、犯行の計画性、周到性、狂暴性等から、初犯ではないと思われていた。
ところが一段が逮捕されてみると、その中心となっていたのは20歳前後の三兄弟とその友人たちで、前科もなければ裏社会とのつながりもない若者たちであるとわかった… 前段が長くなりましたが、本作品は、当時スウェーデン公営テレビ記者として現場でこの事件を報道していた「アンデシュ・ルースルンド」と、犯行の中心人物だった三兄弟と実の兄弟である「ステファン・トゥンベリ」が、その一連の事件をモデルに描いたフィクション作品です、、、
とはいえ、事件に関わっていた当事者たちが描き、事件のあった場所や手口等の大部分が事実に基づいていることから、ノンフィクション作品のようなリアリティや臨場感があり、読んでいるうちに、ぐいぐいと作品の中に惹きつけられていきました… 上下巻で1,100ページ程度の大作でしたが、長くは感じませんでしたね。
暴力的な父親「イヴァン・ドゥヴニヤック」の影響下で育った「レオ(レオナルド)」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三兄弟… 長兄「レオ」が中心になり、「レオ」の恋人「アンネリー・エリクソン」や幼馴染の青年「ヤスベル」を巻きこんで、壮大な強盗計画を企てる、、、
ストックホルム防衛管区の動員用武器庫に侵入し、二個中隊分の装備がまかなえるほどの銃や爆薬を盗み出し、これを使って彼らは現金輸送車や銀行を襲い始める… 彼らは20代から10代後半とまだ若いが、リーダーである長兄「レオ」が立てる緻密な計画と冷静な指揮により、強奪は順調に進む。
事件を捜査し彼らを追う警部「ヨン・ブロンクス」も優秀だが、手を替え品を替える手口で翻弄し、尻尾を掴ませない… だが、首謀者たる「レオ」の欲望と目的は、なかなか満たされない、、、
予定では、もっと早くに巨額の金を強奪して、人生をやり直すつもりだったのだが、毎回見込みよりも少ない額しか手に入らないのだ… そういうこともあって、犯行グループの中には次第に軋みが生じ、二人の弟が離反する。
しかし最後の襲撃に執念を募らせる「レオ」は、とうとうある人物をグループに引き入れ、危険な賭けに出る… カリスマ的リーダーの「レオ」、一度決めたら譲らない「フェリックス」、まだ無邪気さが残る「ヴィンセント」、軍隊から抜けた後、尊敬する「レオ」に従い仲間になる「ヤスベル」、強盗や警察側だけでなく犯行現場に居合わせた被害者も含め、登場人物は全員、複雑で多面的な個性を持ち、それぞれに共感しながら読み進める感じでしたね、、、
犯行に向けて周到に準備を整える場面や、突入し犯行に及ぶ一部始終などの、微に入り細を穿つ描写のリアリティには、ホントに関心しました… 四人の息づかいが感じられ、自分も共犯者のひとりとしてこれから強盗に行くのだと錯覚してしまうような気分に浸れるほどの巧みさでした。
ミステリというよりは、家族・兄弟の愛憎や絆を描いたヒューマンドラマという印象ですね… 特に、家族を裏切ることの罪深さを説きつつ、妻を激しく暴行してしまう父親「イヴァン」の存在は強烈な印象が残りましたね、、、
そんな粗暴な父親を憎み拒絶する兄弟ですが、その憎い父から学んだ暴力を有効な道具として使いこなすことで犯行を完璧なものにしようとする「レオ」… 冷静に気持ちをコントロールしようとしますが、他者を屈服させる快感と昂揚により、次第に自らの大きさを勘違いしてしまうんですよね。
暴力により支配すること、コントロールされることの恐ろしさを改めて感じました、、、
でも、本作品、次々と犯行を重ねるのですが、「暴力」はあっても「死」がないのは良かったかな… これで多くの命が奪われたら、救いがないですもんね。
本作品は、続篇が『兄弟の血―熊と踊れⅡ』として刊行されているようです… こちらも読んでみたいですね。
以下、主な登場人物です。
「レオ(レオナルド)」
ドゥヴニヤック家の三兄弟の長男
「フェリックス」
ドゥヴニヤック家の三兄弟の次男
「ヴィンセント」
ドゥヴニヤック家の三兄弟の三男
「イヴァン・ドゥヴニヤック」
三兄弟の父
「ブリット=マリー・アクセルソン」
三兄弟の母
「ヤスベル」
三兄弟の幼なじみ
「アンネリー・エリクソン」
レオの恋人。シングルマザー
「セバスチャン」
アンネリーの息子
「ヨン・ブロンクス」
ストックホルム市警警部
「レナート・カールストレム」
ストックホルム市警警視正
「サンナ」
ストックホルム市警鑑識官
「ガッペ」
建設業者
「サム」
ヨンの兄。服役囚 -
Posted by ブクログ
人間に宿るタツノオトシゴ…脳にある海馬を、つまり記憶のしくみについて書かれた本。
タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて手に取った。
神経科学や認知心理学など、科学の本でありながら歴史、文学、心理学、建築学、神話学、生物学、環境問題などいろいろな分野の話題を組み合わせながら、情緒的でユーモラスでもある。
そんな本書はノルウェー人の作家&神経心理学者の姉妹によって書かれている。姉妹同士であることの屈託のなさから、時には喧嘩をしつつも、好奇心旺盛な彼女らはとことん記憶について突き詰め書いたとのこと。とても愛着の湧く本だ。
姉妹は様々な記憶に、海馬に関する過去の事例や先行研究を紹介しながら、自身らでも実験の再現をしたり、それらを鑑みた上で、どんなことでも記憶しておこうという試みはやめるべき。と記憶の衰えに日々憂える私たちに寄り添うように語りかけてくれる。
第1章 海の魔物――海馬の発見
第2章 二月にタツノオトシゴ(海馬)を求めて潜水を――記憶は脳のどこに定着するか
第3章 スカイダイバーが最後に考えること
――個人的な記憶とは
第4章 カッコウのひな
――虚偽記憶はいつ(正常な)記憶の中に忍びこむか
第5章 大掛かりなタクシー実験とかなり奇妙なチェス対決――記憶力をよくする方法
第6章 忘却は思い出の真珠を作る――なぜ人は忘れるのか
第7章 脳内のタイムマシン
――過去を思い出すことも未来を想像することも
どの章も面白かった。
記憶の捏造は誰でも簡単にしてしまいがちであることがとてもよくわかった。
とりわけ目から鱗が落ちたのは第7章だった。
記憶は過去にも未来にも双方に働くというのは、薄々生活の中で分かっていたはずなのに、このようにわかりやすく科学的に説明されるとハッとしてしまったのだ。
過去の記憶があるからこそ未来を想像できる。
未来が想像できるからこそ、文学が生まれたのだ。
また、うつ病などを患うと未来の想像があやふやになり難しくなる。孤立を深めても未来の想像があやふやになる。生き詰まりそうになる。
そんな時は「物語」に触れるのが良いのだそうだ。
物語に、他者の人生に多く触れることで、生き詰まっていたところに、「今」以外の未来を見ることができる。
そうか…だから私はこんなにも物語を欲しているのか。とものすごく腑に落ちた。物語に触れるのは私にとって、とても大事なことだ。
具体的に未来をシミュレーションすることで、さまざまなシナリオの細部が明確になりどれを選ぶか判断しやすくなるという未来思考を「エピソード先見(⇔エピソード記憶)」と、トーマス・ズデンドルフ氏は呼んでいるらしく、とても興味深かったので書き留めた。
またノルウェーでの事例・研究やノルウェーで活躍する人物などもたくさん知ることができるのでそこもいい。
本書ではたくさん先行研究を調べていて、それでもまだ未知数な部分の多い記憶。人間の脳のしくみ。
もっともっと知りたいと思った。
そして何度でも本書を読み込みたいと思った。
もちろん、多くの人に読まれてほしいとも。 -
Posted by ブクログ
人の脳に棲むタツノオトシゴ——海馬。作家のヒルダと心理学者のイルヴァ姉妹は、地理と記憶の関係性や、他人の記憶を捏造することは可能かどうかなどを過去の研究に基づいて自らも実験し、記憶を司る器官の謎を探っていく。また、警察官、タクシー運転手、チェスプレイヤー、俳優、テロ被害者でもあるテロ研究者など、幅広い人びとへのインタビューを通じて「人の生にとって記憶とは何か」という問いに軽やかな答えを提案してくれる、記憶と忘却にまつわるノンフィクション。
面白かった!オリヴァー・サックスに近い読みごこちだが、サックスが脳神経科医として患者の脳に接しているのに対して、こちらは作家と心理学者のコンビなので固い定義に拠らない、柔らかい意味での〈精神〉や〈心〉に触れるような書き方。この距離感がとても読みやすかった。「私たち」という一人称複数も心地よい。
面白かったエピソードは、まず脳の機能不全でエピソード記憶がない人が一定数いるということ。意味記憶はあるので日常生活を送るには支障ないが、他人が幼少期の記憶をありありと語るのを聞いて「作り話だ」と思っていたという。なにせ他人の頭のなかの話なのでわからないが、こういう人はそれなりにいるんだろうな。個人的にはエピソード記憶がないとどんな夢を見るのか気になる。見ないのかな。
PTSDのような心的後遺症を残さないためには、激しいショックを受けた直後にテトリスをすると記憶が定着するのを防げる、という実験の話も面白かった。実践向きじゃないと言われてたけど、たぶんみんな好きな芸能人のスキャンダルにショックを受けたあと、自然とスマホゲームして記憶定着を防いでたりするよねきっと。ノルウェーのウトヤ島で起きたテロ事件の被害者へのインタビューによって浮き彫りになる目撃証言のみを頼ることの危うさや、かつて脅迫めいた取り調べを行なっていた警察官へのインタビューも印象深かった。
人はなぜ過去を記憶するのだろう。本書の著者、オストビー姉妹によれば、それは未来を想像するためだ。〈未来思考〉と〈過去の記憶〉は分かち難く結ばれている。