羽根由のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「記憶」に関して医学的、脳科学的に考察した本。特に注目したのが本の表紙にもなっている〝海馬”(表紙はタツノオトシゴだが)だ。体験したことは、人、物事、感覚、行動として個別に記憶に保管される。それらが海馬の働きによって、記憶ネットワークで互いに結びつけられているという。それによって記憶容量に余裕ができ、私たちは自由にものを考えることができる。
単に記憶と言っても、それを有効利用するような場合と、それに思い出せずに苦しんだり、不要な状況で強引に出てきて振り回される場合がある。本書ではこうしたあらゆる状況について解説していて、どれも面白い。特に、テロに遭遇した人のPTSDやロンドンのタクシードライ -
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わってしまった…
割とあっけない幕切れ…
と思ったが、史実に基づいているし、こういった終わり方の方がある意味リアルなのかも知れない。
父も少年時代の周りの人も兵役も込みで、暴力というものに触れさせられ続けていると感覚が変わってしまうものなのか。
個人的には最終手段として持つのは良いと思うが、ひけらかすとなると、、
守りたいものがあったとしても考えてしまうものはある。
そして誰がドアを開けたせいで母が殴られたのかに関して、それぞれ自分のせいと本心から思っているあたり、本当に家族のことを思っていたんだなと…
ただ、父親は最後印象が少しはかわったものの、不器用がすぎてもはや同情できなかっ -
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Posted by ブクログ
結果として2018年度ノーベル文学賞の選定が延期になった原因として選定委員会の母体ともいうべきスウェーデンアカデミーの会員の夫の長年に及ぶセクハラや公金横領問題、受賞の事前リーク(守秘義務違反)といった事象を現代のトレンド化した#MeToo運動と関連しながら報告される。
文化界?という特殊な才能を評価された者たちが集まる社会で互いの既得権を守るようなメンバーの姿があさましい。
ノーベル文学賞という世界的なステータスが特定の少数者とマスコミ(商業的な宣伝・ムーブメント)によって創出される現状は違和感を感じていたが、それが露呈したことは報道の自由の勝利であり、知る権利の勝利でもある。
文化人と称し -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初から、最後は破滅で終わるのだろうと思っていた。
だってこれ、実話をもとにしているのだもの。
怪盗ルパンや二十面相とは違う。
犯罪者をヒーローにするわけにはいかない。
だけど、彼らは本当に成功し続けた強盗だったのか?
確かに警察に尻尾は掴ませなかったが、いつも目標を下回る金額しか奪うことができなかった。
そのことについてレオは一度でも考えたことがあるのだろうか。
そしてレオは、家族は一致団結するのが当然と考えていたけれど、レオと弟たちは団結していたが、最初から一致なんてしていなかった。
レオにはそれが見えていなかった。
フェリックスが言ったとおり、彼らを統率するのが父親から長兄に代わった -
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Posted by ブクログ
ネタバレ実際の事件をモデルにした、父親の暴力で育てられた兄弟が起こした、などの事前情報をついうっかり読んでしまって、読み始めるのがちょっと億劫だったけど、ページを開いたら一気呵成に読み終えてしまった。
確かに父親の暴力シーンは読んでいて辛かった。
まだたったの10歳のレオ、7歳のフェリックス、3歳のヴィンセント。
父の暴力は子どもたちに向かうわけではない。
けれど、少なくともレオとフェリックスは、父の暴力の気配を怖れながら育ったように見える。
特にレオは、暴力を抑えられない父を、暴力に支配された男とみる。
だから自分は決して暴力に支配されることがないよう、自分を律して生きてきた。
で、何でそれが -
Posted by ブクログ
<上下二巻、併せての評です>
過去と現在の出来事が、交互に語られる。親子の物語であり、家族の物語であり、類い稀な犯罪小説でもある。人はなぜ理に合わない犯罪に走るのか。やむにやまれぬ強迫観念に突き動かされた行為の裏に隠された過去が、記憶の鍵をこじ開け、じわりじわりと顔をのぞかせる。子ども時代からこだわり続ける抜け落ちた記憶。本当は誰がしたのか。物語が進むにつれ、次第に明らかになる真実。
冒頭、四年ぶりに家族のもとに父が帰ってくる。ドアが開くなり、父は母親の顔を殴り、腹を蹴り、髪をつかんで引きずり倒し、なおも蹴り続ける。二人の間に体を入れ、止めようとする長男。その長男に「あとは頼んだぞ、レオナ