井上寿一のレビュー一覧
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学習院大学法学部教授(日本政治外交史)の井上寿一による吉田茂の評伝。
【構成】
序章 昭和のなかの吉田茂
第Ⅰ章 大陸の嵐のなかで
第Ⅱ章 政党政治と外交-外交優位の体制を求めて
第Ⅲ章 危機の時代の外交官=吉田茂
第Ⅳ章 復活を期して
第Ⅴ章 戦前を生きる戦後の吉田茂
第Ⅵ章 占領下の<自由>
第Ⅶ章 敗戦国の<自立>
終章 「吉田ドクトリン」のゆくえ
著者は『危機のなかの協調外交』『日中戦争下の日本』『昭和史の逆説』など昭和戦前期の外交史研究で知られており、前半の3章は外務官僚・吉田茂の対中国政策について、政友会、民政党、軍部を交えて描かれている。様々なチャネルによって行われていたこの時期の対中外交が要約されている。
ただ、戦後を扱った後半4章は不味い。一応時系列にはなっているものの、前半で転回されていた「外交」は話の合間にしか登場せず、敗戦によって混乱する社会世相に紙数が割かれている。これならタイトルに吉田茂を冠しなくてもいいだろう。
戦後占領期の外交はアメリカ政府・軍部の対日・対アジア戦略抜きに語ることはできないにも関わらず、日本国内の話ばかりで見通しが悪い。朝鮮戦争について全く言及されていないのには驚きを通り越してあきれるばかりである。
また、終章の「吉田ドクトリン」賞賛についても、近年の「吉田路線の再検証」という戦後日本外交史研究の潮流を踏まえた上で書いているようには思えない。
本文中に何度か登場する古川ロッパ、山田風太郎などの文化人の日記も当時の世相を表す言説としてやや興味をそそられたが、引用すべき必要性があるのかは疑問である。 -
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吉田茂になんとなくひっかかって、職場の本屋の平積みから購入。
井上氏の政治家の分析軸、横軸は経済軸で自由と統制、縦軸は、国際軸で協調と自立。
吉田は、自由で協調。例えば、岸は、自立で統制(満州の革新官僚ですから)。
最近の政治家では、小泉さんは、自由で協調。麻生さんも自由で協調。安倍さんは、自由で自立。
そう思って分析してみると、民主党の総理は、どういう軸で分類されるのかはっきりしないな。鳩山さんは国際軸は自立で、経済軸は統制かな。菅さんは経済軸、国際軸とも不明。野田さんは、経済軸は自由か?
要は、経済軸は、市場の自由を大事にするかどうか、国際軸は、日米安保を大事にするかの軸だから、政治家は誰でもはっきりしなければいけないと思うが、そこがあいまいになってきている、というか気色を明確にしないのが最近の政治スタイルのような気がする。
その他、初めて学んだ点。
(1)国際連盟の脱退直前、イギリスは、日本とシナが直接交渉をするという妥協案を提示し、松岡氏も吉田氏もこれにのったが、外務省が反対した。(p99)
(2)吉田第二次内閣の組閣の際、占領軍民政局は吉田首班に反対したが、吉田がマッカーサーと直接会って話しをして、吉田首班を認めさせた。(pp195)
いずれにしても、日本占領下での日本の政治家たちの、苦労には頭が下がる。主権を持たない国はいかに制約を受けるか。万が一、日本が、IMFの支援を受けることになれば、財政金融政策もIMFにお伺いを立てなければいけなくなる。
その苦しさを知ることは、現時点での健全な国家運営のためにも必要だと思う。日本は絶対、ギリシアのようになってはならないと固く誓う。 -
Posted by ブクログ
アメリカ化,格差社会,大衆民主主義をキーワードに,昭和はじめの20年の日常を垣間見る。先日90になった祖母,今年92の祖父は,まさにこの時代に育った,と思うと感慨深い。
戦前にも大衆消費社会があって,デパートが繁盛し,同潤会アパートができ,映画が娯楽として定着し,電灯や扇風機といった家電が売れた。しかし格差は厳然と存在し,昭和恐慌,金融恐慌を経て農村・労働者は疲弊した。
革命による格差是正の夢も弾圧によって潰え,マルクス思想から「エロ・グロ・ナンセンス」へ,世相は退廃へと転換する。現世利益を謳う新興宗教「ひとのみち教団」も弾圧される。
そこへラジオとともに颯爽と現れたのが近衛文麿。彼のカリスマに大衆は熱狂し,いつの間にか日本は敗戦への道をひた走っていた。激動の20年。祖父母たちは若くしてこんな時代を生き抜いてきたのだなぁ。