井上寿一のレビュー一覧
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昭和100年となる2025年を区切りとして、過去100年を振り返る。正直なところ敗戦までの20年は今さらながらという気がして、あまり興味が持てず、読み流してしまった。一方、戦後80年の歴史は、私が、そして日本人が意識している以上に戦争の過去を引きずり続けていることを痛感し、納得する思いがした。52年の講和・独立、60年安保も、64年五輪も、70年万博、72年の日中国交回復も。昭和天皇の退位問題については、52年の講和条約の時点で「おことば」を語り、退位する可能性があったが、その見送りになったとの背景は全く知らなかった!
60年安保に際して同志社大学2年だった保阪正康は「社会主義革命を目指していた」と語っているということも初耳で、興味深かった。 -
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<目次>
第1章 平和のなかの戦争の予兆 1926~1929
第2章 非常時小康 1930~1936
第3章 戦争をめぐる理想と現実 1937~1940
第4章 戦争と平和の間 1941~1944
第5章 国際冷戦と国内冷戦 1945~1952
第6章 高度経済成長下の戦争 1953~1970
第7章 ヴァーチャルな戦争 1971~1989
第8章 終らない戦争 1990~2025
<内容>
著者の歴史叙述は、事実だけを述べるのではなく、あとがきで言うところの「群像劇」である。小説や雑誌記事や伝記での発言などを積み重ねて歴史を見ていく手法だ。そこから単なる事実からは見えてこない背景や大衆が見えてくる。現代史を語っているからこそかも知れないが、この本からいくつか知った事があった。 -
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民主党がまだ元気だった頃に、政友会を自民党に・民政党を民主党に見立てて二大政党制の在り方について論じた本(本文中に直接的な現代政党との比較こそないが、あとがきから自民・民主の二大政党制を念頭に置いているのは明らか)。
既得権益層の支持を背景に政局的に物事を推し進める政友会と、政策的見地から政治を進めようとするもその軟弱さから実施へ一歩踏み込めない、よしんば踏み込めたとしても転んでしまう民政党との比較は面白い。惜しむべきは民主党が政友会と民政党の悪いところを受け継いでしまっている部分か。そのせいで仮定が崩れて論点がぼやけてしまっている感は否めないかな。
ただ細かい部分は読む前の両党のイメージから逸脱した知見を得られて面白い。よく軍部に迎合して515事件と共に崩壊したとも言われるが、少なくとも226事件までは(部分的に協力することはあっても)完全に迎合していた訳ではなく、軍中央部と理性的な連携をとりながら物事を進める部分もあったのは新しい発見だった。国際連盟脱退は軍の方が驚いていたくらいだし。
それだけに226事件と日中戦争は軍の政治への関わり方を根底から覆してしまったのだなぁと実感。
一次資料にかなり当たっているので、各論に関しては面白く読めた。
しかし近衛文麿本当に余計なことしかせんな。 -
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明治以降の歴史が学校教育で十分になされていないと言われるけれど、結局は今の政財界の闇に関わるので手がつけられないというのが本音だと思う。
幕末の志士だの明治の偉人だの呼ばれるのは今の政財界の創設に絡んだ人が多く、ヘタに英雄視するのは問題。
この本は昭和戦前史のみに限定した読みやすい本でした。
昭和でもこれだけ政財界はブラックなのに、明治・大正には触れられないよね。
いつの時代も官僚は優秀なのに国の方針を決定する政治家が政党間の足の引っ張り合いなどで国益に反するようなことをしているようだ。
総括して外交官経験のある人は視野が広くバランス感覚が良いようで、そういった経験のある政治家に力があるときは歴史的に良い判断ができているように感じました。
歴史は多角的にいろんな視点の意見を読んだり聞いたりして自分なりに学んでいく必要があると感じた1冊でした。 -
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第二次世界大戦は。日清・日露戦争と太平洋戦争の間で、日本人にとっては今一つピンこないと思う。「世界大戦」といっても、主戦場は日本から遠く離れた欧州。そして、「大正」時代も15年しかなく、これまた明治と昭和の間に埋没しがちだと思う。
本書は大正時代を解説するように、外交、軍事、政治、経済、社会、文化の各分野について網羅して述べられている。しかし、概して総花的な記述になっており、記憶に残るような事項はあまりなかった,。ただ「戦後」に国際協調が広がり、国際連盟が創設される。後に日本は国際協調の象徴たる国際連盟を脱退し、戦争への道を突き進んでいくことに。 -
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戦前の日本は銀座あたりをモボ・モガが闊歩し、地下鉄やデパートや浅草の映画・見世物が大盛況で、「コドモノクニ」など児童向けも含めた出版も活況を呈し、豊かな時代だったことを紹介してくれる本かと期待して読み始めたんだけど、そういう面は前半1/3くらいだった。
選挙権や労働状況の改善を求める市民運動、「家の光」誌をとおした農村改善運動、新興宗教の隆盛など、さまざまな運動に関してだいぶ紙幅を割いていて、いまとなっては言論や運動が統制され不自由な時代と平板にとらえられてしまっている感がある戦前昭和が、実は人々が意識的に活発によりよい社会を目指して活動していた時代だったということを知った。それこそ現代をしのぐほどに。 -
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「日清・日露戦争と第二次世界大戦との間の第一次世界大戦に具体的なイメージがともなわないのは、明治と戦前昭和に挟まれた大正の時代像があいまいなことに関連している。」
第二次世界大戦に向かう戦前の体制に関して、なぜそうなったのか関連書籍を何冊読み進めていってもよくわからない、よくわからないものをわからせてくれる本を探す旅はまだまだ続いている。
本書もその一環で手に取った。
冒頭に引用した一文、まさにボクの中でもその通りなのである。
第一次世界大戦は学校で習った知識の中では欧州の戦争に日本が東の方からどさくさ紛れにちょっかいを出したくらいにしか思っていない。
大正時代関しては期間が短かったということもあるのだろうが、頭に残っているのは『大正デモクラシー』と『関東大震災』くらいである。
しかし、デモクラシーが成立した時代の後になぜ戦前の軍国主義のような時代がまかり通ったのかに繋がる知識がごっそり抜けているのだ。
著者は言う。
「第一次世界大戦前後の大正時代は振り返るに値しないのか。そうではないだろう。大正と今との間には時代状況の類似点があるからである。類似点を三つ挙げる。」
・第一は大衆社会状況下の格差の問題
・第二は長期の経済停滞
・第三は政党政治システムの模索
「以上の三つの類似点は、大正の新しい〈光〉と〈影〉の時代像とともに、歴史的な示唆を与える。大正時代の日本は光り輝く文明国だった。この時代がモダンで平和だったのは、長期の経済停滞にもかかわらず、経済的な国際協調が基調になっていたからである。」
引用が長くなったが、国内においては上記の3つの類似点の観点で大正時代を中心とした国内の在り方が整理されている。
なるほど、類似という点ではまさに類似していると言えなくもない。
ただ、それよりもボクにとって意外だったのは『経済的な国際協調』、第一次世界大戦の仕組み・枠組み・戦略の違い、この戦争の前後において世界の在り方が変わっていったという部分である。
第一次世界大戦のボクのこれまでの拙い見方は『欧州における列強の戦争』以外の何モノでも無かった。
しかし、この戦争の大義は欧州に限らず、戦後の枠組みも考慮すると『「徳」=国際正義を代表するアメリカと「力」を代表するドイツの戦争だった。「力」は敗けて「徳」が勝った。』という整理の仕方が新鮮であった。
この時代からアメリカの大義は名目上『国際正義』なのである。
実際、戦中から戦後の国際体制の再構築を想定した国際連盟の枠組みが連合国を中心に進められる。
しかも、日本は国際連盟の常連国としてアジアの利益に止まらず、国際協調という新外交の枠組みを忠実に実行し、国際連盟を通して列強の義務を果たしていくのである。
ここまで国際連盟において当時の日本がコミットしていたとは驚きであった。
歴史の教科書では国際連盟脱退は触れられているが、国際連盟での日本の役割についてはほとんど言及されていない。
ただ、ここから先が問題なのである。
国際協調の下に国家戦略を進めていた日本がなぜ、それに反するような道を20数年のうちにたどることになるのか。
その原因は様々なものがあるだろうが、全ては最初に触れた原題との類似点の3つに起因するものである。
長期の経済停滞は持てるものと持てないものの格差を広げ、デモクラシーが浸透し政党政治が機能すると、政党は多数派工作のためにより大衆に阿る政策に傾いていく。大衆に阿る政治はプロフェッショナルを排斥し、大衆の声に阿るアマチュアリズムに傾倒していく。
アマチュアリズムは勢いが過ぎると腐敗を生み、国を憂う高い志はナショナリズムの昂揚で大衆の不満を吸い上げ、力で克服する。
大正から昭和へ向かう時代、このように整理をすると薄ら寒いほど現在の状況に酷似する。
しかし、大衆はそれほど愚かではないという部分をまだ信じたいボクとしては、まだ『なぜ力で克服する』という方向に大衆が熱狂していったのか?という大衆心理についてはまだまだなっとくできない部分があるのである。 -
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<目次>
はじめに
第1章 外交
第2章 軍事
第3章 政治
第4章 経済
第5章 社会
第6章 文化
おわりに
<内容>
淡々と当時の文献からの抜粋が続く。「○○版日本の歴史」シリーズの”第一次世界大戦期”を読んでいる気分。ただ、選んだ文献の組み合わせなどから当時の様子がはっきりと浮かび上がる。この時代の第一人者ならではであろう。前著の『理想だらけの戦時下日本』を読んだ時も感じたが、この時期の大衆は、「戦争」などを感じることもなく(この本では第一次世界大戦)、日々を平和だと思って過ごしていたのだろう。そういう意味で、現在の日本のリーダーの旗振りが、日本をこの時代の後に訪れた悲劇の再現を目指しているようで怖い。 -
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第一次世界大戦に日本がどのような状況で参戦したのか、また終戦後の国際連盟と日本との関係を特に描いた本だった。特に国際連盟との関係で日本が積極的に人種問題を提起したり、また国際平和に対して理解を深めようとしていたことは特筆すべき点である。ただし、朝鮮人労働者と底辺の日本人労働者との軋轢、平和展での混乱を見ると分かるように国家としての目的・理想と民衆の現実が乖離していく状況がどんどんと日本に暗い影を作っていく。個人的にはもう少し陸軍の動きであったり、5・15事件やら2・26事件の背景を描いて欲しかった部分はあったが、それについては川田稔先生の近著で探ることにしたい。
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2009年の民主党政権の発足も衝撃だったが、昨2012年の自民党政権の復活にもまた驚いた。
民主党の拙劣な政権運営や相次ぐ内部の軋轢はひどいものだったが、その後一年近くを経過すると、あの政権崩壊は民主党の愚かさだけではなく、もっと深い原因と理由があったのかもしれないとぼんやりと思いつつ本書を手にとってみた。
本書は、戦前の「政友会と民政党」という二大政党が明治憲法体制のもとでどのような歴史経過をたどったのか詳細に追いかけている。
当時は「明治憲法体制」下にあったし、「宮中」や「陸海軍」などの有力な政治勢力が存在していたり、現在とはまったく違った世界だと思っていたが、本書の内容を読むと、まるで現在の「自民党」と「民主党」の姿を見るような思いをも感じた。
すなわち「自民党=政友会」、「民主党=民政党」である。
もちろん、「政党」という政治勢力であるから方針は紆余曲折もあるし、単純な比較はできないのは当然だろうが、日本人が「政党」という西洋から輸入した組織を運営する時の行動は、ひょっとして戦前・戦後という情勢の激変にもかかわらず、似てくるのではないかとも思えた。
しかし、本書はあまりにも歴史的出来事を詳細に追いかけている。
その事実を一つ一つ読みながら理解するだけでも大変であり、その内容は多くの示唆を含んではいるが、それを「政治文化」という観点から、わかり易い簡単な結論を出すまで進むことは困難である。
本書は、あとがきで「2009年の政権交代から3年後の今、眼前に荒涼とした政治の風景が広がる。…このような国民の政治心理はで既視感がつきまとう」と語る。
まさにそのとおりであるが、そういう内容の「解説書」のほうが求められているのではないかと思えた。
本書を読んで、日本の「戦前」と「戦後」が「政党政治」という観点からはどうやら「断絶」していたわけではないらしいが、その「連続性」をどう考えたらよいのかまではわからないという点に、ちょっと不満を感じた