井上寿一のレビュー一覧
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民主党がまだ元気だった頃に、政友会を自民党に・民政党を民主党に見立てて二大政党制の在り方について論じた本(本文中に直接的な現代政党との比較こそないが、あとがきから自民・民主の二大政党制を念頭に置いているのは明らか)。
既得権益層の支持を背景に政局的に物事を推し進める政友会と、政策的見地から政治を進めようとするもその軟弱さから実施へ一歩踏み込めない、よしんば踏み込めたとしても転んでしまう民政党との比較は面白い。惜しむべきは民主党が政友会と民政党の悪いところを受け継いでしまっている部分か。そのせいで仮定が崩れて論点がぼやけてしまっている感は否めないかな。
ただ細かい部分は読む前の両党のイメージ -
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明治以降の歴史が学校教育で十分になされていないと言われるけれど、結局は今の政財界の闇に関わるので手がつけられないというのが本音だと思う。
幕末の志士だの明治の偉人だの呼ばれるのは今の政財界の創設に絡んだ人が多く、ヘタに英雄視するのは問題。
この本は昭和戦前史のみに限定した読みやすい本でした。
昭和でもこれだけ政財界はブラックなのに、明治・大正には触れられないよね。
いつの時代も官僚は優秀なのに国の方針を決定する政治家が政党間の足の引っ張り合いなどで国益に反するようなことをしているようだ。
総括して外交官経験のある人は視野が広くバランス感覚が良いようで、そういった経験のある政治家に力があると -
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第二次世界大戦は。日清・日露戦争と太平洋戦争の間で、日本人にとっては今一つピンこないと思う。「世界大戦」といっても、主戦場は日本から遠く離れた欧州。そして、「大正」時代も15年しかなく、これまた明治と昭和の間に埋没しがちだと思う。
本書は大正時代を解説するように、外交、軍事、政治、経済、社会、文化の各分野について網羅して述べられている。しかし、概して総花的な記述になっており、記憶に残るような事項はあまりなかった,。ただ「戦後」に国際協調が広がり、国際連盟が創設される。後に日本は国際協調の象徴たる国際連盟を脱退し、戦争への道を突き進んでいくことに。 -
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戦前の日本は銀座あたりをモボ・モガが闊歩し、地下鉄やデパートや浅草の映画・見世物が大盛況で、「コドモノクニ」など児童向けも含めた出版も活況を呈し、豊かな時代だったことを紹介してくれる本かと期待して読み始めたんだけど、そういう面は前半1/3くらいだった。
選挙権や労働状況の改善を求める市民運動、「家の光」誌をとおした農村改善運動、新興宗教の隆盛など、さまざまな運動に関してだいぶ紙幅を割いていて、いまとなっては言論や運動が統制され不自由な時代と平板にとらえられてしまっている感がある戦前昭和が、実は人々が意識的に活発によりよい社会を目指して活動していた時代だったということを知った。それこそ現代をしの -
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「日清・日露戦争と第二次世界大戦との間の第一次世界大戦に具体的なイメージがともなわないのは、明治と戦前昭和に挟まれた大正の時代像があいまいなことに関連している。」
第二次世界大戦に向かう戦前の体制に関して、なぜそうなったのか関連書籍を何冊読み進めていってもよくわからない、よくわからないものをわからせてくれる本を探す旅はまだまだ続いている。
本書もその一環で手に取った。
冒頭に引用した一文、まさにボクの中でもその通りなのである。
第一次世界大戦は学校で習った知識の中では欧州の戦争に日本が東の方からどさくさ紛れにちょっかいを出したくらいにしか思っていない。
大正時代関しては期間が短かったという -
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<目次>
はじめに
第1章 外交
第2章 軍事
第3章 政治
第4章 経済
第5章 社会
第6章 文化
おわりに
<内容>
淡々と当時の文献からの抜粋が続く。「○○版日本の歴史」シリーズの”第一次世界大戦期”を読んでいる気分。ただ、選んだ文献の組み合わせなどから当時の様子がはっきりと浮かび上がる。この時代の第一人者ならではであろう。前著の『理想だらけの戦時下日本』を読んだ時も感じたが、この時期の大衆は、「戦争」などを感じることもなく(この本では第一次世界大戦)、日々を平和だと思って過ごしていたのだろう。そういう意味で、現在の日本のリーダーの旗振りが、日本をこの時代の後に訪れた悲劇 -
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第一次世界大戦に日本がどのような状況で参戦したのか、また終戦後の国際連盟と日本との関係を特に描いた本だった。特に国際連盟との関係で日本が積極的に人種問題を提起したり、また国際平和に対して理解を深めようとしていたことは特筆すべき点である。ただし、朝鮮人労働者と底辺の日本人労働者との軋轢、平和展での混乱を見ると分かるように国家としての目的・理想と民衆の現実が乖離していく状況がどんどんと日本に暗い影を作っていく。個人的にはもう少し陸軍の動きであったり、5・15事件やら2・26事件の背景を描いて欲しかった部分はあったが、それについては川田稔先生の近著で探ることにしたい。
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2009年の民主党政権の発足も衝撃だったが、昨2012年の自民党政権の復活にもまた驚いた。
民主党の拙劣な政権運営や相次ぐ内部の軋轢はひどいものだったが、その後一年近くを経過すると、あの政権崩壊は民主党の愚かさだけではなく、もっと深い原因と理由があったのかもしれないとぼんやりと思いつつ本書を手にとってみた。
本書は、戦前の「政友会と民政党」という二大政党が明治憲法体制のもとでどのような歴史経過をたどったのか詳細に追いかけている。
当時は「明治憲法体制」下にあったし、「宮中」や「陸海軍」などの有力な政治勢力が存在していたり、現在とはまったく違った世界だと思っていたが、本書の内容を読むと、