井上寿一のレビュー一覧

  • 第一次世界大戦と日本

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    日本における第一次世界大戦の影響を整理する一冊。

    日本は欧州でほとんど戦火を交えていないが、本書を読むと様々な点で影響が大きかったことが分かる。

    特に、外交官たちが国際連盟たちが平和外交のため国際連盟を舞台に奔走・貢献し、やがて国際的に評価を得ていった点は知らなかったことなので驚き、誇り高いことだと思った。一方で、後々日本が満州事変を起こし国際連盟脱退に行きつく未来を思うと暗澹たる思いも抱いた。ただし本書あとがきでは、国際連盟脱退後も外交努力や国際協調の一時的復元があったことにも触れられているが。

    戦争として勉強していると、どうしても戦場のことが中心になってしまうが、民本主義の台頭や新外

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    2025年12月14日
  • 新書 昭和史  短い戦争と長い平和

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    昭和元年〜令和7年までの100年間の歴史が、ノンフィクションの群像劇として、一冊の新書にまとめられている。「日本国民必読の書」と言っても、言い過ぎではないだろう。面白かった。

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    2025年07月27日
  • 新書 昭和史  短い戦争と長い平和

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    「昭和史」というような題名の本は、何やら難しそうと手に取らないという人も少なくないかもしれない。が、本書はそういうように敬遠する必然性は全く無い。普通の小説やエッセイのような感覚でドンドン読み進められる。そうした意味で素晴らしい一冊だ。
    2025年が「昭和100年」で「戦後80年」ということを踏まえて、「この100年?」というようなことを想い、考える材料を提供しようというのが本書だ。
    「昭和」と一口に言っても、「昭和XX年」と明確に言い得る期間だけでも1920年代から1980年代までの60年間余りに及び、色々な要素が在る。加えて、「昭和XX年」の出来事や、「昭和」の或る時期の動きが極々最近迄の

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    2025年05月16日
  • 戦争調査会 幻の政府文書を読み解く

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    太平洋戦争についての考察。
    やはり経済問題だろうね。

    ◾️戦争の理由
    第一 日本銀行支給券による公債乱発
    第二 軍部の責任
    第三 人口過剰と資源不足を補う目的
    第四 資本主義の本来の性格
    第五 経済新体制運動

    ◾️統帥権の独立
    →明治憲法「運用」の不手際
    →問題発覚は昭和の初期であるため論拠とする

    ◾️渡辺い蔵の反論
    1930年代のブロック経済そのものが疑わしい
    日本は異質を拡大していた。世界各国への輸出額が堅調であった。よって、孤立化を余儀なくされたわけではない。

    ◾️領土拡大も不要であった
    ・満州への移民が少ないこと
    ・内国の開拓が未完であること

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    2025年01月12日
  • テーマ別だから日本の今がしっかり見える 日本近・現代史

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    薄ぼんやりとしか記憶にない近代史を思い出そうと読み始めたが、なかなか楽しかったわ。
    『なぜ●●は■■だったのか?』みたいな興味を引く見出しで、飽きずに読み進められた。歴史の流れも非常に分かりやすかった

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    2024年08月05日
  • はじめての昭和史

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    歴史関係の本というと時系列で事件を記載したものが多いが、この本はテーマごとに昭和の流れを記載していただけでなく、現代とのつながりを解説していたことが非常に意義深いものだと思った。
    昭和には「大日本帝国憲法」と「日本国憲法」二つの憲法が存在したところなど、この本によってあらためて認識させられた。
    歴史としてだけでなく、社会状況や政治の変化、メディアの潮流など、様々な視点で昭和史が分析されているため、非常に面白い本だと思う。

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    2020年11月20日
  • 機密費外交 なぜ日中戦争は避けられなかったのか

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     機密費の内訳で最も多かったのが、対陸軍接待費という所にやるせなさを感じる。もっと他に使い道があるだろうと思いつつも、当時の陸軍の大きさというものを感じて慄然となる。
     それと同時に現地居留民に引きずられる外務省と軍部の姿も見えてくる。現地における既得権益を守ろうとして、泥沼にはまっていく姿を。
     

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    2019年01月28日
  • 日中戦争 前線と銃後

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    1930年代を戦争による好景気の時代、庶民が生活の向上を希望できた時代、多くの国民が積極的に戦争を支持した時代として描写する。そのうえで、前線と銃後の社会的ギャップがあったことを指摘する。
    本書の斬新な点は、帰還して銃後の社会に幻滅した兵士の視点に感情移入できるように構成されていることである。確かに帰還兵の心境が代表的な戦争支持の基盤であったことだろう。しかし反対に、銃後社会に感情移入したとき前線や帰還兵に対する印象はどうだったんだろうと思ったり。

    都市と農村で銃後の緊張感が違うと感じる理由は何だろうと思うとき、顕然化された貧富の差のというよりも消費社会の発展度合いが大きいのだろうなと思う。

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    2018年11月29日
  • 戦争調査会 幻の政府文書を読み解く

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    戦争調査会という存在を全く知らなかった 幣原・吉田両氏の努力の賜 さすが外交官
    失敗の本質は幾つかあるが
    改選のタイミング
    満州事変
    日華事変
    近衛首相 蒋介石国民党を相手にせず
    三国同盟
    南仏印侵攻

    そして終戦のタイミング 最期の一年の犠牲の多さ
    決断できず サイパン島玉砕 大空襲
    ソ連へ和平仲介期待

    日本は戦略決断ができない
    戦争のような大きな事案も、ミクロを積み重ねて合成の誤謬

    GHQに本調査会を止められた後、誰もフォローしていなかったのは?

    著者は一橋大学細谷ゼミ 親近感を感じる
    もう少しスッキリを期待

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    2018年11月11日
  • 戦争調査会 幻の政府文書を読み解く

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    淡々と読み解かれてゆく。
    それは過不足なく、とても頭に入ってゆきやすい。

    敗戦後、日本政府が独自にあの戦争のことを調査しようとしていた、
    そのことにまず驚かざるをえない。

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    2018年08月14日
  • 戦前日本の「グローバリズム」―一九三〇年代の教訓―

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    1930年代のグローバリズムに日本がどう対応したのかについて,独自の視点を提供している。

    各国がブロック経済で反自由貿易的な政策を採る中,日本は2国間交渉で地道に自由貿易の道を探る。日印会商や日蘭会商もそうした文脈で再解釈されている。国際連盟の問題も同様。

    戦前期の日本がギリギリのところまで自由主義貿易を追求していったことはもっと強調されるべきだろう。

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    2018年04月12日
  • 戦争調査会 幻の政府文書を読み解く

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    戦後すぐの時点で日本がなぜ無謀な戦争に突入してしまったのか,その原因究明のために組織された「戦争調査会」。本書第一部はその戦争調査会成立の経緯と解散させられるまでを描く。第二部は実際に戦争調査会が収集した資料(2015年にゆまに書房から全15巻で復刻刊行されている)をもとに日本がどこで道を誤ったと考えられていたのかを分析していく。まさに著者によるこの未完の国家プロジェクトの再構成となっている。

    非常に興味深い論点が多々提示されており,勉強になった。

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    2018年02月13日
  • 戦争調査会 幻の政府文書を読み解く

    購入済み

    感想

    戦争、戦争直後を知る事ができ、興味ある内容であった。

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    2018年02月09日
  • 教養としての「昭和史」集中講義 教科書では語られていない現代への教訓

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     軍国主義、国体、大東亜共栄圏などキーワードは覚えていましたが、第二次世界大戦に参戦した理由はボンヤリしていました。本書では志那事変を中心に太平洋戦争に突入していく様子、また、度々戦争回避する機会があり、参戦が必然ではなかった様子が説明されています。戦前の日本が二大政党制の弊害により意思統一しきれなかったことも説明されていて、現在の日本を考えるうえで大変参考になる書籍だと思いました。

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    2018年01月08日
  • 第一次世界大戦と日本

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    書名通りの本。
    第一次世界大戦と日本の「外交」「軍事」「経済」「社会」「文化」の関係について述べられる。
    戦争がもたらした好景気と「船成金」、そして、その反動となる恐慌。経済格差。
    翌年の起こる「真珠湾攻撃」までの記述。しかし、消費文化に勤しむ上流階級の姿が描かれていて空寒い。

    第一次世界大戦が「日本」へ及ぼした影響などを知るための良書だと思う。

    高校の日本史で習ったことより、更に深く内容を知ることができ有益だった。

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    2015年08月25日
  • 戦前昭和の社会 1926-1945

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    ネタバレ

    今、社会にこの10~30年にはなかった焦りの伴う「熱狂」のようなものがある気がしていた。
    いろいろなマスコミ、論調の中で、例えば「戦後最大の転換期」や「右翼、国粋主義の高まり」、「(膨張する中国やその他韓国、ASEANなどの成長中の国々と比べ)相対的プレゼンスが低くなってゆく日本とその焦り」など、今の時代を形容しようとするコメントやフレーズはいろいろあったと思う。ただメディア規制法や集団的自衛権の解釈改憲・安保法案などの、昨今の政治的改革を見ていると、メディアを含め多数の国民の側に急に変わることの戸惑いと焦りがあるようにも感じていた。日本全体的には、2012年の衆院選だけでなく2013年の参院

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    2015年12月28日
  • 戦前昭和の社会 1926-1945

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    本書は主に戦前昭和の社会史を扱っている。特に、3つの視点「アメリカ化」・「格差社会」・「大衆民主主義」から戦前昭和から戦後への連関に新たな評価を与えた。

    というのも、本書で紹介された戦前昭和の3つの視点は現在の我々にも通じる問題でもある。これら現代的な問題は戦後昭和からの一連の流れの延長線上の問題と解釈できる。

    では戦後昭和(例えば親米保守など)はどこに起源があるかというと、井上氏は戦前昭和に求めているのだ。
    つまり、戦前昭和と戦後昭和の連続面を本書で示した。従来は断絶面のみが注目されてきた訳だが、戦前との連続面を改めて見直すことで、現代的な課題を克服する鍵があるのではないか。

    以上が研

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    2015年06月25日
  • 政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか

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    政治史というよりは政党政治史と言った方が近い。「憲政の常道」における二大政党制と、5.15後における両党の模索を描く。
    戦前の政党政治下でも多くの政策が実行された。日華関税協定による日華関係改善、ロンドン海軍軍縮条約の調印など。しかし、国内世論あるいは党利党略により憲政の常道=ワシントン体制から「逸脱」したのもまた政党であった。
    膠着局面で天皇の威光に頼り、時には陸軍の主張に同調した。満州事変、5.15、2.26、国家総動員法、大政翼賛会への統合と、自滅していく。
    普選後は政党が政治のアクターとして登場するため、政策決定における非合理的な部分—統帥権干犯問題や天皇期機関説/国体明徴声明事件—が

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    2015年06月04日
  • 第一次世界大戦と日本

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    本書は、第一次世界大戦前後から1930年代までの日本を、外交・軍事・政治・経済・社会・文化の6つの視角から描写。当時の日本の再現を試みている。

    最初はちょっと文章のリズムに馴染めない部分もあったが、まずは国際協調の時代としての第一次大戦後の世界が外交という大枠から描写され、次に軍事、政治とそれが規定する国内状況へと筆が進められていくうちに、100年前の日本の姿が見事に浮かび上がってくる。

    経済の状況も「成金」という普通、あまり経済史家が正面から取り上げない事象や人物に多くページが割かれ、ユニークな叙述となっている(経済の章は成金論と高橋是清の話でほぼすべて)。「社会」「文化」の項目において

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    2014年08月05日
  • 政友会と民政党 戦前の二大政党制に何を学ぶか

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    戦前の二大政党、政友会と民政党を主軸に描く昭和史。
    解釈に疑問を持つ点が無いわけでも無かったが、
    個人的にはこれまで他書で触れたことのない観点で
    昭和史を振り返ることができ、非常に有用であった。
    内容も読みやすく、かつ納得がゆき、示唆に富んでいる。

    帝国憲法の限界をもどかしく思う一方で、
    大衆迎合主義に走り、党利党略にまみれ、方向を見失う政党と、
    本質を見失い、過激なメディアに踊らされ、
    熱しやすく移り気な民衆の構図は今も昔も変わらないと感じた。
    題名は硬いが、オススメしたい一冊。

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    2014年01月26日