井上寿一のレビュー一覧
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ネタバレ漠然と知っていると思っていた近現代のイメージがかなり修正される良書。祖母や父親から聞いていた時代を生きていた人の実感を思い出した。
今の日本と戦前の日本が似ているとはよく言われるが、「アメリカ化」「格差社会の進行」「大衆民主主義=カリスマ待望」の3つの切り口から、豊富な資料を基に鮮やかに描き出している。まさに目から鱗であった。
「1941年の太平洋戦争の直前まで、世論はむしろ親アメリカであり、アメリカへのあこがれが文化のかなりの部分を占めていた。例えばドイツにならってジャズを規制しようとした当局も結局は新しい音楽は国民にとって有益で有り、規制をするにはあたらないと結論づけていた」
「農村の疲弊 -
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[ 内容 ]
「自立」か「協調」か、「自由」か「統制」か-歴代首相の立ち位置は吉田との政治的距離で決まっている。
今の日本政治は昭和の歴史から何を学ぶべきか。
[ 目次 ]
序章 昭和のなかの吉田茂
第1章 大陸の嵐のなかで
第2章 政党政治と外交-外交優位の体制を求めて
第3章 危機の時代の外交官=吉田茂
第4章 復活を期して
第5章 戦前を生きる戦後の吉田茂
第6章 占領下の「自由」
第7章 敗戦国の「自立」
終章 「吉田ドクトリン」のゆくえ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセー -
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大本営発表 に代表される戦争の嘘が満載。
事例の多くはすでに見聞きしたことがあるものだが、
しかし、どうしてこう体制側というのは、
自分に都合の良いように嘘の情報を流して国民を煽動しようとするのか。
中には「朝鮮人が○○した」という自然発生的なデマもあるが、
これとて、もしかすると体制側が国民の不安、不満の矛先を自分たちから
逸らすためのものだったやもしれぬ。
これらの嘘が、国を守るための方便であれば救いがあるが、
中にはただの保身、個人の保身か、組織の保身のためかは別にして、
とにかく国や国民のことなど考えていないものが多い気がしてならない。
特に戦争、となると、それを言い訳にして何でもで -
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アジア主義を問い直す
本書を手に取る方にまずお伝えしたいのは、太平洋戦争中に喧伝された大東亜共栄圏という思想と、アジア主義は似て非なるものである。たしかに、アジア主義は大東亜共栄圏という思想を胚胎している。しかしながら、そこには本来、戦前の思想として一括りにして戦後社会の中で切り捨ててはならない重要なエッセンスが隠されている。
本書は、アジア主義と言うものについて明治から現代まで、歴史の流れとともに解説するものである。特に興味深かったのは、昭和研究会によるアジア主義の思想的定義である。三木清は、アジア主義をリベラリズムとファシズムの止揚であり、欧米の帝国主義に対するアンチテーゼとして、東洋諸 -
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年代を単純に追うのではなく、テーマ別に時代とともにどう変化していったかを追いかけている。
平成より倍長く、戦争もあって濃い昭和を200ページ程度でコンパクトにまとめている。改めて感じたのは、第二次対戦前の日本は暗いことばかりのイメージがどうしてもあるが、好景気に沸いた頃や、政府のプロバガンダにもなびかなかった大衆の強さがあった、という一面だ。
政治に対してだけでなく、メディアに対する大衆の関わりなど、「その時、大衆はどう反応していたか」という視点が印象に残った。今更ながら意外に思えたこともあったりと、現在につながる日本人の意識の普遍性のようなものが見えて興味深く読めた。 -
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<目次>
はじめに
第1章 天皇~なぜ立憲君主が「聖断」を下したのか?
第2章 女性~戦争に反対したのか賛成したのか?
第3章 メディア~新聞・ラジオに戦争責任はなかったのか?
第4章 経済~先進国か後進国か?
第5章 格差~誰が「贅沢は敵だ」を支持したのか?
第6章 政党~なぜ政党内閣は短命に終わったのか?
第7章 官僚~なぜ官僚が権力の中枢を占めるようになったのか?
第8章 外交~なぜ協調外交が戦争を招いたのか?
第9章 日米開戦~なぜ回避できなかったのか?
第10章 アジア~侵略か解放か?
おわりに
<内容>
昭和史(戦前)を10の切り口から解き解いていくもの。新書 -
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機密費というキャッチーなテーマにとらわれてか、資料も少ない中、接待費やコックの費用など冗長な内容が続く。5章、いきなり良くなる。機密費とはちょっと外れた感はあるが、「日中戦争はなぜ避けられなかったか」を書きたかったから5章で飛ばしてくれる。1935年、幣制改革で中国を立て直そうとしたリース・ロスの来日、日中大使館の設立、休戦協定。しかし親日派唐有任は暗殺され、彼は日本の行動により、親日派が中国政界で立場がなくなったことをなげいていた…。
日中戦争はなぜ避けられなかったかをメインテーマに機密費はサブテーマにすればもっとわかりやすい本になったのでは?1944年に破棄したと思った領収書があったとわか -
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ネタバレ戦後直後の日本、敗北の原因を探ろうとした人々とその挫折を丁寧に追っていった本。
戦争開始に至る原因を探る当時の人々の考察を追う。
結論としては大日本帝国憲法の運用に齟齬が生じたのが原因だと結論づけている。
そこだけは気に入らない。
大日本帝国憲法の手本となったプロイセン憲法と帷幄上奏権の関係を無視している。プロイセンにおいては帷幄上奏権は軍事関係について皇帝に上奏することができると限定されていた。しかしながら大日本帝国憲法は帷幄上奏権は軍が政治全般に介入する余地を作った、いわば劣化コピーであることは言及されていない。
第二次世界大戦に日本が突入し、敗北する原因はやはり明治維新まで遡るべきだと -
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戦前、「憲政の常道」と呼ばれた、政友会と民政党の二大政党が交互に政権を担う時代があった。本書は、その時代を中心に、政友会、民政党それぞれの成立・展開・崩壊の軌跡を丹念にたどっている。
両党ともに外交政策は協調外交路線で共通度は高いのに、民政党は不戦条約に難癖をつけ、政友会はロンドン海軍軍縮条約を「統帥権干犯」と非難するなど、お互いに党利党略による足の引っ張り合いを行うようになり、それが軍国主義的な時代の伏線となってしまうといった点は、現代の二大政党政治においても、大いに教訓となるものであり、本書は現代政治を考えるうえでも有益であると思われる。