経営学が役に立たない理由
経営学は厳密である、知的に新しい、が必要だが、実務に役に立つ、とはトリレンマの関係にある。
経営学者は、実務に役に立つ必要があるとは考えていない。
役に立つためには、新しい視点よりも、現実のエビデンスが必要。
顔を付き合あせて生まれるトランザクティブメモリーが必要。
競争の
...続きを読む形が違えば、求められる戦略は違うのが当然。
価格勝負ほど、ビジネスモデルが重要。
リアルオプション理論=不確実性が高い事業環境では、投資の柔軟性を高めれば、リスクを抑えつつ、チャンスを逃さないことができる=投資の柔軟性を高める。
知の範囲を広げることと、知の探索=深めることの両方が必要。企業は深めることに傾きやすい。
両方できることが大事=両利きの経営
看板方式はスーパーの引き取りを取り入れた。ヤマトの宅配は、吉野家の単品経営からヒントを得た。大規模小売店と地元商店の共存共栄からセブンイレブンを日本風にアレンジした。=知の探索。
組織の知は、コンポーネントな知(部品ごとの知識)とアーキデクチュラルな知(組み合わせデザイン)に区別できる。
初期はアーキテクチュラルな知によって製品を作り出す。標準化してドミナントデザインが出来上がると、コンポーネントな知で改良するが、新しい組み合わせは出現しにくい。新しいアーキテクチュラルな知を創造し続けることが大事。
イノベーションと創造性(クリエイティブ)の違い=創造性は既存の知を新しく組み合わせて新しいアイデアを生み出す力。イノベーションはアイデアを実現する力。創造的な人ほどイノベーションを起こせない。
弱いつながりのほうが、拡散しやすい=新しい組み合わせが起こりやすい=創造性が発揮されやすい=クリエイティブ=チャラ男
イノベーションは、製品化と実行=強いつながりが必要=根回しオヤジ
知の探索のためには、組織全体の学習は遅く、学習速度が混在していて、メンバーが一定の比率で入れ替わること。特に不確実性が高いとき。
トランザクティブメモリー=who knows shat を高めるとフォーマンスが高まる。コミュニケーションを高めるが、メール電話より、直接顔を見ることが大事。インフォーマルな会話の重要性。平場のオフィス設計(アスクルの例)フェイストゥーフェイスの仕掛けを作る。総合商社には、高い水準のトランザクティブメモリーがある。
ブレストではアイデアは出ない。気兼ね、他人の評価を気にすること、などから思い切ったイデアが出ない。集団で話すときは思考は止まり勝ち。
反面、ブレストは組織全体の記憶力を高める=シェアードメンタルモデル。ブレストでアイデアが出なくても悲観しない。そもそも組織の記憶力や価値基準を共有するところに意味がある。
失敗体験と成功体験はどちらが大事か。
成功体験はその後の成功率を上げる。しかし大事なのは失敗体験。失敗を十分に重ねてから成功する組織がその後も活躍する。アリババおジャックマーは、受験から起業まで失敗の連続だった。若いうちは失敗経験を積め。
グローバル企業とは。
北米、アジア太平洋、欧州の3か所を主要市場とすると、すべての市場で20%以上の売上があるのは少ない。日本で3社。ホーム地域への異存が高い。他地域では商売はしているが通用しない。ソニー、キャノン、マツダ、トヨタは欧州では少ない。
FSA(ファインスペシフィックアドバンテージ)ではなく、PSA(レジオナルスペシフィックアドバンテージ)を持っている。そのまま世界で通用するFSAにはならない。
世界はグローバル化していない。情報化で国同士の距離の影響はむしろ増えている。世界は狭くなっていない。距離の弾性値が高い傾向は、アニメゲームポルノなど嗜好性の高いデジタルコンテンツ取引で顕著。世界はフラット化ではなく、スパイキー化しつつある。VCは、特定の地域に集中するスパイキー化が進む。スパイキーグローバリゼーションを前提にすると、国単位ではなく各都市が連携することが有用。
ダイバーシティ経営は必要か
タスク型の人材多様性とデモグラフィー型の人材多様性。タスク型はプラスの効果があるが、デモグラフィー型は同質なグループで対抗するのでマイナス効果がある。デモグラフィーが多次元になれば、組織内の軋轢は減るので、パフォーマンスは高まる可能性がある。中途半端なダイバーシティがよくない。
ホモフィリー=人は同じような属性を持った人とつながりやすい。健康な人は健康な人と。つながった相手から影響を受けやすい。
社内では、女性は男性人脈に入りにくい。また女性人脈は薄い。男性人脈と女性人脈をうまく使いこなせる人が女性として成功しやすい。
リーダーシップ=トランザクティブリーダーシップ(アメとムチ)=実務家、トランスフォーメーショナルリーダーシップ(啓蒙)=カリスマ。不確実性が高いときほど、カリスマが必要。
女性のほうがトランスフォーメーショナル型になりやすい=リーダー像と女性像という矛盾したイメージを克服するために、カリスマスタイルになる。
リーダーの話法=イメージ型の言葉とコンセプト型の言葉。イメージ型のほうがカリスマ性を発揮しやすい。情景を語る。比喩(メタファー)を使う。
トランスフォーメーショナル型のリーダーのほうが、内発的動機付けを高めやすい。新幹線清掃のテッセイの例。
同族企業は日本だけに多いわけではない。アメリカもSP500の1/3が同族企業、全体では雇用の6割は同族によるもの。日本では上場企業の3割。
同族企業のほうが業績が良い。物言う株主としての同族。企業と一族を一体とみなす。社内外の優秀な経営者を放棄している。身内の経営に甘くなりがち。
婿養子による経営が最強。日本の養子の98%は大人の養子。日本の上場企業の3割が同族企業。婿養子の企業のほうがROEが高い。
アシックスの尾山氏(娘婿)、松井証券の松井道夫氏、スズキ自動車の鈴木修氏など。
同族だが、外部経営者という例。LIXIL、カルビー、サントリーなど
CSRは業績を高めるか。
周囲からの評価が高まる。人材強化、イメージ効果。広告費を使うBTOC企業のほうが効果が高い。
情報開示効果により資金制約が緩和される。ネガティブ事件による株価の落ち込みが少ない。
CSRは、情報開示することが前提。=自らを律する機会になることも一因。
起業活性化のための方策
事業のたたみやすさ(リアルオプション理論)=倒産法(チャプターイレブン)。日本も法整備では悪くない。
キャリアのたたみやすさ=倒産したあとに、職に就けるか。日本では難しい。
ハイブリッド起業家=勤めながら起業する。スウェーデンでは半数近くがハイブリッド型。起業を辞める人もいる。
副業は、安月給を埋めるものではない。労働契約における誠実義務で副業も認められていない。
企業家精神=アントレプレナーオリエンテーション=革新性、積極性、リスク志向性
4条件=サーチ行動(現状を疑い、疑問をもつ)、知の探索、知の深化(深堀り)、トランザクティブメモリー(who knows what)
儲かる条件は、産業か企業そのものか=産業効果は4割、企業効果が6割。業績がよい企業は企業効果が見られる。業績が悪い企業は産業効果に左右される。
リソースベーストビュー=何が価値があるリソースか。市場によって変わるべき。しかし経営学では一側面に着目して議論することが多い
MBAでは、ケース分析が大事。部分だけの分析では実際の企業を評価できない。
知の競争をする経営学者は、ドラッガーを読むヒマはない。
経営学者とMBAの教育者と一般図書を書く人との違い。