・経営理論の目的は、経営・ビジネスのHow, When, Whyに応えること。特に重要なのはWhyであり、経済学、心理学、社会学の何れかの人間・組織の思考・行動の根本原理から、「なぜそうなるのか」を説明するのが理論の目的だ
・SCP理論:ある産業が完全競争から離れるほど(=独占に近づくほど)企業の収
...続きを読む益率は高まる
・ライバルからの模倣を困難にするには、複雑で一貫性のあるアクティビティ・システム(Mechanism、Fly Wheel)を描くべき
・ネットワーク効果の帰結は「独占に近づくほうが望ましい」というSCPと整合する。ただし、ポーター=ケイブスの主張との違いは、ティッピングポイントを超えた後は、差別化戦略ではなく、このネットワーク効果で独占に向かうことだ
・差別化戦略は、競争環境を完全競争から遠ざけることで、独占できるグループで勝負することを目的としている
・完全競争の3条件
1.市場に無数の小さな企業がいて、どの企業も市場価格に影響を与えられない
2.その市場似た企業が新しく参入する際の障壁がない、その市場から撤退する障壁もない
3.企業の提供する製品・サービスが、同業他社と同質である。すなわち、差別化がなされていない
・「価値があるリソース」というのはアウトプット市場に大きく左右される
・アドバースセレクション(情報の非対称性から起きる売り手と買い手の問題)→スクリーニング:私的情報を持っていないプレイヤーのとりうる手段で保険やクーポンで利用されている。保険であれば、1)保険料は安いが事故になったときの補償額も安い保険、2) 保険料が高いが保証額も高い額の2つを用意することで顧客をスクリーニングできる。クーポン券であっても、「ハンバーガーへの価格意識」は個人によって違うが、価格に敏感な層は価格を意識してクーポンを使うし、そうでない人はクーポンを使わないことで、顧客に応じた値引きを提供できる仕組みのこと
・私的情報を持っているプレイヤーは「自分の情報が本当だと相手に信じてもらえない」ことが問題であり、学歴であったり、会計の開示などにより、私的情報を裏付けするシグナリングが対処法
・インセンティブによる解消法とは、それまでプリンシパルと目的の不一致があったエージェントに、プリンシパルと同じ目的を達成する(やる気を起こさせる)組織デザイン・ルールを与えることだ。
・同族企業は主要株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)が一枚岩で、両社がビジョンを共有しているので「目的の不一致」がなく、大胆な手が打ちやすい
・価格競争を避けるためには差別化が重要。初期投資が必要なビジネスでは多くの投資が行われるが、それにより供給過多になることで価格競争に移らざるを得なくなる。
・ゲーム理論では、先に宣言することで「同時ゲーム」を「逐次ゲーム」に変え、自社に有利な状況を生み出すことができる
・数量を軸にした戦略は「強気な戦略」のほうが、相手が供給過剰を恐れるため優位に立ちやすい。価格を軸にすると、強気な値下げは両者の値下げを生み利益を下げるため、「弱気な戦略(価格を下げすぎない宣言)」のほうが、相手も価格を下げないことで有効になりやすい。
・両者は価格競争を無限に続けるだろうか、両社が合理的であるほど「無限に価格競争を続けて利益を落とし続けるのは不毛だし、相手もそう思っているはずだ」と考えるはずだ。その結果、両社は合理的な判断の帰結としてむしろ価格を下げなくなるのである
・リアルオプション:不確実性を生かす。当初計画より小さい初期費用で工場を作ってとりあえず事業を始める。数年後に不確実性が下がったタイミングで投資の判断を行う
・リアルオプションの学習効果:不確実性の高い状況で将来オプションを意図的に作り出し、逆に不確実性を生かす。事業を始めなければ学習ができないので不確実性が下がらない
・意思決定者は限られた認知の中で選択をして行動に移す。行動することで認知が広がり、新しい選択肢が見えることで、より満足な選択ができるようになる
・うまくいっている時こそ、さらに目線を高くせよ
・経営者の過去の成功体験が、時代が変わって新しい仕事を始めるときに大きな妨げになる
・両利きの経営:人・組織には認知に限界があるので、知の探索(Exploration)をして認知の範囲に出て、知土地を新しく組み合わせる必要がある(シュンペーターの新結合)。一方、そこで生まれた値は徹底的に深掘りされて収益化につなげる必要もある(知の深化:Exploitation)。この探索と深化が高いレベルでバランスよくできることを両利きの経営という
・イントラパーソナルダイバーシティ:個人内多様性は知の探索になる
・イノベーションとは認知の範囲にあるお客様の問題を解決すること=幅広い認知視野をはぐくむことが重要
・TMS(Transactional Memory System:組織のメンバーがWho know whatをしっていること) TMSを最も高められたのはやはり「直接対話によるコミュニケーション頻度が高いチーム」だった。逆にTMSが一番低かったのは、「メール・電話によるコミュニケーション頻度が高いチーム」だったのだ
・人は暗黙知のほうが豊かであり、それを取りこまない知識創造はあり得ない
・SECI Model
1)共同化(Socialization) : 暗黙知→暗黙知 個人が他社との直接対面による共感や、環境との相互作用を通じて暗黙知を獲得する
2)表出化(Externalization):暗黙知→形式知 個人間の暗黙知を対話・施策・メタファーなどを通して、概念や図像、仮説などを作り、集団の形式知に変換する
3)連結化(Combination):形式知→形式知 集団レベルの形式知を組み合わせて、物語や理論に体系化する
4)内面化(Internalization):形式知→暗黙知 組織レベルの形式知を実践し、成果として新たな価値を生み出すとともに、新たな暗黙知として個人・集団・組織レベルのノウハウとして「体得」する
・ナラティブは「まだ具現化していないが、これから起こる」ことの構造である。例えば「会社の方向性」といった形式知の塊は、過去から引き継がれ、未来に続いて「これから起こる」ものだから物語でなければならない。現場の知ならマニュアル化も機能するが、会社の心情、方向性、戦略のような「認知的な暗黙知」を形式知化させる場合はナラティブが必要である。
・進化のためのルーティン:「マニュアルを常に見直す」ことを前提にした暗黙の行動パターンがルーティン化されるとともに、形式知としてのマニュアルが蓄積され、常に現場が進化・成長を続けるのである
・ハイパーコンペティションの時代には、そもそも「持続的な競争優位」という前提が成立しない。むしろ企業に求められるのは「業績が落ちかけてもすぐに新しい対応策を打って業績を回復できる力」すなわち「変化する力」である。変化を繰り返すことで、「一時的な競争優位を連鎖して獲得する」ことが、これからの企業に求められるのだ
・ダイナミックケイパビリティはカニバリを推奨する→大手航空会社がLCCを行う事例
・全員をひいきできるリーダーが最強
1)部下の悩みや課題を聞き出す、アクティブリスニング
2)アクティブリスニングを通じて部下が出してきた課題に対して、自分の考えを押し付けない
3)部下への期待を部下自身とシェアする
・Transformational Leadershipでは、リーダーは「自分の率いる組織が、部下(フォロワー)の目指していることといかに親和性があるか」を啓蒙する。するとフォロワーは、自身の組織への帰属意識を高め、そのリーダーのビジョンを自身の中に取り込むようになり、リーダーのビジョンに沿って行動するようになる。一方でリーダーも、そういったフォロワーを承認し、称賛する。これにより、フォロワーは自身がその組織で「働く意義」「存在価値」をさらに認めるようになり、さらに積極的に組織での義務を果たすようになる
・利用可能性バイアス:簡単に想起しやすい情報を優先的に引き出し、それを頼ってしまうバイアス
・検索容易性:とりあえずいつものものを買っておけばまちがいがない
・具体性:身近な人から聞いた情報を「あの人が言うなら間違いない」と評価してしまうこと
・対応バイアス:他者が何か事件に巻き込まれたときに、その本当の理由は周辺環境などにあるのに、理由を当事者の人柄・資質などに帰属させてしまうバイアス
・代表性バイアス:典型例と類似している事項の確率を過大評価しやすいバイアス(よくしゃべる=関西人)
・不確実性の高い事業環境では、優れた企業ほどルールをシンプルにすることで、変化に対応できる。ルールをシンプルにすることで、企業の認知におけるヴァライアンスを減らし、結果として変化の激しい世界での予測の精度を高め、だから優れた意志決定ができて変化に対応できると解釈できる
・ポジティブな感情は「自分はこのままでいいのだ」という現状維持を促す可能性がある。結果として、サーチが滞る。したがって、満足度が高すぎて組織が緩んでいるときは、むしろネガティブ感情を取り込んで危機感を高め、サーチを促すことも必要だ
・ディープアクティング:人が何かの外部刺激に直面した時に、「まず自分の意識・注意・支店の方向を変化させることで、感情そのものを自分が表現したい方向に変化させてから、それに合わせて自然に表現する」ことをさす。たとえば、CAが理不尽な理由で怒っている顧客に対し、その顧客の態度の捉え方を変え、「初めて飛行機に乗る顧客」という認識を起点とすることで、「とまどい」「嫌悪」から「同情」へと感情を変化さえて対応することができた
・認知を動かし、感情を動かす:あの客が怒っているのには、実は妥当な理由があるのではないか
・センスメイキング(腹落ち・納得)理論:正確さよりも納得性を重視する。全員が方向性に納得していることが正確に何かを行うよりも実現度が高まる。人とその対象(事業機会)は決して切り離せず、その人が行動して環境に働きかける(イナクトメント)することにより、やがて事業機会が浮かび上がり、結果としてあとからその事象をセンスメイク(納得)する
・まずは行動なのである。行動をして試行錯誤を重ね、もがいていくうちに、やがて納得できるストーリーが出てくる。そしてそのストーリーに腹落ちしながら、さらに前進するのだ
・主観的だからこそストーリーがあり、だからこそ多くの人をセンスメイクして、かれらの足並みをそろえ、巻き込めるのである
・センスメイキングの7大要素
1)アイデンティティ:センスメイキングは常に「自身が何であるか」のアイデンティティに基づく
2)回想・振り返り:人は物事を経験するその瞬間にはそれをメイクセンスできず、事後的に振り返ることで飲みセンスメイクできる
3)行為:人は行動することで環境に働きかけることができる
4)社会性:主体(自身)と周囲の人々を含む「客体」は常に切り離せないので、センスメイキングは常に他社との関連性の中で起きる
5)継続性:センスメイキングは繰り返される循環プロセスである
6)環境情報の部分的感知:人は認識のフィルターを通してしか事象が認識できないので、認識・解釈されたものは常に全体の一部でしかない
7)説得性・納得性:人は「正確性」ではなく、「説得性」をもって、自身や他者をセンスメイクできる
・弱いつながりのソーシャルネットワークのほうが、自分の目の前ではなく、自分から離れた、遠くの知を幅広く探索し、それを今自分が持つ知と新しく組み合わせることになり、幅広い知と知を組み合わせることができる
・イノベーションを生み出すには弱いつながりが必要だが、イノベーションを製品化・実行するには強いつながりが必要
・シェアがシェアの連鎖を呼ぶのは、弱いつながり(強いつながり内だとシェアした情報が同じようなものである可能性が高く、シェアされにくい)
・ストラクチャルホール:高密度なネットワーク間のハブになっている人は、各クラスターから情報があつまり、それをコントロールできる
・越境を実現する人はクラスターとクラスターの結節点となり、ブローカーとなり、SH(Structural Hole)を活用し、SHを埋めて、新しい価値を生む
・資源依存理論:企業は軽減(競合をM&Aすることで規模を大きくし取引先からの圧力を軽減する)、取り込み(影響力のある人物を経営陣に取り込む)、吸収(被買収企業が所有する鉱山も含めて買うことで鉄鉱石まで調達する)の何れかの戦術を選び、あるいは組み合わせることで、外部抑圧を軽減することが可能
・M&Aが発生しやすいのはMutual Dependence(双方向の依存度の合計)が高く、Power Imbalance(両者の依存度の差)が小さい環境。依存度の合計が大きくても、どちらかの依存度が相対的に低ければM&Aは起きにくい(他の取引先との機会ロスなども生まれる)
・スタートアップへのCVCに関しても、大企業側が技術を取り込むことでスタートアップへの依存度が低くなり、スタートアップが苦戦するという構図が生まれている。
・業界内でゼネラリスト企業間の競合度が高まるほど、その業界にいるスペシャリスト企業の死亡率が低下する(業界が活性化する、その中でのスペシャリストの付加価値が相対的に受け入れられる面積が増える、基礎技術のコストが下がるなどの効果がありそう)
・メガトレンドに基づき、様々な業界の生態系変化を見越す習慣をコンサルに丸投げした単発作業として行わない
・新レッドクイーン理論:真の競争相手は、ライバル企業ではなく、自分のビジョン。環境が大きく変化するほど(チェンバレン型ではなくシュンペーター型の環境に移るほど)、企業の目的は「競争」になってはならないのだ。
・これからの戦略に不可欠なのは「魅力的な未来を描き出し、イノベーションを引き起こし、投資家・従業員・顧客に対して大きな未来を提示し心理的な期待感を高められる企業」になる
・AIが得意なのは「学習」「知識」「推論」「予測」だが、AIにできないことは「問題認識」「メタ認知」「定型的でない意思決定」「感情表現」などだ。そうであれば、人間にはこれからますます「問いを立てる」能力が求められることになる。
・企業の存在目的は、株主にもうけさせることだけにあるのではない。世界の在り方をよりよくしなければならないし、それによって一般人の価値も上げなければならないのだ
・アントレプレナー:不確実性に直面した時に意思決定をする人
・創造型は様々な試行錯誤・行動を繰り返し、事業機会が事後的に、徐々に浮かび上がってくる
・革新的な起業家の思考パターン
1)Questioning:現状に常に疑問を投げかける
2)Observing:興味を持ったことを徹底的にしつこく観察する
3)Experimenting:それらの疑問・観察から、仮説を立てて実験する
4)Idea Networking:他者の知恵を活用する
・株式会社の仕組みにより「企業は(目的を達成しても)死んではいけない」という前提になっている
・ビジネスで議論をし、相手と根本的に話がかみ合わない場合、「そもそも人とはどう考えるのか」の前提が異なっているから、ということが多い
・戦略:企業を取り巻く環境(Environment)を前提に、業績(Performance)を向上させるための、経営資源(Resource)を使った、企業の行動・アクション(Action, Initiative)のこと