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Posted by ブクログ
からめ手はない
財政・金融政策は難しい言葉が多く、とっつきにくいが、本書は最近話題のテーマをよく整理していて、丹念に読んでいくと相当勉強になる。電子書籍なら検索機能が便利だろうから、辞書代わりに手元に置きたいと思った本だ。本書が論を進めて向かうのは「高圧経済」をもたらす財政・金融政策の在り方だ。供給能力を上回る需要の圧力によって労働力の移動や投資を促し経済成長につなげる。そういう経済循環を目指す上で、政府・日銀は具体的にどこに資金を流し込んでやればいいのか。論を辿る私の関心は、もっぱらそこに向かった。歴史の教訓として、政府が産業を選ぶと失敗することだけは確かで、難しい問題だ。本書は「政府が使途を指示せず、民間の自己判断による支出を促す方法として代表的なものが減税と給付金支給だ」と指摘した。貯蓄にまわらず消費につながりやすい減税・給付として、若年層・低所得者向けの給付、未就業時の国民健康保険料の減免拡大を挙げる。ただ、これに関しては、需要を力強く担う主体として、若年層・低所得者はちょっと弱すぎるような気がした。もうちょっと元気のある人たちに引っ張ってもらわないと、日本経済はすぐに腰折れしてしまうような気がしないでもない、と。 続けて「社会的価値の探究、安全保障、国土保全などの事業には、一時的に多額の資金・資源を必要とするものが少なくない」とも記すのだが、それ以上詳しく書いていなかった。無理もない。日本経済のけん引役として、この辺りで何か出てくることを期待したいが、まだ見えないのが多くの人の正直なところだろう。本書は高圧経済に向かうカギとして、やっぱりと言うか、社会保障分野に目を向けた。直接的な人的サービスを多く利用する公的医療・介護サービスの縮小、機械化・合理化による労働量の減少、医療・介護事業が生み出す付加価値の向上が必要だ、と。日本経済の癌である社会保障分野の手術は、どうしたって避けられない、という結論になる。経済の長期停滞、巨額の政府債務といった難問に対し、私は最新の財政・金融論ならからめ手を提示するのかもしれないとどこか期待していたが、それは逃げようとしていたというだけで、核心をまっすぐ突くべきなのだと改めて思った。
Posted by ブクログ
経済学における革命ともいえるケインズ大先生の「一般理論」要約版です。
ただ、要約版で読みやすいとはいえ、内容はちょっと難しい。
訳者の山形浩生さん(私はこの方の文体が好きです)も言うように、消費、需要、雇用、投資とかの相互関係が分かりにくく、内容がいささかとっちらかってるのも大きな要因かと。
しかしながら、現在の経済と経済学を支える重要な考え方がたくさん示されており、世界を変えた一冊という評価も大いに頷けるものです。
一般理論を理解するためのエッセンスとして、訳者あとがきにあるポール・クルーグマン先生の結論要約をちょっと引用してみます。
・経済は、全体としての需要不足に苦しむことがあり得るし、また実際に苦しんでいる。それは非自発的な失業につながる。
・経済が需要不足を自動的になおす傾向なんてものがあるのかどうかも怪しい。あるにしてもそれは実にのろくて痛みを伴う形でしか機能しない。
・これに対して、需要を増やすための政府の政策は、失業をすばやく減らせる。
・ときにはお金の供給(マネーサプライ)を増やすだけでは民間部門に支出を増やすよう納得してもらえない。だから政府支出がその穴を埋めるために登場しなきゃいけない。
つまり、モノを作っても必ず需要されるとは限らない、という考えを打ち立て、古典派経済学者が信奉する「セイの法則」(供給が需要を作る)を否定し、「有効需要」(お金の支出の裏付けがある需要)という新たな理論を提唱して、これがケインジアンの理論の根幹となっていくわけです。
ケインズ大先生は、古典派経済学の理論は特殊な場合にだけ当てはまるものであり、一般の場合には当てはまらないので、もっと一般的な理論を展開するよ、と言って本書を「一般理論」と名付けました。
過去には「ケインズは死んだ」なんて言われることもありましたが、どっこい、その理論が今でも不死鳥の如く生き続けているということは、その狙いは正鵠を射たということなんだと思います。