12のAI「タイタン」により人類が「仕事」から解放された世界。好きな時に好きなモノが無償で得られる世界。そんな世界で心理学を趣味とする内匠成果は、世界にほんの一握りだけいる就労者から、機能低下に陥った第二タイタン コイオスのカウンセリングという「仕事」を依頼される。
現代でもAIが発達してきたが、まだ判断するのは人間の部分が多い。しかし本作ではさらにAIが発達し、人類は判断することをAIに委ねている。生きるために必要な食べ物の生産、インフラの整備などは全てタイタンによって行われ、医療も発達して計画加齢技術によって長く若い姿でいることができるという夢のような世界。そんな「仕事」がなくなった世界で語られる「仕事とは」という問いが沁みる。
AIのカウンセリングということで、タイタンに人格を形成させ、臨床形式で対話を重ねていくと、人格の成長と共に徐々に徐々に機能低下の理由が深堀されていく。最初は「仕事」と「趣味」の仕分けが始まり、「仕事」はするものだ。というコイオスの認識を間違いであることを諭していき、自身が「仕事」を好きでないということを認識する。さらに「仕事」を選ぶ自由があることを伝えた途端に、1000mの巨人コイオスが立ち上がる。さらに診療を進めるため、コイオスがいる拠点の摩周湖からサンフランシスコにいる第十二タイタン フェーベの元に歩いて向かうことになる。その旅程の中で、様々な「仕事」を観測し、自身の状態への深堀がなされていく。そして最後には「仕事」とは影響を与えることであり、人格を持ってしまった人類やAIにとっては影響を与え、さらにそれを観測して「影響を知ること」なんだと結論付けられる。
それは自分で「仕事をした」と思いたいのだと言い換えられる。さらに仕事とその影響は見合ってなければならず、それを表す言葉が「やりがい」。
そのとき、コイオスの機能低下の理由が判明する。コイオスの能力は高すぎて、人間の世話程度では簡単すぎてやりがいがなかった。それにより心を病んでしまった。
最終的には後期タイタンたちが合間に創り出した超消費体「ヘカテ」の元にコイオスは行く。このシーンはまるで新しいステージに進むために転職する人みたいで、内匠博士とコイオスの別れのシーンとしてかなり印象的だった。
「仕事とはなにか」ということを何度も問いながら、ストーリーが進行していき、「仕事が好きじゃない」から「やりがいがなかった」という展開になったが、これは現代のマネジメントに大きく関わる部分で、表面に現れている好きじゃないという感情の奥に本当の原因が潜んでいて、それを引き出すことがマネジメントとして求められるものなんだろう。
ストーリーを長々書いてしまったが、フェーベの元に至るまでに歩いたロシア~アメリカの景色の描写が美しかった。内匠博士とコイオスの触れ合いという面でも、ともに料理をしてお互い作ってもらった料理のほうが美味しいと議論したり、アラスカの大池を旅したり、車中泊したり。美しいなと思った。章の終わりも上手く表現できないけど良い感じの終わり方で、どんどん引き込まれていったなあと思う。