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Posted by ブクログ
深夜アニメ「ファンタジスタドール」の前日譚だ。
が、イブを読むのにアニメの方を見る必要はおそらくない。俺も見ていない。読後にアニメの方の概要を見て、あまりの雰囲気の違いに二度見するくらい関係ない。
すべての話が最後の一点に向けて加速するためにあるような物語をブラックスワン型と自分の中で呼んでいるのだけど、イブもこのブラックスワン型だ。
ファンタジスタドールイブはある少年が学者を志し、大学生活を経て研究者となり、歴史を変えるような偉大な発明をするお話だ。今思い返してみれば、これは何を創りだしたのかが最後に分かる偉人伝のような話で、まさしくその一点に向かうために主人公の人間関係や苦悩が書かれている。
複雑な家庭に育ち、ある失敗から修行者のように学問に没頭した彼は大学で自分の人間性に疑問を持つようになる。仲良くしている同期や、自分を慕う後輩にすら膜のような隔たりを感じ、自分が人間のふりをした別の何かのように思う。その一方で同期と一緒に飲む楽しさや、負けず嫌いな後輩と科学について話す時間の得難さが本物であるとも感じる。世界を変えうる研究をしながら、自分は人間か、いや人間になれるかと彼は悩む。
彼の人生の節目には必ずそれに大きく関わる女がいて、その時々の女性との関係が主人公である彼に大きな影響を及ぼす。大体身をよじるような結末を迎えるのだけど、そのどれもが主人公を科学者として加速させ、常人には決して辿りつけない「本当の目的」に向かわせる。その「本当の目的」こそが主人公の根本的な問題点であり、主人公が歴史に名を残す理由なのだ。
すげえ、純文学みたい。
すべての加速が終わって病院のベッドでうなずくシーンがとてもすごくいいのだけど、タグをつけるとしたら謎の感動だと思う。その直後の「帰りたまえ」も心情は今までの流れで十分分かるし初見では違和感なかったけど一旦素に戻るとおもしろおじさんペアすぎる…
全世界から有能なバカが集まっちゃった話ではあるんだけど、実際にがんばれば手に届く位置にそれがあったなら。全世界からジークジオンとつぶやく声が聴こえることでしょう。倫理観とか捨て置け。
Posted by ブクログ
野崎まど「ファンタジスタドール・イヴ」は傑作。野崎まど劇場を読んでいただけに、女体に対する主人公の想いや純文学風の文体は最初、悪ふざけにも見えたがガチな作品だった。…文体については多少の悪ふざけ要素はあるだろうけれどw ただ、作品のテーマに相応しい語り口調であるのは確か。
文学的・哲学的なSF作品というと「テクノロジーと倫理」という問題はよく出てくるが、この作品ではSFを背景にしながらも、人間自身を描いているのが面白い。人に言えない異常性に苦しみ、だからこその罪悪感や孤立感に苦しむという、誰しもが持つような苦しみが描かれる。
笠野と遠智の二人の友人の対比もよかった。大兄は自らの異常性に苦しむ遠智に共感するが、笠野らを愛すべき友人とも思えるんである。そして、中砥の最後の一言がなんともいいじゃないですか!どうしても自分の異常性ばかりに目が行ってしまうが、実は程度の差なのかもしれない。
とにもかくにも素晴らしい中編小説でした。や、女性の造形が持つ魅力というのは、男にとってはこれくらい強烈なものなのですよw しかし、主人公の名前といい、組織名での笑いといい、著者がどこまで本気で悪ふざけなのか分からん!という部分はあるw いずれにせよ、今年一番のインパクトかも。
…ちなみに、アニメのファンタジスタドールは1話をほんのちょっとみただけですはいw アニメを知らない方でも、思いっきり楽しめる小説です。
Posted by ブクログ
野崎まどの名に惹かれて購入。アニメは未視聴。
女性の身体、特に乳房に複雑なる感情を抱く青年が、人間であることから離れ、初めてのドール・イヴを作るまでの話、だと思う。だと思う、と書いたのは、後半は推測でしかないから。人間らしい生き方を教えてくれた親友と好意を抱いた女性から離れ、高次元の思考を持つがまともな人間とは軸がずれている青年と女性生成を目指す。まるで太宰治の人間失格を読んだかのように、自らの異常性の吐露と人間になろうとしてならなかったことなどが書かれる。アニメも見たくなったが、この小説にあるような重厚で秘めたような、ともすれば暗い告白をするような雰囲気はないのだろう。明るい女の子達のキャッキャうふふを見せられた日には堪らない。
とても良い作品でした。本に厚みはないが中身が薄いとは全く思わなかった。
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小説・文芸
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