加藤陽子の作品一覧
「加藤陽子」の「シリーズ日本近現代史」「歴史の本棚」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
『満州事変から日中戦争へ』加藤陽子さんの本を読みました。
日本の第二次世界大戦は日中戦争から始まっていると聞いたのでぴったりの本を見つけたので一気に読みました。
著者の別の本は昔読んで知っておりました。非常に綿密に資料を付けて説明されています。
知的な文体も魅力があります。
日本の防衛の話しが話題になりますが、日本のお隣の国へはどうだったのか読むと非常に大きな気付きがあります。
日中戦争は泥沼化して行ったので今のイランやウクライナの戦争についてもいつまでも終わらないのを少し分かったように思います。
日本は日清、日露戦争で利権を得て、列強の植民地侵略の中、飢饉の農村の大土地の渇望、経済不況に加えて、日英同盟からアメリカ外交と移行と列強の中で立ち回っているのが分かります。
日中戦争は開戦も無くズルズルと沼に入り込んで行くのですが、満州の北への拡大目指して行きました。
満州は日清戦争の権益の満鉄は合法だったようですが、他路線を中国が建設したことに付け込んで複数の密約を組み合わせて国際世界で正当化しようとします。
モンロー主義のアメリカが方針変更して中国に入って来ない内に何とかしたかった、陸軍はソ連の脅威を極度に感じていたようです。
陸軍が暴走したと言われていますが、経済合理性はあったようで国民は余裕が無い飢饉で生きて行くのが精一杯の時代です、もちろん反対者も多くいたのですが出兵しています。
中国の南と北を押さえるのはいかにも難しい。
政府予算も付けずにはまり込んだようです。
現在はアメリカが何故イランを攻めたのかが話題になりますが、日本もあまり変わらない。
出兵規模93万人、日本の対外投資の68%が満州に向けられ投資額の93%が国家関連、私企業は7%未満。国家予算以上のお金が戦争に消えて行ったようです。
当時簡単には止められない。天皇も陸軍の特性を分かっていたのに止めなかったのは制度不良でしょうか。2.26事件とか犬養が暗殺されたりで誰もが命がけの時代、今トランプさんが狙われているのも同じ環境ですね。
テレビの容易なシンプル過ぎるなんちゃって解説を聞いて分かったように思わずに、複雑怪奇なリアルの世界を紐解く必要があります。歯ごたえのある本を頭の冴えた午前中に読むのが良さそうです。
新しい発見は面白いです。
Posted by ブクログ
私が興味を持つ近現代史の中で、特に詳しく知りたいと考えている時期が、満州事変から日中戦争に向かっていく時です。
著者は、東京大学教授の加藤陽子さん。
日本学術会員の中で、菅内閣が承認を拒んだ6人の中のお一人です。そういった点からも事実を正確に偏向せず伝えてくれる著者だと思っています。
内容は、まさに新書という感じで、私が知らない事がほとんどでした。例えば「新四カ国借款団」。日本を含め欧米各国が中国における権益の確保に奔走している経済面での動きを初めて知りました。
日中戦争へ至るまでに、非常にたくさんのプロセスが複雑に繋がっていると認識を持ちました。
よく「戦前軍国主義」という言葉で非難されることが見受けられます。インパクトのある言葉だし、近隣国からも発せられることもある。類似性の一つとして防衛費の増額が上げられます。しかし、そこで思考を止めてしまうと、もっと他にも悲劇的な結末を回避しうる要素があるような気がします。今回の書籍の中で、明確に「ここが分岐点だった」と確信を持つことはできませんでしたが、それを考え続けるためにも、客観的な歴史の検証結果を提供してくれてい書籍を読み込んでいきたいと感じました。
私は、通常3,4冊の本を並行して読んでます。トイレ、寝床、机、外出時など本を別々に読んでいます。弊害もありますが、読んでいく本の領域に偏りが起ないようにするといったまじめな理由もありますが、正直、一つの本を長く読んでいるとちょっと気分を変えたくなり別の本を読んでしまうというところです。
ですが、この本については、時間をしっかり確保して通読したいと考えています。
2026年、21冊目です。
Posted by ブクログ
戦後70年ほど経ち憲法改正の議論が出てきた、今まさに先の大戦で日本がどのような選択を取ってきたかを知るのに良い機会だ。前作も含めて、ベストセラーである「失敗の本質」よりも本質に迫れると個人的に思う。安倍談話では「世界恐慌によって欧米諸国が植民地経済を巻き込んだブロック化を進め、日本経済は打撃を受け孤立し、力の行使によって解決を試みた」との認識が語られ、多くの日本人が同様の史観を持っているが、データを見ると植民地の輸出入に圧倒的に偏りがあったのは日本側であり(世界恐慌後)、アジア太平洋での開かれた経済構想を問いかけたのは日米交渉におけるアメリカ側であった。日本は現在も変わっていないが、当時はとくに国としての方向性・軸がしっかり固まっていなかった印象を抱かせるエピソード満載だ。
古代の歴史にも憲法改正のターニングポイントを重ねる思考は興味深い。膨張政策を取る唐は新羅と組み、高句麗は百済と冊封体制にない倭国と組み、645年に唐は高句麗に大軍を派遣。国内で結束して対抗準備するために大化の改新が起こり、天武天皇の時代に日本書紀が完成する。白村江の戦いで大敗したのち、遣唐使・粟田真人は倭国ではなく日本という新しい国から来たと則天武后に説明。唐を参考にして大宝律令を制定した。昭和天皇も白村江の戦いと太平洋戦争を重ねていたという。
本書で扱う3つの選択は、「リットン調査」「三国同盟」「日米交渉」。リットン調査については新聞などでも公になっていたのに誰も読んで理解していない印象。満州事変が関東軍の自作自演で満洲国も傀儡政権であると日本側の主張を否定する内容で理解している人が多いが、実際は日本側へも配慮され日中間の交渉を促す内容だった。日貨排斥が中国国民党が主導となっている点は認められているが、これが国際連盟の精神に反するのは資本主義国の横暴にも感じさせる。 問題は日露戦争で多大なコストをかけたため相応の利益を満州で享受すべきという観念に囚われ(ロシア南下の脅威もさながら)、国家主義団体が暴力で言論の自由に脅威を与えていた事実が大きい。1940年には2000ほどの組織があり、63万人にものぼる構成員がいたという。2.26事件も5.15事件もそうだが、天皇自身が身の危険を感じていたのも頷ける、恐ろしい時代だ。そして日本国民の多くは真相を知らされていないとリットンが語るのが重い。しっかり情報開示して世論をうまく動かす政治力が欠けてしまった点も致命的だ。日本だけで満州権益を守るのはコストも大変だろうから、世界全体で安全保障も含めて管理する方法で妥結しましょうというのがリットンの提案であった。アダム・スミスが、独占的な植民地貿易は国民利益増大に反するといってアメリカ独立を承認すべきと考えたことに通ずるものがある。松岡洋右は妥協を再三迫ったが、国際連盟を介さず中国国民政府との直接交渉にしか目が行かなかった内田外相は全て却下し、「世界の道」を自ら閉ざした。イギリスだけでなく、5カ年計画が大失敗したソ連も満洲国承認を事実上していたのにこの結果とは、軍部のみが失敗の本質にあるわけでないことがよく分かる。中国側へ強気に出れば屈服するだろうと、ただそれだけの見通しで外交をやっていたのである。誰も連盟規約違反だ不戦条約違反だ、などと言っていなかったことが逆に現代の感覚とのズレを感じさせる。
三国同盟についてはドイツの快進撃に便乗したというより、戦後の太平洋植民地への権益確保狙いが大きい。ドイツは最後の地域となるイギリスの士気をくじくため日本と同盟しソ連を攻撃、さらにアメリカ参戦の抑止を目論む。英米を敵に回しかねない同盟に海軍などは当然反対する。ここでも軍部ではなく政治家(近衛首相や松岡外相)が、連盟脱退後も経済的に孤立しなかった(武器を輸入できた)だの、ドイツがオランダを占領しているので石油を融通してもらえるだのと言って短期間で同盟を妥結してしまう。軍用資源が秘密で実際に数字が分からなかったというだけの話では済まされない。松岡外相も、毅然たる態度のみが戦争を避けるという、恐ろしく単純化された理屈をもとに失敗は続いて行く。しかし三国同盟で日本が牽制したかったのはアメリカではなく戦後にアジア回帰するドイツだったという。単純な目先の利益に対してだけは算段が抜け目ないので余計にたちが悪い。ちなみにこの時期の独ソ不可侵条約の密約でドイツはポーランドへ、ソ連はバルト三国に侵攻しているが、戦後なぜかソ連は罪を問われることは無かった。
日米交渉については、最後通牒の事務処理遅れのために真珠湾騙し討になったエピソードや、アメリカが事前に察知していたなど、様々な都市伝説があるが、どちらも否定されている。日本側にも国家主義者が反英米強硬だったのに対し、アメリカ側でも対日強硬派が多くおり、ローズベルト大統領やハルはそれらを抑えていた。全面禁輸は両者が休暇でいない間に強行して採決されたという。その頃にはドイツがソ連に侵攻し、これまた便乗するために北進を主張する松岡と参謀。これを抑えるために軍部が対英米戦を辞せず、と言った文言だけが先走ってしまう。結局、日米交渉も国家主義者による脅し=反国家的親英米、昭和維新勤王討幕は迫る、によって狂信的な方向性へと進んでいく。
Posted by ブクログ
2010年5月に購入してから何度かトライするも途中挫折して読み切れていなかった本。
教学研究会の4月講義の課題本になったので、本棚から引っ張り出してきた。
学校では歴史の授業はたいてい幕末ぐらいで時間切れ終了。
現代史を学ぶ機会がなく、“なぜ戦争になったのか”“避ける事は出来なかったのか”長い間疑問だった。
大人になってから本を読んだり、ネットの時代になってからは動画を観たりして、なんとなく“日本は戦争なんかしたくなかった。そういう状況に追い込まれ、巻き込まれたんだ。”“悪いのは軍部で普通の国民は戦争反対だった”“日本のお陰で、アジアは植民地から脱することができた。”“虐殺行為はしてない”等の意見を正しいと思い込んでた。
ところが、当時の日本人は戦争忌避していたというより、熱狂していた(驚)
ショッキングだったのは、一般国民だけがマスコミなどの扇動によりそうなっていたのではなく、竹内好氏のような文化人までもが感動していたこと。
(竹内好〜魯迅研究の第一人者)
読んでいて自分の中の“常識”がガラガラと崩れ落ち、ショック。
“日本人は戦争を忌避していなかった”
“軍部政府を支持していた”。
高市政権を圧勝させた今の日本と重なる気がして憂鬱。
2026.4.4追記
戦時中の日本は国民の食糧を最も軽視した国の一つだった。
昨今の米不足、食料品価格の高騰、トラクターデモが思い起こされ、日本は国民も兵士も大切にしない国なんだと感じた。
そういう視点からも、今だに日本は「戦争をする資格のない国」なんだと感じた。