■民間原理の導入は主に三つの側面で役所や公務員にインパクトを与えた
①仕事のやり方
・コスト重視
②役所の組織そのものの変化
・役所本体のスリム化
③公共の多様化
・公を担うのは役所だけに限らない
■公務員の仕事の哲学が曖昧な四つの理由
①あまりに多種多様
②「全体の奉仕者」という曖昧性
③国民側も公務員を見る目が一定していない
④ウチ向きの哲学がない
■「全体の奉仕」ばかり強調されて公務を通じて公務員自身が能力を伸ばせるかどうかを考えることがタブーとされてきた。働き甲斐を求める公務員が増えている今,この問題を深堀することがなければ,公務員のモチベーションは高まらない。
■ウチ向きの哲学とソト向けの哲学が二つそろって「仕事の哲学」になる。
・自己実現,成長,やりがいなど内部に向かうもの
・社会貢献や他人を助けるなど外部に向かうもの
■課長→局長→事務次官→大臣→総理とレベルが上がっていくと,許可を得ること自体が一大仕事になり果てる
■内務官僚だった大森鐘一が官僚になろうとした息子のために作成した心得(「長男仕官に就き与えたる訓戒の書」)
①高潔で,どんな種類の批判にもさらされるようなことがあってはならない
②私情を交えず,公平に任務を遂行する
③常識を養い,中道を重んじる
④他人の意見に耳を傾け,出しゃばり過ぎてはならない
⑤最新の注意を払い,額に汗して働くことを惜しんではならない
⑥言動を慎む
⑦約束を守る
⑧質素な暮らしをする
⑨質問することを恥ずかしいと思ってはならず,また,他人には進んで教える
⑩上司にへつらわず,同僚には忠実に接する
⑪趣味に溺れない
⑫滅私奉公を旨とする
⑬公務を口外しない
⑭公務に満足しなければならず,それ以外の事項を望まない
⑮神仏を敬い,孝の精神で年長者を敬う
⑯制度にせよ地域にせよ,自己の管轄の歴史を学ぶ
⑰平静にものごとに対処する
⑱公務について学び,高い学習水準を身に付ける
⑲党派的な争いを慎む
■国民の多くは公務員以上に苦しい状況で働いている。
■ウチ向きの哲学は公務員自身が自らの手で作り出さなければいけない。
■民間は積極的で公務員は消極的だと批判されるが,それは官民の構造的な違いも背後にある。
・役所は民間企業と比べてはるかに制約が多い
・企業のステークホルダーはそんなに多くないが役所のステークホルダーは無限
・全体のバランスを常に考える必要がある
・個々人に裁量権がない
・人事評価がネガティブチェック
⇒「できない」「難しい」という発想から入る。
■調整仕事を通じて人脈が形成されていくが,人脈こそ官僚の専門知識の神髄だとみなされる時期が来る。
・「企画立案能力」と「調整力」の二つが専門知識の中身
■労働条件よりも仕事の中身で悩むキャリア官僚
①仕事の中身(膨大な作業や非効率的な仕事のやり方)
②仕事量(膨大な残業時間)
③仕事の成果(専門知識が身につかない,キャリアにならない)
④行政システムの不合理性(各省折衝,予算要求,法制局審査など非効率的なシステム)
⑤政治との関係で抱える不合理
■「部分利益」に立ち向かう勇気
■地域活性化や改革には「ワカモノ,バカモノ,ソトモノ」が必要。