あらすじ
ケルーベでの騒動の後、ロレンスたちが向かったのは海を渡った島国ウィンフィール王国。目的地は、「狼の骨」を持つという聖ブロンデル修道院だ。 王国に着いたロレンスたちは、港町の商会で、羊毛取引で富裕なはずの修道院が経済的危機に陥っていると聞く。しかも、世界最強と名高い経済同盟ルウィック同盟が、修道院の広大な土地を狙って王国にやってきているという。ロレンスたちは修道院へ近づく足がかりを作るため、同盟の一員である商人ピアスキーに協力を依頼することになるのだが?
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まさかの商業ファンタジー、楽しみながら貨幣経済や商取引が学べてしまう恐るべき(?)ラノベ!
中世ヨーロッパ風の世界観というと様々な作品がありますが、本作はメインとなる要素がかなり異色。主人公は25歳の行商人ロレンス、武器とするのは商人としての知恵や経験、発想力や交渉術とバトル要素はまるで無し、剣も魔法も使いません。
商人なので勝負事は商売関連なのですが、これがまたどういう訳か物凄く熱い!
騙し騙され裏を読んで裏をかく……全霊を掛けた商売の駆け引きはバトルにも負けない緊張感があるんですねー。
ひょんなことから狼っ娘ホロと旅することになるロレンスですが、この狼っ娘が侮れない。
少女の姿ながら数百年を生きる賢狼で知恵も機転も凄まじく行く先々でロレンスはもちろん歴戦の商人達も唸らせます。しかし普段は飄々としつつ時折弱さや儚さを見せることもあり……二人の行く末にも注目です!
緻密なストーリー構成で推理モノや裁判モノに通じるハラハラ感とカタルシスがあり、それでいて文体はとても読みやすい本作。ラノベを敬遠する人にもぜひ読んでもらいたい一作です!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
シリーズでは太陽の金貨以外では一番好きな巻です。
ホロが今までになくむき出しの感情を見せてしまう場面、ハスキンズの覚悟やホロへの言葉一つ一つがとても心に残り、より深くこの世界のキャラクターが描かれていると思います。
ハスキンズの言葉にはいくつか感動させられましたねぇ。
ホロでも言い返せない人生の重みも辛さも背負った言葉は素晴らしい。
他にも久々にホロに名前で呼ばれるロレンスとか。(フルネームで呼ばれたのは全巻通してこの巻だけ?)
どうしてもホロ>ロレンスだった力関係だけど、ホロにはできないけどロレンスにはできる事で事件が解決されたり。
更にはその単純な力はこの時代では時代遅れなのだという描写がこの先メインテーマになって行ったりと。
この巻からロレンスとホロはお互い対等な関係になり、本当の意味で切り離すことができないパートナーになったのかなぁと思いました。
Posted by ブクログ
決定的な情報を得て海を渡り、歴史ある修道院の宝物庫にやっとの思いでたどり着いたものの、結局「狼の骨」は偽物だったことが分かります。
ただ、その過程で出会った「金色の羊」という伝説の張本人である羊の神とのやり取りで、ホロのような民間で信仰されてきた神々が資本主義経済の発展の中でその存在を希薄なものにしていく様子が改めて示され、少し切ない気持ちにもなります。
今巻では明かされませんでしたが、ラストシーンで金色の羊から伝えられた、ホロの故郷・ヨイツにまつわる不穏な噂の中身が非常に気になるところです。
Posted by ブクログ
狼の骨を購入したという修道院まで探しに来て、税が払えなくて王国に買い叩かれるという危機のゴタゴタに巻き込まれる話。
いろいろ手札が揃っているからというのはあるけど、ほんとロレンスはギリギリな状況で魔法のように盤面をひっくり返してくる。
人ならざるものが人に紛れるための苦労が今まで以上によく分かる話。
ハスキンズが肉を食べたと語る場面は鳥肌が立った。
あのホロが若者扱いされるとは。
骨についてはスッキリしたところで、旅の再開を。
Posted by ブクログ
海を渡った先の雪の王国ウィンフィールでの物語。
ケルーベ編に比べれば手に汗握るような場面もなく、終止穏やかな展開。
「故郷」というものにひとつの答えを提示している。それは、「新しく故郷をつくる」ということ。
「故郷」がなくなったとしても、新しく「故郷」を作ればいい。
この物語のひとつ終わり方。その伏線なのかとも思ったりした。
今回の登場人物では、羊飼いハスキンズがお気に入り。
仲間を救うために奮闘していたこと、「肉を食べた」ということ。必死さを感じた。
しかし、、、最近、ロレンスは商売を忘れていないかな?笑
組合に入っているから金銭面の融通は利くのかな?
Posted by ブクログ
今回出てくるピアスキーとハスキンズというキャラもまた非常に魅力的。
それぞれが『故郷を守る』という言葉は響いた。
故郷に愛着を抱き、なんとしても守りたいと考えるのは、人として当然の概念だと思う。
それを真っ直ぐに実行できなかったり
実行しようとするものがおかしな目で見られたりするのは
やはりどう考えてもおかしなことだと思う。
納得のいく形ではなかったかもしれないが
考えられ得る最善の形で故郷が守られてほっとした。
一点残念だったのが、ヨイツについての引っ張り方がチープだったこと。
ああいうあからさまな書き方は、少なくとも個人的には好きではない。
いつも思うが、短いけれどあとがきが
非常に筆者の個性も出ており、身近に感じられ
簡潔にまとまっていて面白くていいなと思う。
Posted by ブクログ
ケルーベの港から船で移動するロレンス、ホロ、コルの2人と一匹。
海峡を越えた先、ウィンフィール王国で狼の脚の骨を探す。
その地は雪に閉ざされていた。
税金を上げたい王国と、強かに反抗する教会、そしてその間で暗躍する商人たち。
税金を払う余裕がない教会に、国からの税の徴収の知らせが届く。
何とかして良い条件を引き出そうとロレンスが動く。
的な流れでした。
あんまり話の進展なかったで、11巻に期待、と思ったら次は旅から離れた短編でした。