内藤正典のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
アメリカで2025年1月20日第二次トランプ政権が樹立した。トランプ大統領と言えば第一次政権の際、イスラエルの首都をエルサレムと認め、イスラム社会から激しい非難を浴びた、超イスラエル寄りを政策に掲げる人物である。トランプ氏自身は敬虔なキリスト教徒(自身はプロテスタント、福音派はトランプを熱狂的に支持)であるが、身内にユダヤ人が居ることはよく知られている。その様なトランプ氏が再び大統領に就任したのだから、過去にあったイスラムとの対立の懸念が再発するのは当たり前のことだ。また現在はイスラエルによるパレスチナ侵攻中の最中であり、トランプ氏の介入で一時的な停戦状態にはなったものの、諸外国から見たイスラ
-
-
Posted by ブクログ
10・7に始まるイスラエルのガザ侵攻を止めることができない欧米中心の国際秩序を「リベラルのダブルスタンダード」という観点から厳しく検証する。米国の若年世代の政治動向をウォッチしている三牧氏の議論は、バイデンの筋金入りの親イスラエルぶりを指摘する一方で、米国内部が決して一枚岩ではないことを示すものとなっている。
一方で内藤氏は、トルコから見たEU、米国、イスラエルという視座を提示するが、エルドアンの政権をどう評価できるのかがいまひとつわからない。エルドアンといえば強権的なメディア統制を行っているとされるが、そのようなイメージも歐米メディアによるバイアスということなのか? ウクライナ戦争が始ま -
Posted by ブクログ
イスラム教は旧約聖書を同じくする宗教の中で最も新しい宗教なので、それ以前の預言者であるモーゼもキリストも認めていますので、他の宗教に対して寛容な宗教なのですが、私たちはイスラム教は排他的な宗教であるかのように思っています。却ってユダヤ教はユダヤ民族の選民意識を、キリスト教は三位一体というキリストを預言者ではなく神と位置付けるという強引さが他の宗教に対して不寛容にしています。
私たちはイスラム教を全く理解していないのに、イスラム教よりはキリスト教の方が正しいという偏見を持っているので、イスラム教徒がなぜ増えているのかも、パレスチナ問題もわかりません。この本はイスラム教のことをとてもわかりやす -
Posted by ブクログ
ネタバレあなたはイスラームをちゃんとわかっていますか?
10年ほど前に出版された本だが自分の知らなかったことが多く勉強になった。イスラームの「法」とはどのようなものか、それぞれの国がどのような歴史を辿ってきたか、「アラブの春」の西洋的な視点のズレなど。特に勉強になったのは西洋の民主主義というのが宗教と政治を分離させる世俗主義であり、宗教的なものを政治や国家に持ち込むのを「遅れている」と見ていること。だから無理にも「進んだ価値観を教えてやろう」とイスラームの考えを無視し、自分たちの価値観で判断して動くから混乱を産んでいる。
アメリカやヨーロッパとイスラームはこの先どうしていけばいいのだろうか。そして -
Posted by ブクログ
オスマン帝国崩壊=トルコ共和国建国100年の節目に出された本書。トルコ近代史と内政/外交事情について知ることができたが、この分野初見の私には少々難解だったので、再読の必要性を感じる。
2023年の大統領選挙。ウクライナ戦争での対応(ロシアへの経済制裁を行わない、フィンランド・スウェーデンのNATO加盟に条件を付ける等)もあってか、エルドアン大統領は特に日本や欧米では「独裁者」「(やや差別的ニュアンスを含む)イスラム主義者」「差別主義者」のようなイメージで批判される報道が多かったように感じるが、本書での解説を読むに、かなりバランス重視のスタンスであると理解した。
世俗主義とイスラムの両立は絶 -
-
-
-
Posted by ブクログ
現代イスラム地域研究が専門の著者が、イスラム側から眺めた現代の相克。西欧の視点、キリスト教の側からイスラムを分析したものを読むことが多かったから、バランスをとる意味でも有益な本だった。特に地理的にも歴史的にも東西の文化が交わるトルコに関する記述は学びが多かった。
「多文化主義」という言葉も、この本を読みながら定義しなおすことができた。フランスの世俗主義、ライシテ、公的領域における非宗教性と、すべての宗教を平等に扱う制度の異同。非宗教性が国家原則になっているということは、多文化主義が根付く素地がない、という解釈。コミュニティごとに分かれて国家に参画するという考え方と、人種でも民族でもなく、個人と -
Posted by ブクログ
内藤正典『イスラームからヨーロッパを見る』<岩波新書>を読んでいたのだが、中東事情やイスラム教等々について、あまりに分からないために挫折した。そうしたわけで、新書の中で出てきたトルコを事例に、同じ著者の本書を読んだ。
現在、西欧世界では、「イスラム」という言葉を聞いただけで「嫌な感じ」を受ける人が増えており、日本でも同じように、イスラム教の信者というだけで怖いと感じる人も多い。筆者は、こうした態度に対して、「私たちは果たしてイスラムのことをどれだけ理解しているでしょうか?」と投げかけ、知らない文明や文化について、簡単に好き嫌いを口にしてしまうことの危うさを指摘する。そして、「日本のものさし