内藤正典のレビュー一覧
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とてもわかりやすい!
この本を読むと、いかに自分がイスラームについて無知か、そして巷にはびこるイスラームのイメージが、いかにアメリカや西欧諸国によって作られたものかがよくわかる。あまりに無知すぎたので、イスラームの歴史のところなどは、地図と照らし合わせながら読まないとわからないなと思いつつ読み飛ばしてしまったが、この本は発刊が少し古い(2012年)ため、同じ著者の新しく出た本も読んで復習したいと思う。
ものすごく大まかに言うと、西欧諸国にとっての近代化の絶対条件が世俗主義(政教分離)だが、これをイスラーム諸国に押し付けるのは間違いだという内容である。
「アラブの春」(これも西欧諸国の都合 -
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「イスラム」とか「タリバン」とか「シーア派」とか、よく聞くけれども分かっていない、もしかすると偏見だけで固められているかもしれないことを、分かりやすく、歴史と宗教を見ながら、今の情勢について解説する本。「パレスチナ問題」とか「クルド問題」とか、中東の時事問題の定番になっている事柄に触れられている。
読んでいてやっぱり途中でゴチャゴチャしてきて、結局飲み込むところまで行かなかったが、たぶんちゃんと読めば分かりやすい本なのだと思う。ノートとかにまとめながら読み進めたい衝動に駆られた(結局、なかなか出来ないけれど…)。
断片的だが、以下は気になったところのメモ。「信徒でない私からすると、ムスリ -
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とても勉強になった。
2020年に書かれたものなので「今」のヨーロッパとイスラームの現状がわかる。
シリア内戦によって多くの難民がトルコに行き、さらに西ヨーロッパに移動することになった。
ヨーロッパとイスラームの共生は、なぜうまくいかないのか?まずはヨーロッパはキリスト教なので、うまくいくわけがないと思った。過去には共生しようと努力した国もあったそうですが、9.11のテロでムスリムに対する感情が180度変わってしまった。「良いムスリムと悪いムスリムがいる」そんなことはみんな知っている。ムスリムが全員テロリストなわけではない。でも怖いよそりゃ。
日本人でよかった。 -
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EUの、国連の、領域国民国家という概念の「限界」を、現実の中東・欧州の情勢から指摘する。非常に示唆に富んでいる。以下、メモ。
・EUの限界
リベラルの正体が、難民問題で露呈。難民ではなく不法移民だとEUは言うが、なぜ難民が発生するか、シリアで自国民を虐殺している政権があるせいなのは知っているはず。これまでヨーロッパ諸国が普遍的な価値として共有してきたはずの自由、平等、人権は、人類すべてに適用されるものではなかったということが露呈した。しかも難民排斥をしている側は自分を「リベラル」と呼ぶのだ。
移民に対して「同化を求めない(多文化主義)」国(オランダ、イギリスなど)は、じつは他文化に対する「 -
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ヨーロッパにおけるムスリム移民やトルコ等を研究対象にしている
著者による、第1次世界大戦以降から現在までのムスリムと欧米
による中東政策を解説した作品である。
「はじめに」で「日本は決してこの戦争に参加してはならない」とされ
ているのだが、残念ながら著者の思いは実らなかった。日本政府は
言い逃れをしているけれど、ISが拘束している邦人2人の殺害に
至ったのは、やはり安倍信三の演説が引き金だもの。
状況を公平に見ようと思っても、どうしてもバイアスがかかるんだよな。
特に日本の報道は欧米メディアの視点でしか中東関係を報道しない。
以前は衛星放送でアルジャジーラの放送が見られた -
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ネタバレ一般向けに書かれたイスラム文化書では、内藤先生の解説がとてもわかりやすいと思う。
一番わかりやすい本は『となりのイスラム』だが、本書も難しい内容ではない。
なるほどとうなった部分を挙げる。
<人頭税について>
テロ組織が異教徒を人質にして身代金を要求することは、人頭税の一種ということ。
欧米はテロ資金の源になると批判するが、イスラムにはイスラムの考え方があり、相手の文化を知らなければ、相互理解(=平和)には結びつかない。
地獄の沙汰も金次第という言葉が頭をよぎった。
<人材不足>
中東のエキスパートが不足しているということ。
そもそも中東に興味を持つ人が今後増えるのかどうか怪しい。
ニュー -
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中東崩壊の危機のなかで唯一、民主化と経済発展に成功した国。しかもそれを「再イスラム化」によって実現した国として、トルコの重要性を説く。
トルコ人の大部分はスンニー派のムスリムである。しかし、トルコ共和国建国の父であるムスタファ・ケマルの意志・遺志により、トルコはイスラムを徹底して公の場面から切り離そうとしてきた。本書は第一章・第二章で、トルコの建国から近代化と脱イスラムの歴史を説き起こし、つづいて「再イスラム化」の過程を描いていく。ここらへんの流れはたいへんわかりやすい。
第三章はヒズメト運動、第四章はトルコと欧米諸国との関係、第五章はトルコと周辺(の中東)諸国との関係を解説。アメリカの -
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イスラム地域研究の専門家が、イスラム国の台頭に至る中東地域の混迷について、歴史、宗教、政治権力、世界のパワーバランス等様々な角度から分析、解説し、今後の日本の取るべきスタンスを提言している。
本書で著者は、
◆1979年のイラン・イスラム革命以降の米国の中東政策は失敗の連続であり、その原因は、イスラムに関する無知、先入観、偏見に根差した「イスラム・フォビア(イスラム嫌悪)」にある。
◆ムスリムには、同じ唯一絶対神から啓示を受けた「啓典の民」であるキリスト教徒やユダヤ教徒に対する憎しみはなく、彼らの敵意は、歴史的に自分たちを力で支配してきた英仏などの欧州列強諸国、シオニズムに基づく領域民族国家イ