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誤解や偏見とともに語られがちなイスラーム。その本当の姿をイスラーム世界の内側から解き明かす。イスラームの「いま」を知り、「これから」を考えるための一冊。誕生・発展の歴史から、各地で相次ぐ民主化運動の背景まで、知っておきたい基礎知識をしっかり解説。
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Posted by ブクログ
米欧を中心とした世俗主義の先進国がいくら武力に訴えても平和が訪れることは絶対にない。自国の利益ばかりを考えたやり方では、泥沼のような争いが延々と続くだけである。
頭の中で言語化できなかったもやもやが、学術的な理論からも導かれて説明されていてとてもすっきりした。著者の本はこれで3冊目だが、いつも大変いい内容を書かれていると思う。肝心の欧米人とアラブ人含むムスリムにも英訳などして是非読んでもらい、議論してもらってはどうか。
アフガニスタンをパシュトゥン・ワリなのでアメリカという侵入者を排除ということから捉えていることは、他の本ではあまりないように思われる。さらにヨーロッパでのイスラムへの反感についてよく書いてある。さらにトルコでの地震の日本人ボランティアの被災についてのトルコ政府の行為をイスラムということから説明してい...続きを読むるあとがきは傑出している。最初の部分は説明だけなのであまり面白くないが、後のほうにしたがって現在との関係が明らかになってくるので興味が湧くと思われる。
とてもわかりやすい! この本を読むと、いかに自分がイスラームについて無知か、そして巷にはびこるイスラームのイメージが、いかにアメリカや西欧諸国によって作られたものかがよくわかる。あまりに無知すぎたので、イスラームの歴史のところなどは、地図と照らし合わせながら読まないとわからないなと思いつつ読み飛ば...続きを読むしてしまったが、この本は発刊が少し古い(2012年)ため、同じ著者の新しく出た本も読んで復習したいと思う。 ものすごく大まかに言うと、西欧諸国にとっての近代化の絶対条件が世俗主義(政教分離)だが、これをイスラーム諸国に押し付けるのは間違いだという内容である。 「アラブの春」(これも西欧諸国の都合で命名されたネーミングの感あり)の後に各国がたどった経緯を見ていくと、民主化運動により独裁者に打ち勝ったあとに選挙で勝利したのは、いずれもイスラーム色の強い政党だった。欧米のメディアでは、民主化運動がイスラム原理主義に打ち勝ったと報道したが、むしろ逆で、西欧諸国に倣って世俗主義に走り、私腹を肥やした独裁者に対し、「正しくイスラームする」動きへと傾いたのだ。アラブの春より10年ほど早く、トルコが民主化のプロセスに入ったのも、イスラーム政党が躍進した成果だという。メディアが喧伝する、「イスラーム主義は民主化の敵」というメッセージが間違いだというのがよくわかる。 その他、イスタンブールのラビ(ユダヤ教の指導者)が、ムスリムと共存することは何の問題もないと語っており、イスラエルなどという国家を作ったのは時期尚早だと断言したというエピソードには驚いた。また、アルメニア問題(オスマントルコ領内のアルメニア人に対する虐殺があったかどうか)について、当のアルメニア正教の指導者は、そんな問題を今さら蒸し返すこと自体が迷惑だと言っているらしい。選挙で自国に住むユダヤ人やアルメニア人の票を得ようと、当事者すら問題としていないようなことを蒸し返したり口を出したり。アメリカや西欧諸国がやっていることは、イスラーム側からすればとても迷惑なんだろうなと感じた。 ロシアの問題についても思うことだが、私たちが触れる情報には、ほぼもれなく西側諸国のフィルターがかかっており、それを外してきちんと相手を見ない限り、まともな対話は難しいんだろうなと感じる。少しずつでも、知っていきたい。
「イスラム」とか「タリバン」とか「シーア派」とか、よく聞くけれども分かっていない、もしかすると偏見だけで固められているかもしれないことを、分かりやすく、歴史と宗教を見ながら、今の情勢について解説する本。「パレスチナ問題」とか「クルド問題」とか、中東の時事問題の定番になっている事柄に触れられている。...続きを読む 読んでいてやっぱり途中でゴチャゴチャしてきて、結局飲み込むところまで行かなかったが、たぶんちゃんと読めば分かりやすい本なのだと思う。ノートとかにまとめながら読み進めたい衝動に駆られた(結局、なかなか出来ないけれど…)。 断片的だが、以下は気になったところのメモ。「信徒でない私からすると、ムスリムは、少なくとも戦争に向いていません。イスラームという宗教には、商業的な性格が強くて、商売の公正について細かい規定をもっています。」(p.12)というのが、まずイスラム教のイメージらしい。どっちかと言えばユダヤ教の方が商人のイメージがあったので、これは意外だった。「日本ではあまり知られていませんが、地中海の東よりにあるキプロス島は、現在もなお、南北に分断されています。」(p.69)というのは、知らなかった。キプロス島って『オセロ』の舞台だよな、と思いながら、行ってみたいとかのんきに思っていたが、「一九六〇年代から七〇年代前半にかけて、南北間で激しい衝突が起きたため、ついに一九七四年にトルコ軍が介入して、強引に南北を分断しました」(同)というところらしい。平和な地中海の島、っていう勝手なイメージと全然違う場所だった。 こういった数々の偏見や勝手なイメージに、実はこういうことだ、という解説が色々ある部分が貴重だが、その1つにイランについて、「ひげ面にターバンのイスラーム指導者や黒衣の女性たちからイランのイメージをもつのは間違いのもとです。ターバンの下にも、黒いヴェールの下にも、『私たちはアーリア人の血筋』と言いたげな顔が隠されているからです。」(p.82)ということで、「イラン人には、自分たちを周囲のアラブ民族やトルコ民族よりも優秀な民族だと考える人が少なからず存在します。」(同)というのも、言われないと分からない。 そしてシリアもイランも、読み終わって数日経った今ではその2つの関係ももう分からなくなってしまったが、「シリア政府も、イランからやってきてイラン革命を称える人たちがやたらと宗教的情熱を燃やすのは困ったことでしたから、大きな団体が来ると、郊外の山の中の施設に閉じ込めてしまい、そこで『アッラーは偉大なり、ホメイニ万歳』とイラン・イスラーム革命のスローガンを好きなだけ叫ばせておいて、一般の市民には見せないようにしていました。」(p.107)というのは、何ともリアルな話だと思った。 あとは「民族主義」について。帝国主義に代わって、「民族主義」と「社会主義」が流行った、と書かれているが、「しかし、結局のところ、『民族主義』というのは残酷なもので、必ずその国のなかのマイノリティを差別し抑圧する結果をもたらします。社会主義にいたっては、盟主のソ連をみれば明らかなように、権力構造がちっとも民主的にはならず、党幹部が権力を独占して腐敗し自ら崩壊してしまいました。」(p.111)という、こういうことが分かって歴史を見れば、理解しやすくなるかもしれない。そしてそもそもこの民族主義によって国家を作ることと、イスラーム共同体とは全然違う、ということを理解しないといけない。「同じ言語を共有しているからといって、それを単位に国家をつくるという発想は、ずっと後の十九世紀ぐらいになってから確立されるもの」(p.127)という、これも意外なことだった。そして国家に納税、という発想も現在の西洋的な見方であって、喜捨はするけど「ムスリムは徴税されない」(p.132)ということらしい。(これが「中東民主化のうねり」(同)だそうだ。) そしてこういう現在の西洋的な見方、という枠組み(「世俗主義のものさし」(p.29))にあまりにとらわれ過ぎているということが問題なのだと分かる。(なんか平行線が交わってしまう「非ユークリッド幾何学」みたい?と思った。)「ムスリムのスカーフは、単純な話で、性的羞恥心の対象となる部位を覆っているだけのことです。」(p.158)ということも含めて。 他にも、「多くの村にはイスラーム法学に未熟な出来の悪いタリバンが赴いて、生半可な知識で、つまりしばしばイスラーム法から逸脱した刑罰などを実施してしまいます。」(pp.172-3)という問題とか、でそもそもそのタリバンというものも「ソ連軍が侵攻したとき、アメリカはこれに対抗させるために、神の戦士、あるいはジハードの戦士、すなわちムジャッヒディーンを養成して戦わせる戦略を立てました。」(p.169)という、これが「タリバンの原型」だそうだ。 という、上のメモも極めて断片になってしまったが、世界のことを知るのにイスラムのことを知らないとか分からないという訳にもいかないと思うので、もう少し上の話も自分の中で整理できるように勉強して、自分の無知を補っていきたいと思った。(21/02)
内藤さんの本も何冊目? ある程度重複してる箇所もありますが、復習にいいかなw ムスリムの考え方などを分かりやすく説いてくれて勉強になります。とりあえず、これは読んどいた方が良い本。
イスラムのことを全く知らないので、マスメディアなどに流れてくる報道を冷静に受け止めることもできない。 世界中には10億を超えるムスリムがいるので、少しでも知りたかった。この書はそんな初心者にも優しく説いてくれた。一冊で分かった気になってはいけないが、「難しくて挫折」、させない書です。
イスラム教から見た世界とイスラム教に縛られた人々の思考が初心者でも分かり易い本。 著者の本はどれも読み進めやすいのでお奨めです。 しかしながらクルアーンに則ったムスリムの行動を、信教の自由の名の下に一定以上認めるのか、その国の法規を厳密に適用するかで彼らが反社会的か否か、決まってきます。 イスラーム...続きを読む国家ではない法治国家へ自らの意思で移住してきたムスリムの方々の中には、信教の自由による行為が常にその自由が保障されるというものではないことを理解せず世界各地で軋轢を起こす人々がいます。 調和できない理由の一端は本書を読むと理解でき、これはまた本書が優れていることを表していると思います。
女の身にとってイスラームってどうなんだろう。ヒジャブをかぶり、外出を控え、仕事の場を分けて、運動も男とは別に競技場を作らなければできないことは、この本の側からはどう見えるんだろう。
イスラームについて、初心者にもわかりやすく書いた本。 テロ事件以降、イスラームがおかれてきた環境についても書かれている。 イスラームとはどういう宗教なのかがわかりやすく描かれていてよかった。
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内藤正典
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