内藤正典のレビュー一覧
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イスラム教と言う馴染みのない宗教を信じている人たちの考え方や様式を理解する事は、西洋的な考えにどっぷりと浸かっている我々にはなかなか難しいです。
イスラムとの分断を引き起こしているのは、西欧社会の自分たちは進んでいると言う思い上がりだけでなく、異なる宗教との考え方の違いや歴史的なものなど、一概に言えない根深い感情のようです。
アイデンティティの重要性が言われる現在では、自分が正しいと思った事が絶対と信じ過ぎるが故に、相手にとってはそれが正しいと感じる事とは限らないと言う、基本的なことを多くの人が忘れている気がします。
自分とは違うパラダイムで生きている人がいると言う事は大変な学びになりまし -
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移民や難民、外国人労働者について、ほとんど知識がなかったので、今回この本を読んでとても良かったです。
高校生でも読めるような理解しやすい文章で説明してくれているので、これまで教養本をあまり読んでこなかった自分でもすごくわかりやすかった。
この本を読むまでは、「日本に移民や難民が増えるのはなんとなく怖いな」くらいに思っていたけれど、読み終わった後には視野がちょっと広がり、その考え方も変わった。
移民と難民を受け入れる負担で逼迫している欧州のことや、"労働力"として外国人労働者を多く受け入れたドイツが辿ったこれまでの数十年の歴史。そして今の日本が外国人労働者に対して取っている -
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親日国として知られるトルコ。イスタンブールやカッパドキアなど、馴染みのある場所も少なくない。しかし、どれだけ等身大のトルコを知っているだろうか。
トルコ人の友人がいるが、今のエルドアン大統領は、彼にはどう映っているのだろうか?もし自由が制限されている国なら、本音を聞くのは難しいだろうし。クルド人を抹殺しようとしている国では?新聞で時事トピックスの表面ヅラを読むだけで何も分かっちゃいない。しかし興味がそそる国の一つだ。
この本を読んで、いかに欧米系のリソースに偏った見方をしてきたのかが分かった。(イスラムに対する、ある意味ネガティブなイメージを持つ西側のニュースを読んでいれば、このような色眼 -
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『教えて!タリバンのこと』(内藤正典)がキッカケでトルコがどんな国なのかをもっと知りたいと思って手に取った『トルコから世界を見る』(内藤正典)。
最近、この類の本を「海外の事、日本史世界史とか勉強した事は頭からスッカリ抜け落ちてて、ほんんどわかってないから」と思って読むんだけど……
今回も案の定、「カッパドキアとトルコアイス以外、ホンットわかってなかった」という事を痛感させられました。
【民族】、【各宗教の考え方】、【移民】、【外国人労働者】、【各国とトルコの関係、その歴史】……。
改めて知って、内容の深さに触れて、以下4点を思いました。
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2023年現在のエルドアン政権がどのように今の内政/外交方針を固め、動いているのかを、時にトルコ建国まで立ち戻りつつ構造的に解説してくれた。
特にトルコ国政を脅かす要因としての「ギュレン教団」や「PKK」についてはーーそれらの存在があるからといってトルコ政府がクルド人を差別し続けることを正当化しないけれどもーートルコにおけるエスニシティの平等を追求する際の困難をもたらしていることは理解した。
アメリカのクルド人武装組織支援や、イラク戦争&シリア内戦の爪痕、EUのキプロス統一政策の失敗、EUやNATOにおけるトルコへのイスラーム的偏見、さらにはロシアのウクライナ侵略戦争が始まってしま -
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先日「イスラエル」という本を読み、ユダヤ教とヨーロッパの関係について理解を深めたので、次はこちらでイスラームとの関係について知ろうと思った。
まずイスラーム、イスラム教の教えについて、私もご多分に漏れず過激なイメージがあったので、そこが訂正された。弱者を救済する、心に平穏をもたらす。宗教はみなそうゆうものだと思っていたけど、作者曰く、その他の宗教よりもその作用が大きいように書かれていると理解した。
ジハードで銃を持ちテロを起こす人たちはイスラーム世界の中でもごく一部。
また、ヨーロッパ社会各国の異文化、異民族への考え方も新たな知識となった。フランスのライシテ、ドイツの血統主義など、ヨーロッ -
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日本人が疎いイスラムについて、精神面の観点から解説した本。
日本のような自己責任が問われ、常に努力や競争を強いられる社会とは真逆で、「ま、そういうこともある」「なるようになる」というケセラセラ的な価値観を共有しているイスラム社会。捉え方次第では若干無責任にも感じられるかもしれないが、著者が言うように、これがある種のセーフティネットになっていると思う。
責任を追求し改善していく努力は、社会を劇的に発展させるというメリットももちろんあるし、日本が繁栄したのもそのお陰だと思う。しかし、自分を追い詰めるやり方で、精神的に疲弊している人が多いのも、自殺率が高いこともまた事実である。日本人が常に何かに -
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内藤 正典(ないとう まさのり、1956年9月29日 - )
日本の社会学者・地理学者。専門は国際移動論、現代イスラーム地域研究。同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科教授、一橋大学名誉教授。博士(社会学)(一橋大学)。日本中東学会会員。専門はトルコの国際関係、特に西ヨーロッパにおけるムスリム移民の研究、9・11以降はイスラムと西欧世界との関係、現代トルコの政治と社会。80年代まではシリアを中心としたアラブ地域での研究を行ってきたが、政治的な事情でヨーロッパ在住ムスリム移民研究を始める。9・11以降は西欧とイスラームの衝突を抑止するための研究を、近年はイスラーム法学者の中田考 -
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著者は中東でイスラム研究をしながら取材もしている大学教授。この本のメインテーマはプロパガンダなのだが、アラブ市民の民主活動の仕方など現地でじっくり観察している著者ならではの分析が興味深い。
「民族によい民族、悪い民族などない」「メディアは白黒つけたがる」
ニュージーランド政府は普段から移民に対しても平等に処遇することを表明してきたので、移民を狙ったテロ事件でアーダーン首相が「テロリストの名前を二度と口にしない。男がテロによって手に入れようとしていたものの一つが悪名。だからこそ私は口にしない。テロリストは無名のまま終わる。みなさんには犠牲者の名前を忘れないでほしい」
国営放送と公共放送は違う。国 -
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トルコにおける世俗主義とイスラームの関係が本当に興味深かったです。かつては欧州に近づこうとしましたが、度重なる拒否にトルコ側もいよいよしびれを切らしてイスラームを元に欧州との対等の関係を求めつつも独自路線を歩んでいくことを決めた現在のエルドアン大統領、前任のギュル大統領の英断だったと思います(日本ではいまだに欧米の後追いという現実・・・)。欧州の域内では自由や民主主義を掲げる一方で域外ではそれを平気で踏みにじるダブルスタンダードという欺瞞を世界で一番理解しているのはトルコではないかと思いますから。
その他古代トルコやオスマン帝国の歴史の概要や現在のトルコの文化・風習が理解できる内容盛りだくさん -
Posted by ブクログ
内藤先生は昔近くの研究室にいながら何となく近よりがたい存在だった。そんな先生の本を見かけたので、躊躇うことなく迎え入れた。
情報に容易くアクセス出来るからこそ、操作もしやすい。複雑な話題は、シンプルに捉えて考えた方が楽なため、ついつい対のフレームで考えがちである。しかし、対で考えることは、時に分断を生む。シンプルな構図で捉えられるほど、現実は単純ではない。一方、シンプルに敵が分かる方が、権利側は都合がいいし、自分も正義を振りかざせて気分がいい。
本著には、その情報は誰の視点かを考えることが大事だとある。併せて情報にフィルターをかける自分の視点とは何か、それを言語化することも大事だと考えた。