イスラーム色を前面に出す現在のエルドアン政権から、トルコは宗教色の強い国家という印象を抱いていた。しかし建国100年の自画像を見ると、一面的な理解では捉えきれない国の複雑さが浮かび上がる。そもそもエルドアン政権は EU 加盟に積極的で、貧困対策やゲジェコンドゥの住宅改善、交通網整備など生活基盤の向上に力を注ぎ、広範な市民から支持を得ていた時期がある。現在とは異なる実利的で改革志向の「初期エルドアン」の姿を踏まえると、トルコのアイデンティティは宗教、世俗、欧州志向、発展という多層的な要素の中で揺れ動きながら形成されてきたことが感じられた。また、一概に世俗主義政党=善とも言えないものだと思った。