志水辰夫のレビュー一覧
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新蔵シリーズ第2弾。
時代物とはいえ、意外と国際的な話になっていて驚いた。当時の日本が鎖国していたとはいえ、海外とのつながりがなかったわけではないことが分かる。
本書で、新蔵が1週間ほど剣の達人めいた人に師事したことが明かされる。とはいえ、修行といえば鉄芯入りの木刀を振るだけ。それで強くなれるというのはロマンがある。
いわゆる「からゆきさん」崩れの女性も登場する。これが「母性のモンスター」のような存在で、荒くれ者がコロッと籠絡されてしまうのが面白い。もちろん、新蔵は、文武両道のパーフェクトボーイなので(高等教育機関で学んだわけではないだろうが知的人種であることは間違いない。)、そういう勢力に取 -
購入済み
時代小説もいい!
著者の現代小説とは異なり、ひりつくような孤独を背負った主人公が、これでもかと逆境に追い込まれることはありません。志水節もありません。ロードノベルとして軽快に話が進みます。ですが、ただ明るく楽しい旅物語ではなく、登場人物の背景や出くわす事件等には辛く、重い内容があります。
機転を利かせてピンチを脱したり、一途な思いを胸の奥に秘めている新蔵は、やはりシミタツならではの主人公です。続編も購入しました。 -
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〇ザ・ハードボイルド。男前の主人公が十数年前の謎に挑む
地方の街で塾講師をやっている波多野は、教え子が失踪したと彼女の伯母から相談を受け、上京し、行方を調べていた。教え子の名は広瀬ゆかり。彼女のアパートの周辺を調べていると怪しいものもうろついており、失踪には何らかの事件性も考えられる。マンションの管理人や以前の同居人に話を聞いていると、どうやら角田という男が絡んでおり、あるサパークラブで会ったのだという。そのクラブに行くと、昔高校に勤めていた時に職を追った大森たちがいて、職を追われる原因となった教え子であった元妻・雅子のバーを紹介される。雅子は変わっていなかったが、会ったことに後悔もした。
翌 -
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田舎の本屋では新刊なのに入荷が無く、都会の本屋で発見し、やっと購入(#^.^#) 志水辰夫の初期の短編集。最初の『A列車で行こう』から志水節が炸裂。あの明るいJAZZのスタンダードナンバーが聴こえてくるかのようなラストは、まるで映画のようだ。『石の上』は、松本清張のような味のあるミステリー掌編。『カネは上野か』は、教訓めいたものを感ずる掌編。ヒカルゲンジに時代を感ずるな。『ジャンの鳴る日』も、また何とも言えぬ余韻を残すミステリーだ。『やどり木』はホラー。『愚者の贈り物』も教訓めいたミステリー。『わけありごっこ』は懐かしいミステリー。『見返り桜』にも教訓、戒めを感ずる。『狙われた男』、これはサス
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新規購入ではなく、積読状態のもの。
2008/8/9~8/10
久しぶりに読んだ志水作品である。昔のハードボイルド路線も良いが、最近のなんというか、人生の重みのようなものを感じさせる作品も、なかなか他の作家にはない良い味をもっている。今回は、さまざまな「別れ」がテーマになっている10作の短編集。家族、友人、恋人、近所の人などそれぞれの付き合いの中で、言えること、言えないこと、後になって気づいたこと。読後感が本当に素晴らしい。私も最近男の子の親になったが、「男親」という作品などを読むと、女の子の親というものに憧れてしまうし、また自分には勤まらないだろうなぁ、とも思う。
柴田錬三郎賞受賞作品。 -
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今年はお休みの日によく雪が降る。今日も朝目覚めると一面の雪。この本の舞台の鶴岡や築別には遥かに及ばないけれど。
「おすすめ文庫王国」に北上次郎から“志水辰夫はこの五冊を読め!”とあり、今更ながらにシミタツである。
悲惨な物語で、主人公はあがけばあがくほど状況は悪くなり、話が進めば進むほど暗い出自が明らかになり、何のためにこの闘いに挑んでいるのか、救いようのないお話が展開する。
しかししかし、物語の筋立てはこの際置こう。
この本の読みどころはそれまでもそこかしこに顔を出しながら、ラスト三十章あたりからどこを引こうかと迷う程延々と続くリリカルでハードボイルでセンチメンタルでめくるめく文体。じんじん -
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志水辰夫『負けくらべ』小学館文庫。
ミステリー、冒険小説作家から歴史小説家に転身し、しばらく歴史小説ばかりを執筆していた志水辰夫が19年振りに執筆した現代小説である。
何とも不思議な魅力を持つ小説だった。登場人物の殆どがその出自や生き様に問題を抱え、ミステリー・サスペンス、スパイ冒険小説の要素も混じったヒューマンドラマになっているのだ。そして、何よりも主人公の三谷孝の持つ類稀な能力や人物像に不思議な魅力を感じるのだ。
対人関係能力、調整力、空間認識力、記憶力に極めて秀でたギフテッドである初老の介護士の三谷孝は、誰もが匙を投げた認知症患者の心を次々と開き、業界では知る人ぞ知る存在だった。