志水辰夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『行きずりの街』で有名な志水辰夫の短編集です。
ハードボイルドとはかなり趣の違った、郷愁溢れる作品集です。
作者は壮年の男性に読んでほしいとあとがきで書いてありました。
多分私っくらいの年齢から読んで欲しいということだとは思いますが、
それでもまだ早いかな?です。
でも、同時にもう十年早くこの作品を描いてみたかったとも書いてあった
ので、少し早いくらいに読んでよかったのかもしれません。
なんか心が騒ぐような、それでいてしっとりと落ち着くような感覚の、
読後感の良い作品でした。
みんなそれぞれ非常にいい作品でした。
なんか最初の作品は、ルフィーたちがそれぞれ旅立っていくようなかんじがしてし -
Posted by ブクログ
最近、結構、時代小説が流行りの中で、私としてはあんまり食指が伸びないのだけれど、志水辰夫が時代小説に手を染めたとあってはこいつは読まざぁなるまいと。
家中の一人を斬り脱藩を余儀なくされ江戸に舞い戻った佐平。藩主交代劇の最中、失踪した朋輩を探すうちに、佐平にも暗い影が忍び寄り…といったところから展開する物語。
中途半端な生き方の反面ある種の強情さを持った主人公に、武士の矜持に生きる山城家の目付・小宮六郎太、幼なじみで今は主君の愛妾の園子、六郎太の妹で凛とした佇まいのたえなど周りを彩る人も含めて、確かに現代劇で書いてきたシミタツの世界が意外と嵌る江戸時代。
ただ、全体的にもっさりした感じでイマイチ -
Posted by ブクログ
1994年の作品が2007年9月に新装版として出されていたので、面白いからかと思い、手に取った。逃亡劇。ハードボイルド。無実の男女が出会い、国家権力の追跡から逃げる。伊坂幸太郎の『ゴールデン・スランバー』を思い出した。ストーリーもどこか不完全な印象の残る点で似ていた。読むべきところは、逃亡中の人間の取る行動であったり、心の変化、そして何も訊かずに手を貸してくれたひっそりと暮らす人々の心情などにあるのかもしれない。解説を見たら、この作品は車雑誌『RVマガジン』に連載されていたとのこと。志水さんにとって初めての連載だったのではないかとのことだ。そのせいか、RV車での逃亡シーンがリアルに描かれてい
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Posted by ブクログ
[趣味らしい趣味もなく、単調な日々を流されるまま生きてきた内村静夫。母親の入院をきっかけに早期退職を決め、密かに新しい生活に期待を寄せる。そんなある日、人気がない山中の道路で父親の車を探しに来ていた河内亜紀と出会う。念願の深い仲になって喜んだのも束の間、次第に彼女ら親子に対して様々な疑いを持つように。亜紀の父親といわれる男は何のために山中へやってきたのか、そして彼女ら親子の隠された関係とは・・] タイトルにつられて読んじゃいました(プッ)人生に浮き沈みが無い人ほど、こういう情事に深くはまってしまうんでしょねー。
・・・気をつけないと(*≧m≦)ノ★バンバン
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結末の改竄を許しません!
長年のファンです。
講談社文庫で出された著書は、ほぼ全て作者の手によって書き改め、非常に残念の改竄が行われてしまいました。
独特な体現止めや、「キザ」と言われてしまう領域へ、寸止めのギリギリな痺れる台詞の数々に、当時の私達読者は「国産冒険小説であっても、ここまで格調高い文体をもって、世界へ勝負出来るのでは?」と云う儚い期待をしていました。
当時は、往年のJ.ヒギンズやギャビン.ライアル等も、一時の隆盛が収まり、「東西冷戦が一定の終息を迎えた時期~ポスト冷戦時代はどうなるのか」と、世界中がその先について色々と暗中模索をしている時期に、堂々と冷戦時代の「属国下であった日本の悲哀」を真 -
何で書き換えた?!
この新潮文庫版は、著者の意向で改稿が為され、他の方がレビューしている「ラストの一行」が全く異なる形に書き換えられています。
著者の考えの中で「体言止め」や「単語」で〆る書き方が気に入らなくなったのか何なのか知りませんが、その書き方で多くのファンから「シミタツ節」とまで称された文体を、改版を機会に書き換えてしまうと云うのは、読者に対して傲慢過ぎると思うのです。
昔通りの美文体を読みたい方は、御面倒でも旧版の「講談社文庫」を古本にてお買い求めください。
中味云々の問題では有りませんが、こういうやり方は嫌いなので、敢えてキツいレビューを投稿いたしました。すみません。