志水辰夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和が終わったばかりの平成初期の男はタフで行動力に満ち溢れた生き物だなとつくづく思わされた。ハードボイルドな小説なので終始張り詰めた雰囲気な作風だが、唯一気持ちを落ち着けられるシーンは、波多野と雅子の会話のシーンや雅子の家でのシーンくらいだった。
読めば読むほどに、私立の学園の問題が浮き彫りになってくるところが恐ろしかった。一族で経営していたり、上層部を支配している教育機関というのは、家族ぐるみで手を組んで経営状況が一転するかしないかの際どいことをしているのだなと感じた。そういう闇みたいな部分が小説なのに妙にリアリティがあった。著者のつくる独特の文体とハードボイルドによるものなのだろうか、この -
Posted by ブクログ
1997年に刊行された短編集に、今回新たに書き下ろした1篇「今日の別れ」を加えて再刊行された、10作からなる短編集。
「今日の別れ」以外は、どの話も主人公は50代半ばの男。終始「わたし」という一人称で語られ、固有名詞を明らかにしないことで、それはどこにでもある50代半ばの男の物語となる。末期の病に侵されわずかな余命を知る男、大切な人を亡くした又は今まさに亡くそうとしている男、どれもが死を目の前にして自らの来し方行く末を思う静かな物語。
男たちが振り返る30年は、さらりと淡水のように目の前を流れ、その流れをせき止めるのは過去に棄てたものや失ったものへの未練。短編であるがゆえに無駄がなく、主人