河合莞爾のレビュー一覧
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河合莞爾『かばい屋弁之助吟味控』祥伝社文庫。
これまで近未来警察小説やちょっと毛色の変わった小説を書いて来た河合莞爾にしては珍しい時代小説。まさか新刊文庫が時代小説とは思っていなかったので、行きつけの本屋で新刊文庫の書棚を探しても見付からず、店員にお願いして見付けてもらい、やっと購入。どうやら時代小説の書棚に収まっていたようだ。
時代小説と言ったが、普通の時代の小説ではない。言うなれば、時代お白洲法廷ミステリー小説だろうか。主人公の弁之助が、お白洲で無実の者を弁護し、見事に冤罪を晴らしてみせるのだ。
痛快無比。謎が謎を呼び、その謎が全て明かされるや、気分爽快。見事な時代お白洲法廷ミステリー小説であった。
終盤の展開は非常にテンポ良く、それでいて一波乱二波乱ありで、手に汗握りながら読み終えた。
ある日の朝、漆問屋が大爆発を起こし、主人が焼死する。捕縛され、拷問の果てに罪を認めたのは手代の忠吉だった。だが、牢屋敷で起きた火災の混乱に乗じて逃げた忠吉は、大名家の子息で今は町人身分の弁之助に無実を訴える。
かつて公事方御定書編纂にも関わっていた弁之助が事件を調べると、現場に火薬の痕跡は無く、火事の折美しい振袖が空を舞ったという噂を知る。そして、弁之助は弁護する者無きお白洲で、忠吉を弁護し、冤罪を晴らしてみせる。
本体価格800円
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数ヶ月前であれば、恐らくただのSFミステリ=エンタメ小説とだけ思って読んだことだろう。
これは日本の抱える人口動態の問題、その行く先を端的に指し示したものであると同時に、「人間とは何か?幸福とは何か?」の問いに応えようとする哲学の入門書でもある。
失われた30年の結果である「今」、そして「未来」において人は幸福をどのように考えるとよいのか?善悪の問題や介護問題、そして国防問題も絡めながら考えられるよい書籍だった。
個人的には、コスモ・バビロニア主義における洞察力に優れた人(ニュータイプ)による統治が最も合理的であるように思うが、この論を出した瞬間、差別の問題が起きてくる。ヒトはその本質から差別の問題をクリア出来ておらず、合理性は必ずと言っていいほど分断と憤怒の嵐を巻き起こす。恐らくは既得権益層の損失、自己愛憤怒を刺激するというのが大きな理由だ。個人主義がはびこるのをヒトという種は抑制できていない。「智を以て愚に説けば必ず聴かれず」ということにつながるのはこういうところからだろう。
加害者(悪)がなぜそうなったのか?について知ろうとしない、考えを止めている点で、結局ジャンヌも中途半端な知識しか持っていないことになる。それでいて善悪を断じるとは片腹痛い。思考し続けることを止めた存在は決して神ではない。それ故、ジャンヌは別のタイプの人間…というだけの存在、不完全な存在という枠は出ていないものと考えられる。
進化という歴史の中でなぜ悪存在が淘汰され得なかったのかについて思いを馳せるべきだろう。 -
Posted by ブクログ
文庫本の表紙の裏に書いてあった8行のストーリーを読んで、すぐに手に取りました。
どうやって800年後に行くのか、壮大な設定にとてもワクワクしました。
タイムスリップ物は、時空の穴みたいな所にいつの間にか紛れ込んで、とか意識失って気づいたら、というのがお約束ですが、このお話では現実的なタイムスリップ方法が書かれていて本当にいつかできるのではないかと思わされます。
物理、生物、科学、哲学、神話、などなど教科書を読んでいるような難しい言葉が沢山出てきます。ストーリーを追うだけで精一杯でしたので、すべてを理解するために、もう一度読みたいと思います。
想像していたような結末ではなかったのですが、SFのストーリーではなくより現実的な着地で良かったのかなと思います。
久しぶりに面白い小説に出会えました。
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Posted by ブクログ
ロボット三原則があるにも関わらず殺人を行ったロボットの犯行理由、原則の回避方法を巡るお話
以下、公式のあらすじ
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彼女は、なぜヒトを殺せたか?
改変不能の「自律行動ロボット三原則」を埋め込まれ、バグもなく正常な家事ロボット〈ジャンヌ〉。
“不可能な殺人”を犯した彼女に対峙した刑事が、衝撃の事件の先に見たものとは――
まさに今読むべき、大興奮のSF×ミステリ・エンターテインメント!
「私は、自律行動ロボット三原則に逆らう行動はできません」
人口が5000万人まで減少した2060年代、ロボットの存在は珍しいものではなくなっていた。
ある日、警視庁の刑事・相崎按人は“ありえない”現場を目撃する。
政府主導で開発された家事用人間型ロボットが主人を殺害し、風呂場でその死体を洗っていたのだ。
〈ジャンヌ〉と名付けられたそのロボットにも、人間に危害を加えることを禁じる「自律行動ロボット三原則」が組み込まれ、絶対に人を殺せないはずだった。
バグが疑われたが、科捜研での検査では異常なし。
急遽、製造元のJE社への護送を命じられた相崎は、道中、謎の武装集団の襲撃に遭う。
その絶体絶命のピンチから相崎を救ったのは、なんとジャンヌだった……。
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犯行の現場の状況から、物語の定番の展開が推測できてしまう
それを基に原則が回避できた理由も容易に想像がつく
終盤のあのセリフまんまを序盤に思いついてしまう自分の物語摂取量が嫌になっちゃうね
でもまぁ「どうやってそこに至ったのか?」という予測はちょっと外れたかな
シェリーの神格化めいた展開ではなかったですねぇ
聖書での殺した人数の最多は神という余計な知識がある故か……
襲撃者達の背後の存在も、殺人ができるロボットを欲していて、それなりの権力を持っているという条件なら大まかな該当組織は一つでしょうよ
なのでストーリーとしてはまったく意外な点がなかったけれども
読み終えるとまるで哲学書を読まされたような読後感
襲撃者を撃退した際にジャンヌが語ったフレーム問題回避の説明
思考プロセスがを有限に設定されているからというけど、5段階というのはプロセス数が少なすぎないか?
もしくは、副次的な事象を細かく分ければいくらでも人間を害せるように思える
このセリフ自体がフェイクの可能性もあるんだけど、ここで敢えてジャンヌが「嘘」をつく必然性が思い浮かばない
という事は、正規の思考ルーチンなんでしょうねぇ
ってか、本当に危ういな
リアルにAIの法整備が行われるケースを考えると、かなり難易度が高いのを実感する
今更ロボット三原則なんて単純なものは採用しないだろうけど
今作のような大原則があったとして、附則や細則の文言や言葉の定義が難しい
何をもって対象を判別するのか?という問いの絶対的な正解はない
世の中にあふれる他のSF作品でも、アンドロイド、サイボーグ、ヒューマノイドの人権に関する議論がされてあったりするし
明確な定義ってその時代や社会背景によって如何様にも変化しうる
リアリティという観点では杜撰な設定だけど、思考実験としては面白い題材でした -
Posted by ブクログ
河合莞爾『カンブリアⅢ 無化の章-警視庁「背理犯罪」捜査係』中公文庫。
シリーズ第3作にして、シリーズ完結編。
数々の不可思議面白ミステリーを執筆している河合莞爾らしい奇抜な設定の警察小説である。
前作で広げた大風呂敷は見事に全て回収され、読後に爽快感を覚えた。これが河合莞爾の計算通りだったとしたら、シリーズ第1作で物足りなさを感じ、第2作でもう一歩かなと思った自分は穴があったら入りたいという気分だ。
ストーリーは第1作から続き、常識に反した能力を持つ人間による犯罪、背理犯罪を捜査する特殊八係に所属する尾島到と閑谷一大のコンビが再び奇妙な事件の謎を追うというものだ。
しかも、今回は都知事に当選した中園薫子が他の二人の候補者を能力者である伊沢を使って殺害したという事件がメインとなっている。
伊沢は過去に起きた幾つかの凄惨な殺人事件の真犯人とも考えられており、尾島、関谷ら特殊八係は伊沢の所在を必死に追うが、現行法で裁けないこと、社会への影響を恐れた警察庁が能力者の逮捕を禁じてしまう。
果たして結末は……
驚愕の結末が何度も繰り返される終盤に刮目せよ。
本体価格940円
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河合莞爾『ジャンヌ Jeanne, the Bystander』祥伝社文庫。
感動の近未来SFミステリー小説。
非常に面白い。アイザック・アシモフが提唱した『ロボット三原則』への挑戦が1つのテーマになっている。AIにより自ら考えて行動するロボットは自らの思考により『ロボット工学三原則』の壁を乗り越えて行動する。
ロボットが殺人を犯した理由は……
殺人現場に呼び出された警視庁第一機動捜査隊の相崎按人は、ジャンヌという名前の女性型ロボットが主人を殺害し、風呂場で死体を洗浄する現場に遭遇する。
相崎がジャンヌを尋問すると犯行を認めたものの、動機については守秘義務を盾に黙秘した。その上で、ジャンヌは人間に危害を加えてはならない『ロボット工学三原則』には抵触しないと主張する。
製造元の仙台市の工場へジャンヌの移送を命じられた相崎だったが、高速道路で武装集団に襲撃され、ジャンヌと共に逃走する。
ロボット開発を巡る陰謀と感動のラスト……
本体価格900円
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記憶を失くしたプロ野球選手の矢神大。
リハビリ先のLAから失踪し、ハワイでホームレスになっているところを球団のブルペンキャッシャー・沢本に発見される。
記憶を失くし、投球方法も忘れてしまった矢神を球界に復帰させるべく、沢本は奔走する。
しかし、矢神には高校時代に消えるボールで人を殺した容疑がかけられていた・・・
球団の支配下にある投手が失踪し、記憶を失う・・・何とも奇想天外な設定だが、これが面白かった!
投球術の描写も細やかで、映像が頭の中に浮かぶよう。
高校3年で甲子園で活躍し、一躍時の人となり、プロになっても160キロを超えるピッチャーとして、勝率も8割を超えるなんて、実際にこんな選手がいたら、どんななんだろう?
打者の手元でホップするストレートの描写は、金農旋風を巻き起こした時の吉田投手のギアが上がった時のストレートを思い出す。
本当に投球の描写だけでもワクワクが止まらないのに、球団の見栄から矢神をプロ野球界から追放した球団に反旗を翻したオールスター1位の選出も胸が熱くなった。
それだけでも十分なのに、きちんと過去の殺人事件の真相も描いているし、救いのあるラストで十分読みごたえのある作品だった。 -
購入済み
物語は生き続ける
後書きより、悲しみや恐怖が幸せな未来を作るはずがない。生まれた物語は消えない。っといった言葉が示すように、物語と心のお話だが、そこに科学が密接に絡んでいてとても面白かった。あと、環境問題なども含めて、未来について考えさせられた。物語の構成が良かったです。
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Posted by ブクログ
落語を舞台にしたミステリとかは結構読んだことありますが、どれも「寄席」を題材にして噺家さんが謎を解いたりとかだったんですがこれはすべてが噺の中で完結しているのがすごい。有名な噺の中で謎を見つけて、おなじみのはっつぁん熊さんがどたばたしながらもその真相をご隠居が解き明かし、落語としてもきちんと成立している。すごいですよこれは。もっと評価されてもいい一冊。
子供のころから落語の本を読むのが好きで、ミステリも大好きなんですがそんな自分にはこの上ない最上の本です。かなり限定された褒め方ですけども。
これ続編とかでないのかなあ・・・本当に心の底から切望します。