河合莞爾のレビュー一覧
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河合莞爾『かばい屋弁之助吟味控』祥伝社文庫。
これまで近未来警察小説やちょっと毛色の変わった小説を書いて来た河合莞爾にしては珍しい時代小説。まさか新刊文庫が時代小説とは思っていなかったので、行きつけの本屋で新刊文庫の書棚を探しても見付からず、店員にお願いして見付けてもらい、やっと購入。どうやら時代小説の書棚に収まっていたようだ。
時代小説と言ったが、普通の時代の小説ではない。言うなれば、時代お白洲法廷ミステリー小説だろうか。主人公の弁之助が、お白洲で無実の者を弁護し、見事に冤罪を晴らしてみせるのだ。
痛快無比。謎が謎を呼び、その謎が全て明かされるや、気分爽快。見事な時代お白洲法廷ミステリ -
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数ヶ月前であれば、恐らくただのSFミステリ=エンタメ小説とだけ思って読んだことだろう。
これは日本の抱える人口動態の問題、その行く先を端的に指し示したものであると同時に、「人間とは何か?幸福とは何か?」の問いに応えようとする哲学の入門書でもある。
失われた30年の結果である「今」、そして「未来」において人は幸福をどのように考えるとよいのか?善悪の問題や介護問題、そして国防問題も絡めながら考えられるよい書籍だった。
個人的には、コスモ・バビロニア主義における洞察力に優れた人(ニュータイプ)による統治が最も合理的であるように思うが、この論を出した瞬間、差別の問題が起きてくる。ヒトはその本 -
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文庫本の表紙の裏に書いてあった8行のストーリーを読んで、すぐに手に取りました。
どうやって800年後に行くのか、壮大な設定にとてもワクワクしました。
タイムスリップ物は、時空の穴みたいな所にいつの間にか紛れ込んで、とか意識失って気づいたら、というのがお約束ですが、このお話では現実的なタイムスリップ方法が書かれていて本当にいつかできるのではないかと思わされます。
物理、生物、科学、哲学、神話、などなど教科書を読んでいるような難しい言葉が沢山出てきます。ストーリーを追うだけで精一杯でしたので、すべてを理解するために、もう一度読みたいと思います。
想像していたような結末ではなかったのですが、S -
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ロボット三原則があるにも関わらず殺人を行ったロボットの犯行理由、原則の回避方法を巡るお話
以下、公式のあらすじ
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彼女は、なぜヒトを殺せたか?
改変不能の「自律行動ロボット三原則」を埋め込まれ、バグもなく正常な家事ロボット〈ジャンヌ〉。
“不可能な殺人”を犯した彼女に対峙した刑事が、衝撃の事件の先に見たものとは――
まさに今読むべき、大興奮のSF×ミステリ・エンターテインメント!
「私は、自律行動ロボット三原則に逆らう行動はできません」
人口が5000万人まで減少した2060年代、ロボットの存在は珍しいものではなくなっていた。
ある日、警視庁の刑事・相崎按人は -
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河合莞爾『カンブリアⅢ 無化の章-警視庁「背理犯罪」捜査係』中公文庫。
シリーズ第3作にして、シリーズ完結編。
数々の不可思議面白ミステリーを執筆している河合莞爾らしい奇抜な設定の警察小説である。
前作で広げた大風呂敷は見事に全て回収され、読後に爽快感を覚えた。これが河合莞爾の計算通りだったとしたら、シリーズ第1作で物足りなさを感じ、第2作でもう一歩かなと思った自分は穴があったら入りたいという気分だ。
ストーリーは第1作から続き、常識に反した能力を持つ人間による犯罪、背理犯罪を捜査する特殊八係に所属する尾島到と閑谷一大のコンビが再び奇妙な事件の謎を追うというものだ。
しかも、今回は都 -
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河合莞爾『ジャンヌ Jeanne, the Bystander』祥伝社文庫。
感動の近未来SFミステリー小説。
非常に面白い。アイザック・アシモフが提唱した『ロボット三原則』への挑戦が1つのテーマになっている。AIにより自ら考えて行動するロボットは自らの思考により『ロボット工学三原則』の壁を乗り越えて行動する。
ロボットが殺人を犯した理由は……
殺人現場に呼び出された警視庁第一機動捜査隊の相崎按人は、ジャンヌという名前の女性型ロボットが主人を殺害し、風呂場で死体を洗浄する現場に遭遇する。
相崎がジャンヌを尋問すると犯行を認めたものの、動機については守秘義務を盾に黙秘した。その上で、ジ -
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記憶を失くしたプロ野球選手の矢神大。
リハビリ先のLAから失踪し、ハワイでホームレスになっているところを球団のブルペンキャッシャー・沢本に発見される。
記憶を失くし、投球方法も忘れてしまった矢神を球界に復帰させるべく、沢本は奔走する。
しかし、矢神には高校時代に消えるボールで人を殺した容疑がかけられていた・・・
球団の支配下にある投手が失踪し、記憶を失う・・・何とも奇想天外な設定だが、これが面白かった!
投球術の描写も細やかで、映像が頭の中に浮かぶよう。
高校3年で甲子園で活躍し、一躍時の人となり、プロになっても160キロを超えるピッチャーとして、勝率も8割を超えるなんて、実際にこんな選手がい -
購入済み
物語は生き続ける
後書きより、悲しみや恐怖が幸せな未来を作るはずがない。生まれた物語は消えない。っといった言葉が示すように、物語と心のお話だが、そこに科学が密接に絡んでいてとても面白かった。あと、環境問題なども含めて、未来について考えさせられた。物語の構成が良かったです。
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落語を舞台にしたミステリとかは結構読んだことありますが、どれも「寄席」を題材にして噺家さんが謎を解いたりとかだったんですがこれはすべてが噺の中で完結しているのがすごい。有名な噺の中で謎を見つけて、おなじみのはっつぁん熊さんがどたばたしながらもその真相をご隠居が解き明かし、落語としてもきちんと成立している。すごいですよこれは。もっと評価されてもいい一冊。
子供のころから落語の本を読むのが好きで、ミステリも大好きなんですがそんな自分にはこの上ない最上の本です。かなり限定された褒め方ですけども。
これ続編とかでないのかなあ・・・本当に心の底から切望します。