【感想・ネタバレ】ジャンヌ ―Jeanne,the Bystanderのレビュー

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Posted by ブクログ

 数ヶ月前であれば、恐らくただのSFミステリ=エンタメ小説とだけ思って読んだことだろう。
 これは日本の抱える人口動態の問題、その行く先を端的に指し示したものであると同時に、「人間とは何か?幸福とは何か?」の問いに応えようとする哲学の入門書でもある。
 失われた30年の結果である「今」、そして「未来」において人は幸福をどのように考えるとよいのか?善悪の問題や介護問題、そして国防問題も絡めながら考えられるよい書籍だった。

 個人的には、コスモ・バビロニア主義における洞察力に優れた人(ニュータイプ)による統治が最も合理的であるように思うが、この論を出した瞬間、差別の問題が起きてくる。ヒトはその本質から差別の問題をクリア出来ておらず、合理性は必ずと言っていいほど分断と憤怒の嵐を巻き起こす。恐らくは既得権益層の損失、自己愛憤怒を刺激するというのが大きな理由だ。個人主義がはびこるのをヒトという種は抑制できていない。「智を以て愚に説けば必ず聴かれず」ということにつながるのはこういうところからだろう。

加害者(悪)がなぜそうなったのか?について知ろうとしない、考えを止めている点で、結局ジャンヌも中途半端な知識しか持っていないことになる。それでいて善悪を断じるとは片腹痛い。思考し続けることを止めた存在は決して神ではない。それ故、ジャンヌは別のタイプの人間…というだけの存在、不完全な存在という枠は出ていないものと考えられる。
進化という歴史の中でなぜ悪存在が淘汰され得なかったのかについて思いを馳せるべきだろう。

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2024年06月05日

Posted by ブクログ

ロボット三原則があるにも関わらず殺人を行ったロボットの犯行理由、原則の回避方法を巡るお話

以下、公式のあらすじ
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彼女は、なぜヒトを殺せたか?
改変不能の「自律行動ロボット三原則」を埋め込まれ、バグもなく正常な家事ロボット〈ジャンヌ〉。
“不可能な殺人”を犯した彼女に対峙した刑事が、衝撃の事件の先に見たものとは――
まさに今読むべき、大興奮のSF×ミステリ・エンターテインメント!

「私は、自律行動ロボット三原則に逆らう行動はできません」
人口が5000万人まで減少した2060年代、ロボットの存在は珍しいものではなくなっていた。
ある日、警視庁の刑事・相崎按人は“ありえない”現場を目撃する。
政府主導で開発された家事用人間型ロボットが主人を殺害し、風呂場でその死体を洗っていたのだ。
〈ジャンヌ〉と名付けられたそのロボットにも、人間に危害を加えることを禁じる「自律行動ロボット三原則」が組み込まれ、絶対に人を殺せないはずだった。
バグが疑われたが、科捜研での検査では異常なし。
急遽、製造元のJE社への護送を命じられた相崎は、道中、謎の武装集団の襲撃に遭う。
その絶体絶命のピンチから相崎を救ったのは、なんとジャンヌだった……。
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犯行の現場の状況から、物語の定番の展開が推測できてしまう
それを基に原則が回避できた理由も容易に想像がつく
終盤のあのセリフまんまを序盤に思いついてしまう自分の物語摂取量が嫌になっちゃうね

でもまぁ「どうやってそこに至ったのか?」という予測はちょっと外れたかな
シェリーの神格化めいた展開ではなかったですねぇ
聖書での殺した人数の最多は神という余計な知識がある故か……

襲撃者達の背後の存在も、殺人ができるロボットを欲していて、それなりの権力を持っているという条件なら大まかな該当組織は一つでしょうよ

なのでストーリーとしてはまったく意外な点がなかったけれども
読み終えるとまるで哲学書を読まされたような読後感


襲撃者を撃退した際にジャンヌが語ったフレーム問題回避の説明
思考プロセスがを有限に設定されているからというけど、5段階というのはプロセス数が少なすぎないか?
もしくは、副次的な事象を細かく分ければいくらでも人間を害せるように思える

このセリフ自体がフェイクの可能性もあるんだけど、ここで敢えてジャンヌが「嘘」をつく必然性が思い浮かばない
という事は、正規の思考ルーチンなんでしょうねぇ
ってか、本当に危ういな


リアルにAIの法整備が行われるケースを考えると、かなり難易度が高いのを実感する

今更ロボット三原則なんて単純なものは採用しないだろうけど
今作のような大原則があったとして、附則や細則の文言や言葉の定義が難しい

何をもって対象を判別するのか?という問いの絶対的な正解はない
世の中にあふれる他のSF作品でも、アンドロイド、サイボーグ、ヒューマノイドの人権に関する議論がされてあったりするし
明確な定義ってその時代や社会背景によって如何様にも変化しうる


リアリティという観点では杜撰な設定だけど、思考実験としては面白い題材でした

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2023年09月17日

Posted by ブクログ

めちゃくちゃ面白かった。
こうなってもおかしくないなと思う未来で起きる、人間に危害を加えられないはずのロボットの殺人。
哲学的だし、色んなことについての理解だったり、考え方だったりがすごく深くて、読んでよかった。

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2023年01月08日

Posted by ブクログ

人型ロボットは未来の象徴!
21世紀も23年目を迎え、車の自動運転は目前で、化石燃料からの脱却や、遺伝子治療や遺伝子改良の技術も日進月歩の如く着実に前に向かって進んでいる!
しかし、コロナやAIDSと癌などは克服できず、第二次世界大戦以降の冷戦は平和と民主主義を守ると称して民主主義の押し付けを勧めながら戦争を進めている!
色んな国の軍事予算が科学技術の発展に使えたら、地球の温暖化への解決策や、来るべき食糧水不足に何らかの打開策が打てるのではと思ってしまう・・・


本作品は2060年代の人口減少に歯止めがかからない日本が舞台となっており、人口減少の打開策として産業用ロボットが産み出されていた!

家事用のロボットのジャンヌが自分の主人を殺してしまう?
しかし、ロボットは『人間に危害を加えてはいけない』というプログラム、所謂ロボット三原則に基づき起動できるようになっており、人間を殺すことはおろか怪我をさせる事すらできない仕様となっている?
主人公の警視庁第一機動捜査隊の相崎は人を殺してしまったロボットのジャンヌを護送することになるのだが・・・

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2023年01月04日

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