石原慎太郎のレビュー一覧
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ネタバレ第1回文學界新人賞受賞作にして、第34回芥川賞受賞作。
表題作の「太陽の季節」を含め、「処刑の部屋」、「完全な遊戯」、「乾いた花」とどれも退廃的な若者の姿が描かれている(「ファンキー・ジャンプ」は、内容がよく分からず途中で読み止めてしまったため不明)。
表題作「太陽の季節」は津川竜哉と英子のboy meets girlだが、英子を玩具同然に扱うその関係は所謂純愛では当然ない。
だが最後、竜哉の「スポーツマンとしての彼の妙な気取り」で死んでしまった英子に対して、「竜哉の一番好きだった、いくら叩いても壊れない玩具を永久に奪った」と感じる竜哉の心境には、英子への愛着が感じられる。もちろんそこには -
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石原慎太郎『ある漢の生涯 安藤昇伝』幻冬舎文庫。
先日、著者が亡くなったばかりなので古い著作が文庫化されたのかと思ったら、昨年刊行された単行本の文庫化だった。
何故か一人称で語られる安藤昇の自伝風ノンフィクション。これでもかと言うデカイ活字で頁数の割りにはボリュームは無い。晩節を迎えた著者がかつて出会った安藤昇や花形敬に思いを馳せる不思議な作品。
安藤昇のことは、昔読んだ本田靖春の『疵 ―花形敬とその時代』で知っていたが、著者がこういうジャンルの作品を手掛けていたことに驚いた。
幼い時分から素行不良で、少年院から特攻隊員を志願し、大学に通いながら愚連隊を組織し、後に安藤組の組長、さらに -
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今月の文藝春秋に載っていた名作。評者も未完成ながら形破りの大作と評しており、社会への衝撃が実感できる。ボクサーの龍哉が湘南で英子を弄ぶ非倫理的な構成だが、愛をどう扱っていいかわからない初々しさ故の粗暴さや、非日常の開放感に溢れた舞台としての新鮮さは悲劇的かつ後味の悪い結末をも引っくり返す青年期特有の眩しさを感じさせるには十分である。特に、現代でも行き過ぎとも言える主人公らの道徳心は当時の保守的な社会からすれば衝撃的なものであっただろう。
賛否両論巻き起こったことは承知しているが、読んだ感想としては正直これくらいの表現は許容範囲ではないかと思った。石原の出世作であると共に太陽族として社会現象にな -
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2月1日、芥川賞作家で東京都知事等を務めた石原慎太郎氏が逝去された。享年91歳。
その波乱万丈の人生を報じるニュースを見ながら、一度はその著書を読んでみようかと思い手に取った。
「天才」--田中角栄元総理大臣について、かつてはその金権体質を追及もした著者が、田中氏になり切ってその生涯を語る形をとった。
1969年生まれの私にとって、物心ついた時の田中氏の印象は、「何か悪いことをして捕まった元総理大臣」。
ニュース番組では盛んに批判されるのに、バラエティー番組では氏のものまねをして笑いを取る人が後を絶たない。
ともかく影響力が大きい人であったのだろう。
高等小学校卒。
生涯に30以 -
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石原慎太郎のような、無意識過剰な人間に自分を語らせると、自己顕示欲が全面に出てしまいエグみが強い。
だが、ひとたび愛を通せば、それはとても強度の高い語りになる。
その意味で、この企画は慎太郎作の中でも、かなり不愉快さがなく読める(もちろん、そこかしこに無理やりこじつけたように自分の話が出てくるのだが、ご愛嬌レベル。むしろかわいい)。
もともと、自分は慎太郎のまっすぐな肉体性は嫌いではないからなおさらかもしれないが、人々との思い出を通して沸き立つ香り、のようなものがとても美しい。
自己顕示欲が強い人間は、他人への愛を語らせろ。
この本からの一番の学び。 -
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天才、故の悲劇
YouTube大学で紹介されていたので、読んでみました。
一人称の視点で描かれた「俺」は、田中角栄自身であり、その生い立ちから最期までが小説として描かれています。
小説の題名通り「天才」ぶりが発揮され、パワフルに突き進む姿はブルドーザー!
事業家としても、議員としても、大臣としても、総理大臣としても、才覚が凄いです。
こんな政治家はもう出てこないだろうな。それが寂しいです。
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80歳を大きく超えた石原慎太郎と「新潮」の元編集者による対談。昔の文壇の思い出を語る。
文士、文壇。既に死語であり復活することもないだろう。昭和30年代頃を中心に文壇での交友を振り返る。小林秀雄、川端康成、大江健三郎、三島由紀夫などのビッグネームが普通に出てくるところがすごい。当然多くの人物は鬼籍に。
文壇を通じた交友。かなりの異端児だったであろう石原慎太郎だが朋友もあるし、意見の相違こそあれ決定的な仲違いはしない。
特に三島由紀夫に関しては辛辣な意見。石原慎太郎亡き後は三島に関するこのような評価は絶滅してしまうのだろう。
米軍機に銃撃された経験、相模湾に連合軍が上陸する場面、安保闘争