石原慎太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ロッキード事件での失脚により、表舞台から消えていった稀代の政治家『田中角栄』
その田中氏の半生を一人称語りで描いた本著。
後書にもあった通り、石原慎太郎は本著を執筆するに至って、改めて田中氏にまつわる様々な情報を集めた結果、改めて田中氏のことを『天才である』と語っていました。
類稀な先見の明により、近代日本の礎を築いた田中氏について、本著を読み進める中で魅力ある人物像にも触れることができたと思う。
それはもちろん、石原氏の文才があってこそでもあるとは思うが。
そして、ロッキード事件による失脚により、表舞台を後にすることになったが(真偽も定かではなく、未だ多くの謎に包まれてはいるが…)、もしそれらによる失脚がない世界線があるとするならば、どのような日本として現在に歩を進めていたのかは、大変興味深いと感じました。
そして、本著を通じてロッキード事件についての本や、石原慎太郎の他の著書も読んでみたいなーだと感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第1回文學界新人賞受賞作にして、第34回芥川賞受賞作。
表題作の「太陽の季節」を含め、「処刑の部屋」、「完全な遊戯」、「乾いた花」とどれも退廃的な若者の姿が描かれている(「ファンキー・ジャンプ」は、内容がよく分からず途中で読み止めてしまったため不明)。
表題作「太陽の季節」は津川竜哉と英子のboy meets girlだが、英子を玩具同然に扱うその関係は所謂純愛では当然ない。
だが最後、竜哉の「スポーツマンとしての彼の妙な気取り」で死んでしまった英子に対して、「竜哉の一番好きだった、いくら叩いても壊れない玩具を永久に奪った」と感じる竜哉の心境には、英子への愛着が感じられる。もちろんそこには英子の人権を貴ぶ意識は微塵もないが、竜哉にとっては紛うことなく愛であったのではないだろうか。
「処刑の部屋」は、克己の良治に対する失望と期待が、不確定性(良治が闘わなかったのは、腑抜けからくるものなのか、竹島のピストルのせいなのかという不確定性)を交えて描かれている点が面白かった。その後に壮絶なリンチが始まるが、これ以降はグロテスクな描写に圧倒されてしまった(のであまりちゃんと読み込めてないかもしれない)。
「完全な遊戯」はとうとう殺したかと思わせる一作。
精神疾患を抱えた女を犯し、女郎屋へ売り飛ばそうとした挙句に崖から落とすストーリーには共感も同情も全くできない。だが、「完全な遊戯」という題名にもあるように、これが男たちの間で100%遊戯であるという冷めた認識で統一されている。この点において、軽はずみで猟奇的な殺人が横行している現代で一読の価値があるように思える。
「乾いた花」は個人的には一番好きな作品だった。
村木は出所後の何も変わらぬ娑婆の生活に退屈を覚え、冴子は何不自由のない生活に退屈を覚えていて、その退屈を通じて二人はつながっていく。人には「何者かになりたい」という思いや「自分が世界をかき混ぜていく」という思いがあるものだが、彼らはその思いが大きすぎて飼い慣らせないのではないだろうか。晴らせぬ思いを抱えたまま生き生きと生きられずに腐りそうになるのを、大きな賭けで何とか防腐する。私にはその生き方がどこか愛おしく感じられた。
冴子の言う「人間て、なんでもっとまともな方法で、本当に生きられないんだろ」が正しく彼らの渇きなのだ。 -
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石原慎太郎『ある漢の生涯 安藤昇伝』幻冬舎文庫。
先日、著者が亡くなったばかりなので古い著作が文庫化されたのかと思ったら、昨年刊行された単行本の文庫化だった。
何故か一人称で語られる安藤昇の自伝風ノンフィクション。これでもかと言うデカイ活字で頁数の割りにはボリュームは無い。晩節を迎えた著者がかつて出会った安藤昇や花形敬に思いを馳せる不思議な作品。
安藤昇のことは、昔読んだ本田靖春の『疵 ―花形敬とその時代』で知っていたが、著者がこういうジャンルの作品を手掛けていたことに驚いた。
幼い時分から素行不良で、少年院から特攻隊員を志願し、大学に通いながら愚連隊を組織し、後に安藤組の組長、さらには俳優となった破天荒な人生。コンプライアンスだ、ハラスメントだと兎に角五月蝿い現代ではこのような生き方など到底無理で、実現するとすれば映画か小説の中だけだろう。
本体価格590円
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今月の文藝春秋に載っていた名作。評者も未完成ながら形破りの大作と評しており、社会への衝撃が実感できる。ボクサーの龍哉が湘南で英子を弄ぶ非倫理的な構成だが、愛をどう扱っていいかわからない初々しさ故の粗暴さや、非日常の開放感に溢れた舞台としての新鮮さは悲劇的かつ後味の悪い結末をも引っくり返す青年期特有の眩しさを感じさせるには十分である。特に、現代でも行き過ぎとも言える主人公らの道徳心は当時の保守的な社会からすれば衝撃的なものであっただろう。
賛否両論巻き起こったことは承知しているが、読んだ感想としては正直これくらいの表現は許容範囲ではないかと思った。石原の出世作であると共に太陽族として社会現象になるに相応しい破壊作だった。
2022/3/21