石原慎太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
政治的な立場については、賛否相半ばするが、ひとりの人間として、ひとりの男として、そしてひとりの愛国者として、石原慎太郎という人物に、深い敬愛の念を抱かされた。
著者は終章で福沢諭吉の言葉をふたつ引用している。
「立国は公にあらず、私なり」そして「独立の心無き者国を思うこと深切ならず」
まさにこの言葉を体現した人物が石原慎太郎という男であることを、力の籠ったこの回顧録が立証している。
印象的なエピソードが盛りだくさんで読んでいて全篇飽きさせないが、自らの備忘録としてふたつの箇所だけ引用しておきたい。
ひとつはレイモン・アロンから著者が直接聞いた言葉。
現代の若者に同情する。彼らは青春を青春としてとらえる大事な切っ掛けを、肉体的にも精神的にも持っていない。その第一は戦争だ。命の危険にさらされる極限的な状況がなくなってしまった。第二は戦争のあとの平和で、貧困がなくなってしまった。物をほしいとか、何かをしたいという願望、貧困こそが青春の必然的条件なのにそれがなくなってしまった。第三は、死に物狂いでぶつかって、血反吐を吐いても闘うような偉大な思想がなくなってしまった、と。
もうひとつは、靖国問題についての著者の深い認識。長くなるが肝に銘じておきたいので、引用しておく。
「靖国」問題は、日本人にとってはその「垂直の情念」をどう認識するかということであゆ。根本を言えばこの感覚を抜きにして何を論じても意味はないのだ。愛国心であれ、国靖かれという思いであれ、それらは今、水平的に日本に存在しているわけではない。長い歴史のなかで連綿と紡がれてきた日本人の意識の総和としてある。礎として斃れていった死者の存在抜きに、今生きている我々の価値観だけで国家民族の命運を決してはなるまいに。その慮りと畏怖が今の日本人にはなく、ある種の畏れの感覚を失うことがいかに致命的なことかを逆に今の日本は体現しつつある。
こういう認識を持った政治家が、どれだけいるのだろうか。
石原慎太郎亡き今、暗然たる思いを禁じ得ない。
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・「太陽の季節」の感想。最後の数ページ、怒涛の展開が見どころ。ブルックナーやマーラーの9番っぽい感じがして、なかなか面白かった。あ、それで終わりなんだ、でもやっぱそれで終わりか、っていう。さすがに死んで終わりってベタじゃねって思ってたら、ベタであった。終わり方も信長の逸話のオマージュのようで、著者はニヤニヤ笑いながら書いたに違いない、誇張された青春小説ってとこか。でも、誇張といえば純文学はどれも、誇張。あの漱石先生の「こころ」だって、トンデモ誇張だろう。あんな現実はないし、この本も同様に現実として感じられない。でも描写された心は現実的。それが文学の面白さのミソの一つなのか。この本を読んでそう思った。ちなみに主人公はクズで全体的に女性蔑視の精神を感じるが、そんな程度だろう。要は、青春とは世間でいう「クズ」であると、単刀直入に表現したかったんだろう。この著者が描きたかった青年が聖人であるべし、都知事の著書は道徳の教科書たるべしなどとは、私は最初から期待してない。
・「灰色の教室」はなかなか良い。最後はマトモな大人になっていくというか・・・、そう読むと、平凡な私は共感を抱ける。ただ、それは誤読かもしれぬ。あの終わり方は、青春と大人との葛藤が残っている、ということかもしれない。再度、だらしない青春に戻っていくという読み方もできるか。「割り切れぬもの」「あてのない怒り」って何だろう?一般的な感覚からすると運命への怒りや悲嘆だけど、そうじゃなくて文脈的には大人の「ルール」への怒りかね。そうだとするとまぁ、主人公は前途多難でスッキリしませんね!そこら辺が気持ち悪く和声進行を崩していて、現代アートらしいって考えれば正解でしょうか。つまり、カツヒコもまた1月後に自殺するんだろう。次は、これまでの延長線上で考えれば女を道連れにするとか、クズっぽくてどうだろう。そう考えるとまた、それはそれで笑える作品だ。
・「処刑の部屋」。前2作以上のクズが自業自得で不良たちに殺されるだけの話。テーマは同じで、青春(というかグレ)と大人の対立構造。グレを貫いて犯罪し放題、最期は自らもそのグレに滅ぼされる。 -
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やはりというか納得いうか、できる男はモテるし、そしてそれを昇華できるパワーもある、もー慎太郎さんスケベw
個人的に崇拝しておりますジェームス三木氏には到底及びませんが、自身の女性関係をも赤裸々に告白し、いや、これはどうしても自慢したかったのだろう、まあ漢ってそういうもんだろと尊敬と憧れとウラヤマ感を持ちつつ興味深く読ませていただきました。スケベでええやないですか。
弟さんのあのデカいブランデーグラスをもった『ゆうたろう』ではなく、裕次郎さんとの逸話、そして政治家時代、特に中川一郎氏の自死の謎が興味深く、一気読みでしたねこれは。
最後は『死』への想い。恐怖でもなく興味、彼の人生そのものが壮大な小説であり、一つの文学作品として完結できたと言えるのではないでしょうか。三島由紀夫の『豊饒の海』がふと過る・・・あゝ素晴らしい。
そして私は今宵、馬鹿でかいブランデーグラスを揺らしながらしこたま酔いましょうかね。 -
Posted by ブクログ
都知事を辞め、暴走老人と言われながらも最後の国政に打って出ていた頃の石原さんが、インタビュー等で語っていた事をを凝縮した1冊。当時まだ若かった私にとって、石原慎太郎は怖い昭和の爺さん、との印象しかなく、人間が持つべき絶対的な価値観について語る石原さんのカッコ良さを感じることができなかった。
アラフォーとなった今、「人間の人間としての存在そのものに関わる価値、時代や文明文化を貫き超えて垂直に、いや鉛直に繋がる価値。」について自然と考えることも多く、それについて「人間(特に日本人)の堕落」を軸に時にくどくも切れ味鋭い言葉で語る石原さんの男らしさを感じた。
15年前に書かれたものであるが、三島由紀夫の予言のようにじわじわと迫るものを感じた。 -
Posted by ブクログ
政治家としても文学者としても高く評価する気にはなれないんだけど、時代を生き抜いて生き抜いて死んでいった1人のおっちゃんとしては、親しみに似た気持ちが彼に対してあるのを自覚する。ひたすらチャーミングなんだよなこの本に出てくる石原慎太郎というおっさんは。「海蛇がホテルの部屋に出たらウケるよなーただし俺の部屋は除く」みたいなことマジメに考えてるんだもん。なにかと幽霊みたいのに遭遇してそのつどクソ真面目にビビらされてるし。
かわいげのあるおっさんの与太話なんだよ。ヨットに乗って、海に潜って、山に登ってさ。あんたやりたいことやって死んだんだろうね、と声をかけてやって、おもしれーホラ話をありがとよっつって酒の一つでも飲んでやりたくなるよね。
話盛ってない?って感じるエピソードも多少はあったけど、なんとなく弟を看取った際のことは、このおっさんが感じたままを100%に近い純度で書いたんだろうなと思った。そのことはよく伝わった。