梯久美子のレビュー一覧
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ネタバレ目次より
小林多喜二 恋と闘争/近松秋江 「情痴」の人/三浦綾子 「氷点」と夫婦のきずな/中島敦 ぬくもりを求めて/原民喜 「死と愛と孤独」の自画像/鈴木しづ子 性と生のうたびと/梶井基次郎 夭折作家の恋/中城ふみ子 恋と死のうた/寺田寅彦 三人の妻/八木重吉 素朴なこころ/宮修二 戦場からの手紙/吉野せい 相克と和解
どの作家の愛と死と文学もそれぞれの時代や周囲の人々に、幾多の困難や喜びに彩られ魅力的で引き込まれましたが、特に心に残ったのは奇しくもともにクリスチャンだった三浦綾子、八木重吉の愛と死です。
二人とも既知の作家(詩人)であったこともあると思います。(初めて名前を知った作家も多か -
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原民喜の存在感と遠藤周作の存在感。
自死を選びながらも、残された人や未来に明るい希望を確信し託した原民喜。
原民喜として、その生を全うしたのだと思います。
イエスがイエスの生を生き、十字架にかかったように。
久しぶりに一気読みした一冊。
余計な解釈を加える事なく、最後に
「現在の世相と安易に重ねることもまた慎むべきであろうが、
悲しみを十分に悲しみつくさず、嘆きを置き去りにして前に進むことが、社会にも、個人の精神にも、ある空洞を生んでしまうことに、大きな震災をへて私たちはようやく気づきはじめているように思う。
個人の発する弱く小さな声が、意外なほど遠くまで届くこと、そしてそれこそが文 -
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[青春の必死]戦時中の女性の遺品の「美しさ」に心奪われた著者は、先の戦争において男性の影に隠れてしまいがちな女性の生活に興味を覚える。その結果、緒方貞子や赤木春恵らに対して行われた、戦時中に青春を送った経験を持つ5名の女性とのインタビューを基にした作品です。著者は、本書の執筆をきっかけとして、女性と戦争というテーマで語ることも多くなったという梯久美子。
例えば「銃後」という言葉に代表されるように、「男性を前面に押し出した上での」戦時下の女性というテーマの作品は過去に多く著されてきたと思うのですが、上記の「」部分をなくした女性の実像に迫ったという点で大変に意義深い作品だと思います。どなたのエ -
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児玉清、舘野和泉、梁石日、福原義春、中村メイコ、山田洋次、倉本聰、五木寛之、角野栄子、辻村寿三郎
という10人の著名人たちが5~10歳で経験したあの終戦の年を語っています。いずれも子供の眼でありながらしっかりと世の中を見てきた体験談で貴重な記録です。児玉清が語っている<疎開先で東京空襲の被害に合った子供たちがお国に役立ったとして万歳を叫ぶ、そして被害が無かった子供が項垂れた姿>は悲惨な実話でした。メイコが人気子役として潜水艦・軍用機であらゆる海外各地の激戦地に慰問に行った際に、「この人たちは帰ってこない人たちだと知っていた・・・。」父の作家・中村正常氏の反戦姿勢も印象に残ります。メイコは今で言 -
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ネタバレ『昭和二十年夏、僕は兵士だった』は、現在著名な5名の男性の戦時中の体験談だったが、こちらは現在著名な5名の女性の体験談。それも、兵士の母、妻、娘という立場ではなく、当時10代20代の独身だった方たち。
著者も書かれているけど、銃後の生活の話なので、戦地の体験談と違い、目を覆いたくなるような無残な場面は少ない。
それでもやはり、戦争の恐ろしさはヒシヒシと感じる。
むしろ、自分は今のままの制度であるなら、性別的にも年齢的にも戦地へ行く事はまずないので、成る程、ひとたび戦争が起これば、自分たちの生活はこうなるのだと、その恐ろしさをより具体的に感じた。
当時NHKのアナウンサーをしていた -
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戦争ものの本をまた一冊読んだ。この本は、最前線の戦争ではなく、戦争の時代を若い女性たちはどう生きたのかを書いた本だった。
近藤富枝さん(作家)・吉沢久子さん(評論家)・赤木春恵さん(女優)
緒方貞子さん(JICA理事長)・吉武輝子さん(評論家)以上、5人の女性たちの若いころ、無名の一庶民として自分が生き抜いた戦争の時代の記憶を語っている。物語ではなく、インタビュー形式の語り口調である。戦争でピリピリしていた当時の社会がリアルに感じられた。その中にあって、若い女性たちはなんと生き生きと自分の人生を生きていたことだろう。
ポツダム宣言がなされ戦争が終了したことが告げられた日、近藤氏の叔母は、家 -
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普段は「子供のアニメ」としてしか見ていないアンパンマンの生みの親、やなせたかしの生涯。
もう見ることもなくなって自分とは関わりのない物になってしまったけど、改めてやなせたかしの人生とアンパンマンが生まれるまでの経緯などが知れたのは良かった。
もう今となっては戦争の語り部もほとんどいないから、こうやって著名人として戦争が記録になって語られるのはとても大切なことだと思う。
戦争を経験したからこそ生まれたアンパンマン。やなせたかしがアンパンマンを生んだ意義を、経緯を知ることがきっと後の世代の自分達がやるべきことなんだろうなと思った。
さらにその上で、子供たちにアンパンマンを見せることが必要だなと -
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自分の顔を食べさせる前代未聞のヒーロー、アンパンマンには作者の祈りと哲学が込められていた。家族との死別、胸がつぶれるほどのさびしさに耐えた幼少期、戦争の傷、下積みの苦しさと無名であることの悲しみ―。それでも生きることを肯定し、光にむかって歩き続けたやなせたかしの生涯を、評伝の名手が綴る感動作。【目次】序章 ふたつの別れ
1 父と母 2 伯父の家 3 青春の日々
4 軍隊へ 5 戦地 6 敗戦 7 弟の死
8 新しい出発 9 韋駄天おのぶ
10 ふたたび東京へ 11 転機
12 アンパンマン誕生 13 『詩とメルヘン』創刊
14 アニメになったアンパンマン
15 絶望のとなりに