【感想・ネタバレ】戦争ミュージアム 記憶の回路をつなぐのレビュー

あらすじ

日本が当事国であった戦争を知る世代が少なくなるなか,忘れてはならない記録と記憶の継承を志す場があり,人がいる.戦争の時代を生きた人間を描くノンフィクションを多数ものしてきた作家が,各地の平和のための博物館を訪ね,そこで触れた土地の歴史と人びとの語りを伝える.未来への祈りをこめた,今と地続きの過去への旅.

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

戦跡巡りの一助に。定番どころでなく、変わり種の戦争ミュージアムが多数紹介されていて興味深い。ただ戦争に関する施設を紹介するだけでなく、戦後の引き上げに纏わるミュージアムや間接的に戦争に関わる事を扱ったミュージアムもあり、一生に一度は行って見たいと感じた。
コラムとしてインターネット上の戦争アーカイブ紹介もあり、使える情報が多い。

0
2025年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

国の政策だからとやみくもに従うのではなく、日々の生活の中で培った倫理観に照らして、その是非を判断することの大切さを満蒙開拓の歴史を教えてくれる。165ページ満蒙開拓平和記念館

まさに今、やみくもにしたがうな、抗え、と日々思う,まさに今。

石垣りんの詩、弔詞 が引かれている。東京大空襲で亡くなった職場の同僚をうたった作品。
あなたはいま、
どのような眠りを、
眠っているのだろうか。
そして私はどのように、
さめているというのか。

戦争の記憶が遠ざかるとき、
戦争がまた
私たちに近づく
そうでなければ良い。


たしか新宿にある帰還者たちの記憶ミュージアムで、日本軍が使っていた手榴弾が陶器製であったことを初めて知った。シベリアや中央アジア,ロシア各地に行かされた抑留兵たちの極寒地での薄い衣服,手作りのスプーン、貧しい国が戦争を仕掛けいたずらに継続し陶器製の手榴弾を配給していたのだ。ものは雄弁に語る,実物は嘘をつかない。

本書で取り上げられた戦争ミュージアム
大久野島毒ガス資料館、
予科練平和記念館、
戦没画学生慰霊美術館無言館、
周南市回天記念館、
対馬丸記念館、
象山地下壕、
東京大空襲・戦災資料センター、
八重山平和記念館、
原爆の図丸木美術館、
長崎原爆資料館、
稚内市樺太記念館、
満蒙開拓平和記念館、
舞鶴引揚記念館、
都立第五福竜丸展示館、

コラムとして戦跡硫黄島,サイパン島、
沖縄地上戦、サハリン樺太国境、
後半のコラムとして、インターネットで見られる戦争アーカイブ、
中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
NHK戦争証言アーカイブス
アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館

呉市大和ミュージアム

八重山の戦争マラリア,地元民をマラリア有病地への強制移動家畜や家屋の収奪、
昭和11年完成の巨大な稚内港北防波堤ドーム
などは恥ずかしながら全く知らなかった。海外で行ったことも,自国内でまたは自国民に、または自軍において起こったことを隠蔽しようとする体質が、全体に覆われて戦後80年たった今も変わらず,いや,先祖帰りするかのごとく隠蔽が罷り通り恥ずかしくもなんともない人らが国や政財界やメディアの中枢にいる国だな,と思う。
戦争の記憶まぎれもなく,ものが語る、ものの持つ意味の大きさ、これらのミュージアムは敗戦被害の視点だけではなく内に外に加害の側面からもをそらさない、とこれらのミュージアムの立ち位置を語る著者への信頼感。あとがきの、これも,隠蔽秘匿され亡くなった兵士乗組員が浮かばれない軽巡洋艦矢矧撃沈のことも,最後の最後の1ページまで重く惹きつけられる一冊。これが,通販生活の誌面に連載されていたとは,なんとも素晴らしい。

0
2025年05月18日

Posted by ブクログ


audible23冊目。

旅先でよく、史跡や資料館等に出向きます。
まさに、この本のいう「戦争ミュージアム」です。
むしろ、戦争ミュージアム目的で旅先を選ぶこともあります。
年末年始に広島に行ったため、その前にこの本を読みました。

令和の時代にあっては、10代も70代も、戦争を知りません。
争ミュージアムでは、当事者の証言や膨大な資料を通して、人々の記憶を後世に伝えてくれます。
現地に赴くことで、本やホームページだけでは感じ取れないことを、土地の記憶が私たちに教えてくれます。

読んで良かったです。続編を是非、希望したいです。
この本に出てくる場所のうち5箇所ほど訪れたことがありますが、さらに学びが深まりました。
知らなかった場所もあるし、是非、実際に足を運んでみたいです。

0
2025年01月03日

Posted by ブクログ

 日本には戦争にまつわる記念館・ミュージアムがある。しかし、戦争という負の歴史を記録と記憶の継承を取り組むミュージアムがある一方で、残念ながらアジア・太平洋戦争は大東和共栄圏の開放・産業発展のために正しかったとする記念館も含まれる。
 本書は、戦争の時代を生きた人間を描くノンフィクションを多数残してきた梯(かけはし)久美子氏が、全国各地を行脚し、各地の平和のための博物館や資料館を訪ね、そこで触れた土地の歴史と人々の語りについて14施設の概要を伝える。安保3文書、南西諸島の軍事要塞化などきな臭い匂いが日本全体に充満していく中で、過去の歴史が今と地続きとなっている過去の旅へ誘う。紹介される1ヶ所目の記念館は、今年2024年2月に私自身が訪れ、元高校教師の山内正之さんにガイドして頂いた大久野島毒ガス資料館である。日中戦争で使用された毒ガスの加害の歴史を伝え、資料館発展させ、今もガイドを続ける山内正之さんらの粘り強い活動に敬意を表する。

0
2024年12月22日

Posted by ブクログ

日本各地の第二次大戦に関する資料館、記念館等を巡り、そのミュージアムの紹介と大戦当時の状況を取材したノンフィクション。
ひとつひとつの章は短いながらも、語られていることの内容の濃さは特筆。知らない施設が多かったが、全ての場所に行ってみたくなった。あとがきで筆者が「場所の持つ歴史性」という言葉を使っていたが、施設のある場所は展示内容の直接の場所ではなかったりするが、それでもなぜそこに施設がある理由が分かってくる。それを知るのも、この本の大事な部分。

0
2024年11月22日

Posted by ブクログ

戦争の時代を生きた人々の群像を描き出してきたノンフィクションの名手が、各地に残される戦争の記憶を紡ぐ記念館、博物館、美術館などを探訪する一冊。どの一章も読み応えがありますが、予科練平和記念館、戦没学生慰霊美術館、周南市回天記念館、原爆の図丸木美術館、長崎原爆資料館の旅の記録が圧巻。特攻隊、回天など、太平洋戦争の最中、この日本という国は、兵士を消耗品、それも極めて安価に見積もった消耗品として扱っていたことが改めてわかる。なぜだったのか?どういう精神状態だったのか?
戦争は人を殺すことだ、戦闘員も戦闘員以外も大量に。
世界が右傾化し、ウクライナ、ガザなどで戦火が絶えない今、油断すれば、また若者が命を失う悲劇が訪れかねない。重苦しさを残す一冊でした。

0
2024年11月13日

Posted by ブクログ

当事者が減少する中、やはりこういった戦争の記憶、記録を伝える資料館の存在は大切。
戦記の記録も大事だが、一作品でなく長く記憶を継承するミュージアムを訪れ、作家の印象の記録。下手な戦記より余程説得力がある。

日本人として、これらのミュージアムを訪れ自分のアタマで考えてみたいと思う。

変に彫像で残すより客観的な資料を閲覧するミュージアムは、歴史を後世が客観的に検証するためにも必要な施設であろう。

0
2024年09月22日

Posted by ブクログ

梯久美子さんの著書を読むのはこれで4冊目。『カタログハウス』2020年盛夏号から2024年初春号に連載された「シリーズ 戦争を忘れない」を補筆し書籍化した本書。亡き両親を含め、自分は戦争の時代を偶然生きながらえたと知る世代が、何よりも望んでいたことは平和。子どもの頃はなぜそんなに当たり前のことをわざわざ願うのか?とさえ思っていたが、ひとの記憶は残さなければ消えてしまうのだ。私たちにできることは遺された記憶を次世代に繋ぐこと。本書はそのための素晴らしいガイドブック。

0
2024年09月18日

Posted by ブクログ

『戦争ミュージアム』を網羅しているのかと思っていたら、そうではなかった。あと『通販生活』という、読んだことないけど誌名から受ける印象から、この雑誌で連載していたということに驚いた。

0
2025年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

__いま生きている人だけの声を聞き、今日と明日のことのみを考えるとき、国も人も判断を誤ることがある。つねに過去をかえりみながら進むことが必要なのだ。

戦争の歴史というと、

広島の平和記念資料館と、沖縄のひめゆりの塔、が、修学旅行などで行ったこともあったりで身近でしたが、それ以上知る機会や知ろうという考えが及んでいませんでした。

それぞれの地で、それぞれの戦争の経験があることを改めて思い知らされました。

知らない歴史、というよりは、ちょっと知っている、聴いたことあるけれども、知ろうとしない事実。

像山地下壕は初耳でした。なんだか架空のお話みたいだと思いました。

あとは、初めの毒ガス資料館。

化学兵器の廃棄などへの予算が今も計上されているということは、現代の私たちにも無関係ではないお話。

核兵器関連は、長崎の資料館、戦後ではあるけれども水爆関連の第五福竜丸。

若者、子どもへの戦争の生々しい被害に心が痛む、周南市回天記念館、対馬丸記念館。

そのほか民間人と他国との関わり合いが印象的だった、稚内市樺太記念館。

戦後にも尾を引く戦争の悲惨さ、舞鶴引揚記念館。

すべてに一喜一憂していたら気持ちが持たない、ということもありますが、

自分たちの社会、未来をつくっていく責任を果たすためにも、過去の教訓は知らないふりはできないな、と。

負の遺産はもういらない。増やすべきでなない。

来年には終戦から80年となり、戦争体験者の高齢化と次世代にどう教訓を伝え続けていくか、という課題が多く取り上げられていますが、

たくさんの資料、思いは、収集され、編纂され続けている。

それを今に生きる一人一人が今の時代のなか、社会のなかで自分なりに受け取り続けていくしかないのだろうと思う。

その一つの実践として、著者の文章があるようにも思いました。ありがとうございます。

0
2024年12月21日

Posted by ブクログ

私の趣味は博物館めぐりである。大抵は考古学博物館ではあるが、戦争・平和博物館も多くまわっている。わりとたくさんまわっていると思っていたけれども、此処に紹介された14の博物館のうち、行ったことのあるのはたった3博物館だった。ショックなのはそこではなくて、行ったことがあるのに、書いていることのほとんどを、私は初めて「気がついた」のである。

梯久美子(かけはしくみこ)さんは、私の尊敬する数少ないノンフィクション作家である。本書はミュージアムガイドではない。詳しいアクセスも入場料金も記載がない。ノンフィクションなのである。多くの遺物の中から、何を選びとって、どう記すか。それが作家の価値を決める。

長崎原爆資料館は、入ったはずなのに、おそらく時間がなくてあっという間に出たのだろう、100%覚えていなかった。

対馬丸記念館のことについては、昨年6月にガイドブックを取り上げてレビューした。遺された外間姉妹の2つのランドセルについて、私には全く記憶がなかった。別の疎開船にあった為に返ってきたランドセルを、母親は押し入れにしまい、33回忌が済むまで誰にも見せなかったという。沈没後も厳しい箝口令のために、親たちは長い間、子の生死を知ることも叶わず、霊を弔うこともできなかったという。「亡くなってなお、子供たちは国策の犠牲であり続けた」‥‥こういう視点は私にはなかった。

舞鶴引揚記念館は、2009年の夏に行った。紙が入手できない中、白樺の皮をはがし、空き缶で作ったペン先を使って書いた白樺日誌は一応見ていたが、いかに苦労して書いたか、どんなに奇跡的に持って帰れたか、については本書で初めて想いを馳せた。その他、初めて知った遺物多数。記念館裏手の丘にある展望台からは、復元された出迎えのための桟橋が見下ろすことができるとは初めて知った。

もちろん、ここで扱われなかった戦争ミュージアムも多い(広島平和祈念資料館さえない)。それは本書の瑕疵ではない。体験者や学芸員から聞き取りが出来れば真摯に聴くこと。一つの遺物から多くの物語を想像すること。戦争をもたらしたものへ怒り、犠牲になった人たちに寄り添うこと。そういう姿勢を培う本だと思う。

0
2024年11月12日

Posted by ブクログ

筆者の行動力に感心した。8月に平和を思うときに読むと良い。現地に行けばなお良いが、時間とお金との相談だ。

0
2024年08月30日

Posted by ブクログ

<目次>


<内容>
大久野島の毒ガス資料館から東京の第五福竜丸展示館まで、14館の戦争ミュージアムを紹介した本。雑誌「通販生活」連載の記事をまとめたもの。梯さんは、戦争などのノンフィクションを多く手掛ける人。この資料館紹介もロケだけでなく、きちんと裏付け資料も載せているし、安心して読めます。

0
2024年07月31日

Posted by ブクログ

貴重な本ではあるが、各ミュージアムの説明が簡潔過ぎる気がします。また、私もそれほど知ってるわけではないですが、広島平和記念資料館がなく、まあそれでも、あとがきで言い訳めいたものが書かれてありましたので、まあ良しとしても、丸木位里と俊さんの原爆の図があって、何故?沖縄戦の図はないのか、疑問を抱きました。なんか物足りなさが残る読後感でした。

0
2024年10月06日

「雑学・エンタメ」ランキング