【感想・ネタバレ】戦争ミュージアム 記憶の回路をつなぐのレビュー

あらすじ

日本が当事国であった戦争を知る世代が少なくなるなか,忘れてはならない記録と記憶の継承を志す場があり,人がいる.戦争の時代を生きた人間を描くノンフィクションを多数ものしてきた作家が,各地の平和のための博物館を訪ね,そこで触れた土地の歴史と人びとの語りを伝える.未来への祈りをこめた,今と地続きの過去への旅.

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

国の政策だからとやみくもに従うのではなく、日々の生活の中で培った倫理観に照らして、その是非を判断することの大切さを満蒙開拓の歴史を教えてくれる。165ページ満蒙開拓平和記念館

まさに今、やみくもにしたがうな、抗え、と日々思う,まさに今。

石垣りんの詩、弔詞 が引かれている。東京大空襲で亡くなった職場の同僚をうたった作品。
あなたはいま、
どのような眠りを、
眠っているのだろうか。
そして私はどのように、
さめているというのか。

戦争の記憶が遠ざかるとき、
戦争がまた
私たちに近づく
そうでなければ良い。


たしか新宿にある帰還者たちの記憶ミュージアムで、日本軍が使っていた手榴弾が陶器製であったことを初めて知った。シベリアや中央アジア,ロシア各地に行かされた抑留兵たちの極寒地での薄い衣服,手作りのスプーン、貧しい国が戦争を仕掛けいたずらに継続し陶器製の手榴弾を配給していたのだ。ものは雄弁に語る,実物は嘘をつかない。

本書で取り上げられた戦争ミュージアム
大久野島毒ガス資料館、
予科練平和記念館、
戦没画学生慰霊美術館無言館、
周南市回天記念館、
対馬丸記念館、
象山地下壕、
東京大空襲・戦災資料センター、
八重山平和記念館、
原爆の図丸木美術館、
長崎原爆資料館、
稚内市樺太記念館、
満蒙開拓平和記念館、
舞鶴引揚記念館、
都立第五福竜丸展示館、

コラムとして戦跡硫黄島,サイパン島、
沖縄地上戦、サハリン樺太国境、
後半のコラムとして、インターネットで見られる戦争アーカイブ、
中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター
NHK戦争証言アーカイブス
アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館

呉市大和ミュージアム

八重山の戦争マラリア,地元民をマラリア有病地への強制移動家畜や家屋の収奪、
昭和11年完成の巨大な稚内港北防波堤ドーム
などは恥ずかしながら全く知らなかった。海外で行ったことも,自国内でまたは自国民に、または自軍において起こったことを隠蔽しようとする体質が、全体に覆われて戦後80年たった今も変わらず,いや,先祖帰りするかのごとく隠蔽が罷り通り恥ずかしくもなんともない人らが国や政財界やメディアの中枢にいる国だな,と思う。
戦争の記憶まぎれもなく,ものが語る、ものの持つ意味の大きさ、これらのミュージアムは敗戦被害の視点だけではなく内に外に加害の側面からもをそらさない、とこれらのミュージアムの立ち位置を語る著者への信頼感。あとがきの、これも,隠蔽秘匿され亡くなった兵士乗組員が浮かばれない軽巡洋艦矢矧撃沈のことも,最後の最後の1ページまで重く惹きつけられる一冊。これが,通販生活の誌面に連載されていたとは,なんとも素晴らしい。

0
2025年05月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

__いま生きている人だけの声を聞き、今日と明日のことのみを考えるとき、国も人も判断を誤ることがある。つねに過去をかえりみながら進むことが必要なのだ。

戦争の歴史というと、

広島の平和記念資料館と、沖縄のひめゆりの塔、が、修学旅行などで行ったこともあったりで身近でしたが、それ以上知る機会や知ろうという考えが及んでいませんでした。

それぞれの地で、それぞれの戦争の経験があることを改めて思い知らされました。

知らない歴史、というよりは、ちょっと知っている、聴いたことあるけれども、知ろうとしない事実。

像山地下壕は初耳でした。なんだか架空のお話みたいだと思いました。

あとは、初めの毒ガス資料館。

化学兵器の廃棄などへの予算が今も計上されているということは、現代の私たちにも無関係ではないお話。

核兵器関連は、長崎の資料館、戦後ではあるけれども水爆関連の第五福竜丸。

若者、子どもへの戦争の生々しい被害に心が痛む、周南市回天記念館、対馬丸記念館。

そのほか民間人と他国との関わり合いが印象的だった、稚内市樺太記念館。

戦後にも尾を引く戦争の悲惨さ、舞鶴引揚記念館。

すべてに一喜一憂していたら気持ちが持たない、ということもありますが、

自分たちの社会、未来をつくっていく責任を果たすためにも、過去の教訓は知らないふりはできないな、と。

負の遺産はもういらない。増やすべきでなない。

来年には終戦から80年となり、戦争体験者の高齢化と次世代にどう教訓を伝え続けていくか、という課題が多く取り上げられていますが、

たくさんの資料、思いは、収集され、編纂され続けている。

それを今に生きる一人一人が今の時代のなか、社会のなかで自分なりに受け取り続けていくしかないのだろうと思う。

その一つの実践として、著者の文章があるようにも思いました。ありがとうございます。

0
2024年12月21日

「雑学・エンタメ」ランキング