梯久美子のレビュー一覧
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筆者の梯久美子は、本書のあとがきに「"書く女"とその父」という題名をつけている。その題名の通り、本書は、9名の、比較的活動時期の古い、従って、既に亡くなられている女性作家とその父親との物語を描いたものである。執筆の動機について、筆者は「女性がものを書くとはどういうことか、ということに、私は長く関心をもってきた」と書いている。これら9人の女性作家たちが、ものを書くようになったこと、あるいは、書いている中身、に父親がどのように影響を与えているかを考える、すなわち、「娘と父の関係を通して、新たな側面からこのテーマについて考える」ことが狙いであったということだ。
それぞれの女性作家 -
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サハリン、樺太、サガレンいろいろな呼び方がある。歴史的には、幕末の日・ロ雑居地状態から、1875年の樺太千島交換条約によりロシア領に、1905年のポーツマス条約により北緯50度以南は日本領に、そして太平洋戦争後、同50度以南は日ロ間に平和条約が結ばれていないため未帰属状態で現在に至っている。
偶然だが、本書を読む少し前に、林芙美子の紀行エッセイを読んだのだが、芙美子も戦前に樺太を訪れ、鉄道旅をしていた。本書第1部は、著者の鉄道旅プラス廃線探索なのだが、主要線はそのままなのだからある意味当然だが、主に芙美子の足跡を辿った旅となっている。
すごく面白いなあと思ったのは、芙美子は途中駅の白浦 -
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日経新聞に連載された9人の女性作家たちの父との関係についてまとめた本。綿密な取材で、彼女らが父をどうとらえたか、深掘りしながら鋭く推察している。
厳しい時代に生きた父への尊敬、愛情の念もあれば、憤り、悔恨、葛藤といった負の感情もある。それらを通して感じたのは、「書く女」たちのしなやかさと強さだ。それに対比して、男たちの身勝手さ、浅はかさも伝わってきた。
修道女として生きた渡辺和子は、二・二六事件で、父親が射殺される瞬間を目前で見たが、泣かなかった。軍人の子として凛とした姿勢を貫いた。
石垣りんは、半身不随となり4人目の妻に甘えて暮らす父親への嫌悪の中、窮乏した一家6人を養うため、定年まで働き続 -
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なんと重いテーマの父娘の物語か。
父も、娘も、更に、母も、夫も、それぞれの葛藤を抱えている。 それが故なのか、九人の娘たちは、" 書く人 " となる。
書かざるおえない何かを深読みする力は、私にはないが、重く影をさすあの時代・戦争について考えさせられた。
そして、改めて、茨木のり子が好き、と想う。
彼女の夫は、『茨木の父と同様、開明的な人物で、家庭に妻を家庭に閉じ込めることをしなかった。』と、ある。 夫も父も、よき理解者であったよう。
気が滅入るような壮絶な人生を歩む娘たちが多いなか、読んでいて、心が和む。
そして、我が身を想う。
頑固で短気だった我が父 -
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所謂「銃後」であった女性たちの証言。
取材された当時(もう亡くなられた方ばかりになってしまったが)、それぞれの分野で名を成した方ばかりであるためか、裕福な家庭に生まれた方ばかりのためか、予想より悲惨ではないな、と緒方貞子さんまでは思っていた。
が、最後の吉武輝子さんでガツンときた。
多分、この本を読んだ人はみんなそうなんじゃないか。
想像を絶するほどの経験。奪われたのは肉体ではなく「幸せになろうとする意志」だった、と。この壮絶な体験が吉武さんの人生にどれだけ大きな影響を及ぼしたかと思う。
著者がつらい経験をプラスに転化できたように見えると吉武さんに言ったあとの言葉も忘れ難い。
戦争中に行った教 -
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作品を読んだことのある人、作品を読んではいないが名前や代表作は知っている人の中、唯一知らなかったのが近松秋江。ちょっと前の日本の私小説作家というと葛西善蔵とか貧困を赤裸々に描く人が多い印象だったが、この人は妻や恋人に対し、ストーカー行為を繰り返し、それを小説として書いたというんだからたまげた。
現代だったらちょっとあり得ない。女性のプライバシーや人権に全く配慮してないし。(この時代の男は大抵そうだっただろうけど。)愛というより、妄執。田山花袋なんかもそうだけど、気持ち悪い。しかし、男子たるもの、という考えが当たり前だった時代に、妻に逃げられて追いかけ回して愛想つかされてというのを書いて、「滑稽 -
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原民喜と言えば、「夏の花」で「原爆文学」。そんな貧弱な文学史的知識しか持たず、国語の教科書にほんの少し抜粋されていた文章しか読んだことがなかった。この評伝を読んで初めて、ああ、こういう人だったのか、こんな孤独な魂の持ち主だったのかと、一人の人として目の前に現れてくる気がした。
以前著者が小林多喜二について書いていたときも同様のことを思った。教科書の平板な一行だけの記述の背後で、失われていくその人の切実な人生を、梯さんは丁寧な取材でよみがえらせ、そっと目の前に差し出してくれる。圧巻の傑作「狂うひと」とはまた違い、静かな悲しみをたたえている一冊だ。
原民喜が自死を選んでいて、しかもそれが鉄道自