梯久美子のレビュー一覧
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なんと重いテーマの父娘の物語か。
父も、娘も、更に、母も、夫も、それぞれの葛藤を抱えている。 それが故なのか、九人の娘たちは、" 書く人 " となる。
書かざるおえない何かを深読みする力は、私にはないが、重く影をさすあの時代・戦争について考えさせられた。
そして、改めて、茨木のり子が好き、と想う。
彼女の夫は、『茨木の父と同様、開明的な人物で、家庭に妻を家庭に閉じ込めることをしなかった。』と、ある。 夫も父も、よき理解者であったよう。
気が滅入るような壮絶な人生を歩む娘たちが多いなか、読んでいて、心が和む。
そして、我が身を想う。
頑固で短気だった我が父 -
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衝撃、慟哭、天を仰ぐ内容がずらりと並ぶ内容ばかりだった。
あえて、そういった方々ばかりちょすしたのかと思うほどに。
それが陽のサイド,陰のサイド的には、こういった日本人が日本を作り上げてきたともいうべき感慨。
良くも悪くも。
最もすべての日本人は言うまでもなく、女性作家すべてがこのように父親の血、空気もろもろを受け継ぎ、懊悩し、自らの生き方を決めていったとも思えないが。
昭和、平成、令和と日本は変容していっている・・良くも悪くも。
しかし渡辺和子氏の父☆
~戦犯の一人一人の物語の重さを殆ど含有しているような番館迫る、胸のつぶれるような内容だった。
しかし、戦犯とならないで成功し、ぬるっと絹 -
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所謂「銃後」であった女性たちの証言。
取材された当時(もう亡くなられた方ばかりになってしまったが)、それぞれの分野で名を成した方ばかりであるためか、裕福な家庭に生まれた方ばかりのためか、予想より悲惨ではないな、と緒方貞子さんまでは思っていた。
が、最後の吉武輝子さんでガツンときた。
多分、この本を読んだ人はみんなそうなんじゃないか。
想像を絶するほどの経験。奪われたのは肉体ではなく「幸せになろうとする意志」だった、と。この壮絶な体験が吉武さんの人生にどれだけ大きな影響を及ぼしたかと思う。
著者がつらい経験をプラスに転化できたように見えると吉武さんに言ったあとの言葉も忘れ難い。
戦争中に行った教 -
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作品を読んだことのある人、作品を読んではいないが名前や代表作は知っている人の中、唯一知らなかったのが近松秋江。ちょっと前の日本の私小説作家というと葛西善蔵とか貧困を赤裸々に描く人が多い印象だったが、この人は妻や恋人に対し、ストーカー行為を繰り返し、それを小説として書いたというんだからたまげた。
現代だったらちょっとあり得ない。女性のプライバシーや人権に全く配慮してないし。(この時代の男は大抵そうだっただろうけど。)愛というより、妄執。田山花袋なんかもそうだけど、気持ち悪い。しかし、男子たるもの、という考えが当たり前だった時代に、妻に逃げられて追いかけ回して愛想つかされてというのを書いて、「滑稽 -
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原民喜と言えば、「夏の花」で「原爆文学」。そんな貧弱な文学史的知識しか持たず、国語の教科書にほんの少し抜粋されていた文章しか読んだことがなかった。この評伝を読んで初めて、ああ、こういう人だったのか、こんな孤独な魂の持ち主だったのかと、一人の人として目の前に現れてくる気がした。
以前著者が小林多喜二について書いていたときも同様のことを思った。教科書の平板な一行だけの記述の背後で、失われていくその人の切実な人生を、梯さんは丁寧な取材でよみがえらせ、そっと目の前に差し出してくれる。圧巻の傑作「狂うひと」とはまた違い、静かな悲しみをたたえている一冊だ。
原民喜が自死を選んでいて、しかもそれが鉄道自 -
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「狂うひと」がとてもよかったので、梯久美子さんの未読の著作をさかのぼって読んでいこうと思い、まずこれを。
兵士として敗戦の日を迎え、戦後の人生を生き抜き、それぞれの世界で一流となった方たちへの聞き書き。戦時中の体験はどの方も壮絶で、つくづく軍隊というものの恐ろしさを痛感させられる。それだけでも充分本として成立しただろうが、戦後をどう生きたかということにも多く筆が割かれていて、そこがとても良かった。
当然ながら、置かれた状況は異なるし、戦後の歩みも違うわけだが、戦争で死んでいった人たちのことをずっと胸に抱いている点は共通している。生き残ったこと、自分が生きていることの意味を問い続けずにはいら -
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出版されたのが、7年前。私が読もうと思ったのは、文庫になってから。もっと早く読めばよかった。三國連太郎さん、水木しげるさんがご存命のうちに。だから、どうだってこともないんだけれど。
金子兜太さんも、大塚初重さんも、池田武邦さんもお元気でいらっしゃるのが素晴らしい。
それはそうなのだが、兵士として戦った方が、本当に少なくなってきた。
そして今の日本の進む方向。
生きた方の話を聞く、それが無理なら、書籍や映像になったものからしっかり知る。
そこからリアルに想像する。
それしかないような気がする。
国のために戦うことがとてもカッコいいと思ってやまない人たちは、こんな本も読まないんだろうな。