斎藤栄一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現代(2025)のビジネスリーダーたちは、シリコンバレーが広めたある信仰に囚われている。それは「世界はデータで記述できる」という幻想だ。彼らはGPS履歴やクリック数といった「薄いデータ」を崇拝し、それで人間を理解した気になっている。だが、ハイデガーが「世界内存在」として定義したように、人間は真空の中で生きる孤立した変数ではない。我々は常に、文化、歴史、社会という不可分な文脈の中に投げ出されている。
科学的実証主義(自然科学的アプローチ)は、この文脈をノイズとして切り捨てる。しかし、現象学の視点に立てば、その「ノイズ」こそが人間のリアリティそのものである。文脈を無視したアルゴリズム解析は、地図を見て現地を歩いた気になっているに過ぎない。
著者が提唱する「センスメイキング」とは、哲学、歴史、人類学、芸術といったリベラルアーツの知恵を総動員し、人間の行動の背後にある「意味」を解読する厳密なスキルである。
さて、エクセルシート上の数字を睨んでも、イノベーションは生まれない。必要なのは、対象となる人々の「生活世界」へと深く潜行し、彼らと同じ空気を吸い、同じ痛みを感じることだ。これはメルロ=ポンティが説く「身体性」の回復でもある。現場の「厚みのあるデータ」に触れることで初めて、我々はウィトゲンシュタインの言う「生活形式」―人々が言葉や行動に込める真の意味―を理解できる。
AIや機械学習は、相関関係を見つける道具としては優秀だ。しかし、それらは「なぜ」という因果や、文化的なニュアンス、感情の機微を理解しない。ガダマーの解釈学が示す通り、真理は対象を客観的に突き放すことではなく、対象との対話的融合の中から立ち現れる。
私たちへ、本著が示すメッセージとして、データを盲信するなということに尽きる。それは世界の一部を切り取った断面図に過ぎない。自らの文化的直観、すなわち「心眼」を磨け。テクノロジーと人文学の交差点に立ち、数字の向こう側にある生々しい人間の現実に触れること。それこそが、不確実な未来を生き抜くための、最も強力で人間的な知性であり、本著はそういう柔軟な視点と角度から問いと思索を与える書であると言えよう。 -
Posted by ブクログ
観察力に伸び代があると思っていたので読んだ
注意力・集中力とは、スポットライト的な一つのことに対するものと、フラッドライト型のその場の雰囲気や言葉などの奥にある背景などに対するものがあり、後者にもっと力を入れるべきと説いている。その場に没入するような自我から降りた観察が、新たな発見をもたらし、世界の見え方が変わる。
世界が複雑に不確実になり、ネットであらゆる情報が氾濫する中で、ことの本質を掴むには重要な習慣・力なのかもしれない。別のデザイン系の本で同じようなことを読んだので自分には刺さったが、具体的な事例の紹介が多いのと最終的なの主張の抽象度が高いので、?となるかも -
Posted by ブクログ
ビッグデータ、デザイン・シンキングなど、受けるエリアだけどただそれに飛びつくだけの時代に一言物申す書と言った感じ。この本の日本発売は2018年11月なのでその数年前からビッグデータとAIはブームになっていてマネーボールは映画になってヒットするほどだった所に、追い討ちをかけるように時代はSTEM、稼げるのは理系で、人文系の学問って無駄じゃね?との意見が世界的に広まりつつある中、いやいや、人文学の方がより人間らしい生き方を味わうのに良いだろ?って言ってるようだ。
著者は、クリスチャン・マスビアウ氏、あまり聞いたことのないラストネームだが、ロンドン出身の方なのかな、ロンドン大学卒業という経歴。
「世界を理解する」では、フォードCEOの大衆に車をと言ったビジョンや、「「個人」ではなく「文化」を」では、哲学と芸術、物語りの大切さを訴えているところは著者が現在アメリカに住んでいる事も影響して、褒めながら欠点をあぶり出す感じ。第4章では、あの英国銀行を潰したとも言われるジョージ・ソロスを深掘りしている。これはロンドン出身の著者からすると、ある意味、かたきとも言えるだけに、こいつは何者なのかについて深く分析したのかな?と想像。文中ではそんな事は一言も書かれてないけど、失敗から学ぶってやつかな。
センスメイキングって、日本人的には、「侘び寂び」だったり「心の機微」的な表現になるのかなあ。第7章では、センスメイキングの達人として、3人の物語りが紹介されていて、1人目は、交渉の指導の達人と言われるシーラ・ヒーン、2人目は、EU統合の困難な交渉をやってのけた政治家?のマルグレーテ・べステアー、3人目は、FBIの交渉のエキスパートのクリス・ボス。第8章の「人は何のために存在するのか」として、介護にフォーカスを当てている。
外資系企業で働く身としては、データ、レポート、デザイン・シンキングは、めちゃくちゃ言われるだけに、本の内容については、概ね好意的。
序 ヒューマンファクター
第1章 世界を理解する
第2章 シリコンバレーという心理状態
第3章 「個人」ではなく「文化」を
第4章 単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
第5章「動物園」ではなく「サバンナ」を
第6章「生産」ではなく「創造性」を
第7章「GPS」ではなく「北極星」を
第8章 人は何のために存在するのか
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Posted by ブクログ
著者のブラッド・スミスさんは、超大手IT企業・マイクロソフトの法務部門に入社した後は、ビル・ゲイツさんの片腕として独禁法訴訟やプライバシー保護、サイバーセキュリティ等、多くの問題について合衆国政府や他国政府、ライバル企業との交渉に尽力された方です。この本では著者が長年IT業界の一線で活躍された経験とテクノロジーの持つ可能性と驚異について書かれた本です。多くの方の個人情報を把握している所有しており、その情報で顧客を幸せにする事も不幸にする事も出来るパワーを持った企業の法務責任者として、合衆国政府が求める危険人物情報の提供に対し、プライバシー保護との葛藤は大変なものがあったと容易に想像出来ます。どちらも人々の安心安全と利益を考えての行動なので何方が良い・悪いは簡単にいえないですよね。。。
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Posted by ブクログ
今後の社会で受け入れられる商品やサービス、行動様式をどのように考えたら良いかのヒントになるかと思い購読。もちろん、データの重要性や数字を一目見るだけで様々なことが理解できることは便利だし重要なんだけど、データ・数字・テクノロジーの向こう側・奥底にある「何か」を掴み取ることはもっと重要な気がする。それは「感情」「文化」「センス」なんだろう。「謎に出くわした時、過去の体験や検索でさっさと答えを出すのではなく、柔軟に向き合う姿勢を保てるかどうか」「意味をめぐる一見地味な観察こそが重要」「アルゴリズムには様々な可能性があるが、それ自体関心を持つという行為はできない。対象に関心を寄せ気遣いをするために人は存在する」
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Posted by ブクログ
現代のスティーブ・ジョブズとも言えるイ―ロン・マスクの自伝。
ペイパルに始まり、スペースX、テスラ、ソーラーシティなど、画期的な企業を次々に立ち上げ、
倒産の危機にもめげず、自分の全資産をつぎ込み、世界を救うべく奮闘する。
シリコンバレーによくいる上場だけを目指している起業家とは、
一味も二味も違うイ―ロン・マスクを十二分に味わえる本になっています。
彼の凄いところは、
・壮大なビジョン(ムーン・ショット)をぶちまけるところ
・そのビジョンを心底信じて、現実化のために24時間邁進できるところ
・安易に上場に走らない
でしょうか。
その一方、天才的な起業家のように見えますが(十分すぎるほど天才ですが…)、
経営面からは色々な失敗や判断ミスをしているようです。
性格も難ありのようですし…。
性格的には僕の好みではないですが、
こういう世界を変える(というか、救う)人も、やはり地球には必要なのかもしれません。