【感想・ネタバレ】心眼――あなたは見ているようで見ていないのレビュー

あらすじ

【内容紹介】
ベストセラー『センスメイキング』に続く、クリスチャン・マスビアウの待望の新刊が発売!!
経営は現象学を理解すればうまくいく。

・なぜヨガは精神からスポーツの世界に移行した?
・なぜ寿命が延びる可能性がある医薬品を拒む人がいる?
・なぜ環境が重要だと訴えてもEVは売れない?

マスビアウが重視するのは、ウィトゲンシュタインやメルロ=ポンティの哲学的アプローチによる物事を観察である。
また優れた観察力を持つ者は何ごとも注意深くじっくり考え、結論を急ぐことがないという特徴が共通するという。
その意味での「注意」とは、たとえば通りを歩くときにうっすらと広く全体をカバーする様子のことで、何かに集中するのではなく、すべてに注意を払っている状態が重要となるのだ。

本書に書かれたメルロ=ポンティがハイパーリフレクションと呼ぶメタスキルを身につけることで、ビジネスに役立つだけでなく、世の中を見る眼が一変するに違いない。

【著者紹介】
[著]クリスチャン・マスビアウ(Christian Madsjerg)
コンサルティングファームReDアソシエーツの共同創業者。人間科学の実用分野で広く執筆、講演、教育活動を行う。ニューヨークタイムズ、アトランティック、フィナンシャルタイムズ、ワシントンポスト、ブルームバーグ、ビジネスウィークなどで活動を展開する。現在、家族と共にニューヨークシティ在住。

[訳]斎藤 栄一郎(さいとう・えいいちろう)
翻訳家・ライター。山梨県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。主な訳書に『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』『地球上の中華料理店をめぐる冒険』『1日1つ、なしとげる!』『イーロン・マスク 未来を創る男』『SMARTCUTS』『ビッグデータの正体』(以上、講談社)、『小売の未来』『小売再生』『センスメイキング』『Tools and Weapons テクノロジーの暴走を止めるのは誰か』『イノセントマン ビリージョエル100時間インタヴューズ』(以上、プレジデント社)、『データ資本主義』(NTT出版)、『締め切りを作れ。それも早いほどいい。』(パンローリング)、『マスタースイッチ』(飛鳥新社)などがある。

【目次抜粋】
■はじめに
何よりも難しいのは、本当にそこにあるものを見ることである
■パート1 準備編
何かを見ている自分自身を見るという練習
■パート2 実践編
論文や思考に学ぶ観察術

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Posted by ブクログ

現代(2025)のビジネスリーダーたちは、シリコンバレーが広めたある信仰に囚われている。それは「世界はデータで記述できる」という幻想だ。彼らはGPS履歴やクリック数といった「薄いデータ」を崇拝し、それで人間を理解した気になっている。だが、ハイデガーが「世界内存在」として定義したように、人間は真空の中で生きる孤立した変数ではない。我々は常に、文化、歴史、社会という不可分な文脈の中に投げ出されている。
科学的実証主義(自然科学的アプローチ)は、この文脈をノイズとして切り捨てる。しかし、現象学の視点に立てば、その「ノイズ」こそが人間のリアリティそのものである。文脈を無視したアルゴリズム解析は、地図を見て現地を歩いた気になっているに過ぎない。
著者が提唱する「センスメイキング」とは、哲学、歴史、人類学、芸術といったリベラルアーツの知恵を総動員し、人間の行動の背後にある「意味」を解読する厳密なスキルである。
さて、エクセルシート上の数字を睨んでも、イノベーションは生まれない。必要なのは、対象となる人々の「生活世界」へと深く潜行し、彼らと同じ空気を吸い、同じ痛みを感じることだ。これはメルロ=ポンティが説く「身体性」の回復でもある。現場の「厚みのあるデータ」に触れることで初めて、我々はウィトゲンシュタインの言う「生活形式」―人々が言葉や行動に込める真の意味―を理解できる。
AIや機械学習は、相関関係を見つける道具としては優秀だ。しかし、それらは「なぜ」という因果や、文化的なニュアンス、感情の機微を理解しない。ガダマーの解釈学が示す通り、真理は対象を客観的に突き放すことではなく、対象との対話的融合の中から立ち現れる。
私たちへ、本著が示すメッセージとして、データを盲信するなということに尽きる。それは世界の一部を切り取った断面図に過ぎない。自らの文化的直観、すなわち「心眼」を磨け。テクノロジーと人文学の交差点に立ち、数字の向こう側にある生々しい人間の現実に触れること。それこそが、不確実な未来を生き抜くための、最も強力で人間的な知性であり、本著はそういう柔軟な視点と角度から問いと思索を与える書であると言えよう。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

観察力に伸び代があると思っていたので読んだ

注意力・集中力とは、スポットライト的な一つのことに対するものと、フラッドライト型のその場の雰囲気や言葉などの奥にある背景などに対するものがあり、後者にもっと力を入れるべきと説いている。その場に没入するような自我から降りた観察が、新たな発見をもたらし、世界の見え方が変わる。

世界が複雑に不確実になり、ネットであらゆる情報が氾濫する中で、ことの本質を掴むには重要な習慣・力なのかもしれない。別のデザイン系の本で同じようなことを読んだので自分には刺さったが、具体的な事例の紹介が多いのと最終的なの主張の抽象度が高いので、?となるかも

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2025年05月14日

Posted by ブクログ

対象を見る その背景(喧騒)も見ることを忘れずに。
対象は変わっていなくても背景は変化していることはある
背景は目まぐるしく変化するのであれば今、対象だけを見た際の評価、判断、将来は当然変わる
人が見ていない景色を見る、パックが来る方へ先回りできる。

全体は個別の総和を超える!

対象を見ている自分を見る メタ、自分を客観的に見てみる
相手が何を考えているかではなくどのように考えているか を見る

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2025年02月01日

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