四方田犬彦のレビュー一覧
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試し読み
Posted by ブクログ
黒石の『俺の自叙伝』(岩波文庫)が同時発売。これがないと本書が成り立たない。
大泉黒石(1893-1957)、ロシア人外交官を父にもつハーフ。長崎、モスクワ、パリ、ペトログラードなどで少年期を過ごした。日本に戻った後は、三高や一高に入学するも、すぐに退学。その後ジャーナリストとして活躍。『俺の自叙伝』を出版し、作家として華々しい活躍をみせるが、30代半ば以降は鳴かず飛ばず。旅のエッセイなどを書いて糊口をしのぐ。戦後は進駐軍で通訳の仕事もした。本書は、その奔放で数奇なコスモポリタンの生涯(どこか平野威馬雄を思わせる)に光をあてる。
著者四方田犬彦の師は、黒石に大きな関心を寄せ、その全集刊行に関わ -
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四方田 犬彦
(よもた・いぬひこ)
1953年、西宮生まれ。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文化を学ぶ。映画と文学を中心に、文化現象一般をめぐる批評と研究を続け、明治学院大学教授として映画史の教鞭をとる。著書は『映画史への招待』(岩波書店)『先生とわたし』(新潮社)『見ることの塩』(作品社)『書物の灰燼に抗して』(工作舎)など百冊を越える。訳書に『パゾリーニ詩集』(みすず書房)などがあり、『ゴダール・映像・歴史』(産業図書)『シリーズ日本映画』全8巻(岩波書店)を編集した。
ゴダールと女たち (講談社現代新書)
by 四方田犬彦
ゴダールは一九三〇年、富裕な銀行家の孫としてパリに -
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面白かった。特に大学生のアンケート結果が興味深かった。女子と男子とではもちろん違うだろうと予想はしていたが、斜め上の発想や個性的な回答が多くて楽しかったし、そこはかとない時代感を感じた。記載されていた女子の回答の、イラスト付の回答がノスタルジック。
「かわいい」ものが好きでかわいいものを見たり聞いたり身の回りに存在を感じたりするのが好きだ。でもどことなく危うさも感じていた。しかしその感覚に取っ付かず流してきたが、この本を読んで改めて「かわいい」とそれを作り上げたり求めたり、享受する人間の心理的な面白さ、みたいなものを感じた。
深く一つを追求するのでなく、広くそこそこ深く「かわいい」を論じてい -
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四方田犬彦のエッセイ
この本と出会うまで、四方田と言う方を存じ上げなかったと思う。
読んでいくうちに当然だが著者にも興味を持ち、web検索したのだけど、テレビでお見かけしたかも…。恐れながらそのような程度でありました。
歳を重ねる大変さは痛感しているが、なんとか明るく前向きになれるヒントを得たい。それがこの類の書を読む理由だ。
著者が生きてきた中で、特に印象に残ったことや、著者自身が老年を生きるヒントとしてきたものを語るエッセイであった。
飼っている犬については人間らしさを記され実直な描写が心に残る。
こちらは意外だったが、親鸞聖人についての部分もあり大変勉強になりました。親鸞について -
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日本の大学を辞し、パリで日本映画の解説などをして過ごしていた「私」は、レバノン出身の映画監督ジョスリーン・サアブと親しくなる。日本赤軍の重信房子とその娘メイを題材にした新作を撮りたいというジョスリーンのため、日本とのパイプ役を務める「私」。だがジョスリーンの体は癌に侵され、死が間近に迫っていた。ある女性の人生を賭したドキュメンタリー映画が作られる工程を描いたノンフィクション小説。
四方田犬彦の新作ということで読みはじめたが、サアブ監督だけでなく重信房子にがっつりフォーカスした内容だとは知らずに驚いた。私は赤軍については指名手配のポスターくらいしかまともな記憶がない世代で、四方田と重信房子の -
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「レバノンの名家に生まれ、パリで客死したある女性映画作家の生涯 脅威と感動のノンフィクション」と帯にある。中東の歴史や文化にまったく明るくなくて、主人公のジョスリーンという映画作家も、著者の四方田さんのことも存じ上げなかったのだけど、多和田葉子さんと斎藤真理子さんが帯に言葉を寄せているのが気になって、これはおもしろいはずだと本屋で手に取った。くまざわ書店の書評コーナー、ありがとう。
裏表紙の帯には「元日本赤軍幹部・重信房子と娘メイの、母娘の絆の物語」とあった。学生の時に連合赤軍のあさま山荘事件を扱った映画や中東にいる日本赤軍の映像や、重信房子とその子供たちのエピソードを聞いた記憶があって、な -
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「わたしの部屋は…中略…さながら李小龍(ブルース・リー)グッズの展覧会といった様相を呈している」という著者の思い入れたっぷりのブルース・リー評伝。
リーの子役時代の映画から「ドラゴン」シリーズまで、ほぼ全ての出演映画の解説ぶりは舌を巻くほどのマニアックぶり(と言うか、オタク度)全開。「ドラゴン」シリーズでのリーの身体つきや身体の動きをつぶさに観察して「マゾヒズムとナルシシズムが絶頂の寸前で鍔(つば)迫り合いを果たし、出血し毀損してゆく身体が稀有のものとして見せるエロティシズムが開示されている」なんて書いてしまうのだから、もうとまらない、たまらない。
冷静に客観的に書かれた評伝もいいけれど、情熱 -
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四方田犬彦という名前が本名であるとすれば、そのように名づけた親とは一体どんな人だったのかと常々考えてきたのだが、ひょんな誤植から生まれた筆名だったということを最近知った。
高校生になりたてのころ、浅田彰の『構造と力』が話題になり、わかりもしないくせに現代思想の本を読んでいたころのことだ。『GS』という現代思想の論客たちによる論文集を買って一生懸命読んだ覚えがある。この論文集の編集を手がけたメンバーの一人が四方田犬彦だったはず。浅田彰や伊藤俊治といった他のメンバーの華々しさとは一味違い、四方田犬彦の書籍を本屋で見ることも少なく、論文集の鼎談の隅に小さくピンボケで映っている肖像写真は、分厚そうな -
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世にジャン=リュック・ゴダールの信奉者かずかずあれど、つまり、たしかに私も著者の四方田犬彦も、そのうちのひとりのはずですが、以前からこころに思ってはいましたが、恐れ多くて、けっして口には出せないし、出してはいけない、出せば世間のひんしゅくを買うこと間違いないと思われること、そう、
ゴダールは、女に逃げられるという天才的才能の持ち主だ
という視点から、この本は書かれていて、私などは内心ひそかに喝采を叫びながら、ドキドキして、頁をめくっていきました。
ジーン・セバーグ
アンナ・カリーナ
アンヌ・ヴィアゼムスキー
ジェーン・フォンダ
アンヌ=マリ・ミエヴィル
少なからぬ期間、ともに暮らし主演 -
Posted by ブクログ
大学の小論文の課題文で出会った文章でずっと探していた本だった。まさか、犬に関するエッセイ本とはつゆ知らず古今東西の小説から犬にまつわる文章を抜き出して考察していた。
犬に名前を与えるという行為は、犬を人間の側に近づけ、人間化を施すことである。ペットとして飼われるようになったとき、犬は純粋な動物であることをやめ、動物と人間との混合物へと姿を変える。という2文は自分が哲学における構造主義を知ったきっかけの文章でありどこか嬉しい気持ちになった。
また、二葉亭四迷の小説において犬と人間の関係を表そうと試みる文章があるが、あの何とも表現しがたい犬との関係こそが犬のもつ深み(友人、ペット、家族)であると -
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まさに「ソウルの春」直前までソウルの大学で日本語教師を務めていた四方田先生の自伝的小説。1979年のソウルの街がイキイキと描かれている。日帝統治時代を過ごした世代は懐かしそうに日本語で思い出話を語り、大学生は密かに日本のサブカルチャーに憧れ日本語を学ぶ。予備知識なく乗り込んだ四方田先生を困惑させるのであった。
最後の事件に向けてギリギリと緊張感が高まるところは現地に滞在していた著者ならでは。それにしても、あと半年滞在すれば「春」を体験でき、それを(日本人として)記録して後世に伝えることができたのに残念です。
東大のご学友たちの韓国に対する態度の腹立たしさよ。3.5 -
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『カリガリ博士』が日本で公開されたのは1921年5月。当時映画製作者として活動していた谷崎潤一郎は、かつて『人面疽』という映画と狂気を扱った自らの短編小説の映画化を計ったが挫折していた。『カリガリ博士』に共鳴した谷崎は絶賛と注文の混じった熱い批評を書く。1923年、溝口健二は、大泉黒石の原作をもとに『血と霊』を制作する。『カリガリ博士』に影響を受けたストーリーや衣装ではあったが、物語としてはメロドラマから脱却できなかった。1926年、嘉仁天皇が、世間の噂の中衰弱していく年に、衣笠貞之助は川端康成らと『狂った一頁』を作り上げる。その中では、精神病院の患者と医療者が、抑圧する/される関係性である