【感想・ネタバレ】犬たちの肖像のレビュー

あらすじ

人間のもっとも古い伴侶にして身近な他者──「犬」。古代叙事詩からルネッサンスの戯作、近代小説、SFそして映画と漫画にいたるまで、「犬」のイメージの変遷を辿る。比較文学者にして愛犬家である四方田犬彦による古今東西文学エッセイ集。【目次】ハーマン・メルヴィルを讃えて/乞食の帰還 ホメロス/二人の動物物語作家 シートンとロンドン/孤独の友だち ブニュエルとセリーヌ/犬、人を襲う 鏡花、多喜二、ギャリ/四つん這いになる ドヌーヴと金石範/犬婿入り 『後漢書』と馬琴/冥府より来りて グラス/犬を人間にできるか ステープルドンとブルガーコフ/犬をどう名付けるか/密談ピカレスク セルバンテスとホフマン/犬族から遠く離れて パニッツァとカフカ/東西名犬対決 『タンタン』と『のらくろ』/復員兵という名の野良犬 吉岡実と北村太郎/犬の眼でモノを見る ジョイス、原將人、岡部道男、森山大道/文学的ジャンルとしての、犬の追悼/犬は人なり 谷崎潤一郎と川端康成/愛犬と闘犬 江藤淳と川上宗薫/法(ダールマ)としての犬/あとがき

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Posted by ブクログ

大学の小論文の課題文で出会った文章でずっと探していた本だった。まさか、犬に関するエッセイ本とはつゆ知らず古今東西の小説から犬にまつわる文章を抜き出して考察していた。

犬に名前を与えるという行為は、犬を人間の側に近づけ、人間化を施すことである。ペットとして飼われるようになったとき、犬は純粋な動物であることをやめ、動物と人間との混合物へと姿を変える。という2文は自分が哲学における構造主義を知ったきっかけの文章でありどこか嬉しい気持ちになった。
また、二葉亭四迷の小説において犬と人間の関係を表そうと試みる文章があるが、あの何とも表現しがたい犬との関係こそが犬のもつ深み(友人、ペット、家族)であると思った。

四方田さんの言葉の言い回しも個人的に好きだった。

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2025年04月23日

Posted by ブクログ

名前に犬の字をもつ文学評論家による、文学の中に描かれた犬たちの肖像をめぐるエッセイ集。
実は本書を手に取ったのは、政治における犬をめぐる表象や事象に関心があったためで、そういう意味ではやや期待はずれではあったのだが、犬好きとしては楽しいマニアックな蘊蓄が詰まった本である。
とりわけ、ホーメロスの『オデュッセイア』に登場するアルゴス――妻よりも誰よりも、乞食に身をやつした主人公の帰還に気づく犬――に注目する議論がなんとも興味深い。できれば子どもに犬彦という名をあたえる四方田家についても知りたいところであるが。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

人間のもっとも古い伴侶、犬。
小説、映画、漫画に至るまで、作品のなかに顕れる「犬」の存在をめぐるエッセイ集です。

四方田様らしいハードボイルドを存分に堪能。
献辞はかつての愛犬へ。
犬に「兎吉」と名付けるところも素敵です。

先日TV番組に紹介されたせいでTwitterに川端康成が5匹の子犬を抱えた写真が大量巡回していたけれど、これを読むとなかなかモヤモヤする写真ではあります。

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2015年10月22日

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