四方田犬彦のレビュー一覧
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2015.11記。
「かわいい」とはそもそもなんなのか。
古代ギリシアが「調和・均衡」を最も尊び、また西欧でも「成熟」こそ優れたものと捉えていたこととの対比において、古くは枕草子に「かわいいもの。スズメがちゅんちゅんと寄ってくるところ」とあるように、小さく、かよわい、といったものに対する愛着は日本人の感性に深く根ざしている。
しかし議論がより迫力を増すのは、「きれい、美しい」よりも実は「グロテスク」のほうがより「かわいい」に隣接した概念である、といった辺りから。グロテスクさを直視しない社会的な装置、イデオロギーとしての「かわいい」の可能性が検討される(いびつなものを「かわいい」と呼ぶなど -
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「カワイイ」、「KAWAII」が日本、世界を問わず飛び回っている。そんなかわいいに注目したのが今回の本だ。かわいいだけで1冊の新書にするとは、寝ても覚めても頭の中からかわいいが離れなかったに違いない。
メディアの中の「かわいい」では、メディアに注目して「かわいい」について述べている。メディアが説くかわいいについて著者は以下のように述べている。「幸福感であり、消費主義であり、生理的年齢に対する精神の勝利である。また手の届くところに置かれた祝祭であり、選ばれてある私を巡る秘密めいた快楽である」。かわいいも1つの消費を喚起するために装置なのかとふと思った。かわいいがこれほどもてはやされるのはどう -
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ネタバレ現代の若者の「かわいい」の感覚、今の「かわいい」に至るまでの来歴や、海外での「かわいい」の受容され方についてなどなど。
日本ではとりわけ小さなもの、幼稚なものを愛でる傾向がある。
一瞬を永遠にとどめたフィギュア。
ノスタルジア。
旅の証拠としての小さなもの、スーベニール。
かわいいとグロテスクは表裏一体。
セーラームーンは、ティーンの変身願望。戦うことよりもどう変身するか、変身シーンが一番大事。清楚なセーラー服に身を包んで戦うのは、肌を露出させたセクシーな大人の女たち。
女性は自分が「かわいく」ありたいから「かわいい」ものを傍におく。自分のためのかわいい。
男性はかわいいものを愛でたいとい -
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ゴダールをめぐるミューズたちを中心に展開されるゴダール論。
ジーン・セバーグとアンナ・カリーナの章の冒頭に、岡崎京子のイラストが使われている。
あとがきに、岡崎京子への献辞が、述べられているのが切ない。
正直な話、ゴダールの映画は、ほぼ半分くらい寝て観ているので、ストーリーのダイジェストを読むと、「あぁ、あれはそういう映画だったのかと」理解できるのはありがたい。『アルファビル』とか『女と男のいる舗道』とか。
著者は、近年のゴダールの作品に高い評価を与えているが、必ずしも映画に政治性や批評性を求めていない、自分のような怠惰な映画ファンには、なぜ敷居が高いのかも理解できた。映画に「セックスと政 -
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ガブのリアル本棚には1989年刊の『ストレンジャー・ザン・ニューヨーク』という本がある。大学生の頃『朝日ジャーナル』の連載を毎号楽しみに読んでいて、単行本として出た時すぐに書店に買いに走ったもの。1989年のこの一冊以来、著者の本を二十年余りも読み続けてきたのだから、思えば長い「お付き合い」になる。そんなわけで、今回このような本が出たと知り、帰国が待ちきれずすぐに購入ボタンをクリック!
本著に収録されているエッセイは、先人の言葉や古典作品を引用しつつ、著者本人の過去や現在をあれこれ綴ったものなのだが、四方田本の「忠實讀者」であるガブには、正直うち数編に書かれていたものは、すでにどこかで読んだ