R・D・ウィングフィールドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2018年最大の読書快楽は間違いなくフロスト警部シリーズ。個人的には絶賛絶叫全面肯定感謝感激なのですが、もはやため息をつくしか無い犯罪小説シリーズの多くがそうであるように、フロスト警部シリーズも、あらすじを備忘録にしておこうと思っても、読み終わって2分もすると記憶からすり落ちてしまいます。寝起きの素敵な夢のようですね。ああ、良い夢みたな、と思っても、起き上がって水でも飲む頃にはすっかり忘れてしまう。
「フロスト日和」はシリーズ第2作。だいたいいつも通り女性や子供などの弱者を狙った犯罪が相次ぎ、フロスト警部は寝る間も無く複数の事件と現場への理解や愛の無い上昇志向の上司に怒られ続け、下品極まりないジョークをつぶやきながら、行き当たりばったりな捜査を続け、犬が棒に当たるように解決したりしなかったりします。そうまとめると何がおもしろいのかわかりにくいのですが、実際わかりにくいと思います。でも、これは珠玉の小説であり、フィリップ・マーローがもしも文学であるならば、フロスト警部も間違いなく文学という人類の遺産です。
細かいことはさっぱり忘れてしまったのですが、ラスト、警官殺しの意外な真犯人を突き止めるフロストの語りが胸アツもので、更にその後に金貨泥棒を名乗ってくる老婆とのやりとりが、胸がアツいのではなくて、胸をえぐられるような痛み。そして、我らがフロストへ限りないエールを送るしか無い泣ける終わらせ方。
このシリーズはとにかく、終わり方がにくい。ニクすぎます。
(読み終わってから相当に経過してから書いているので、記憶が間違っているかも知れません) -
Posted by ブクログ
一応、「海外ミステリーもけっこう好き」と自認する以上は、以前から気になっていた一冊。読んでみたら、大当たり。2018年最高の発見かも知れません。
イギリスの作家ウィングフィールドさんの著作。随所にやっぱりイギリスらしい「ちょっとひねくれた、皮肉な、ウィットに富んだ世界観」みたいなものがあって、それ自体が素晴らしい訳では無いですが、この作品の出来は極上。
ジャック・フロストという、40代後半あるいは50代とおぼしきおっさんの刑事が活躍する、警察ものです。
舞台は、どうやら「地方都市」という感じの架空の街。読んでいくと、日本に例えると「藤沢市」とか「高崎」とかそういうくらいのレベルの街なのか、あるいは「広島市」くらいなのか・・・。「東京」とか「大阪」という感じではありません。
そして、警察モノとしてはレアだと思うのですが、「複数の事件が錯綜する」というのが特徴。その意味ではリアルなのかも知れません。そしていけ好かない役人根性丸出しの署長がいて、警察官刑事たちも、サラリーマン的な感性をむき出しにしつつ犯罪捜査に追われます。そういう意味では「踊る大捜査線」がこのシリーズの影響を受けているかも知れません。
そして、主人公のキャラクターが秀逸。刑事物の主人公の中では圧倒的に、下品です。どうしようもないくらい下品で、死体と女性に関してのあけすけなジョークを連発。そして漫画的なまでに書類仕事が苦手で、でも書類仕事にも追われる様子は克明に描きます。そして、そんなキャラクターを含めて描かれる世界観は、どうしようもなく混沌として、階級社会の不条理の中で女性や子供など弱いモノが犯罪の標的になる、げんなりするような猥雑な社会のありさまです。そんなネガティブで陰性な世界観が、そんな世界の汚れた裏側を這いずる回るような主人公の下品さと、なんだけど同時に100%仕事中毒でタフで、そして直感職人のような犯罪捜査をマイペースで追求するヒーローが、オセロをひっくり返すように「げんなりする世界」を「痛快なダーティー・ヒーロー物語」に変換していきます。
(と、書いていくと、これは実は「イギリス版中村主水(警察官バージョン)」と言って良いのかも知れません。殺し屋ではありませんが)
そして、優れた世界観を堪能させてくれる犯罪捜査ヒーローモノの特徴ですが、「どんな事件だったのか」というのはすぐに忘れてしまいます・・・。
確か、幼女が誘拐殺人されるという痛い事件が中心だったと思います。
そして後半で、我らが主人公フロストが、かつて妻をガンで失ったこと、そのときの思いが語られます。
汚れに汚れた主人公の、毒と愛と皮肉に満ちた心情が、グサリと突き刺さる。脱帽。
作者のウィングフィールドさんは、どうやら放送作家さんとして一流だったようです。
そして、10年以上もかかって、フロスト刑事物を世に出した。
そのときにもう50代だったようで、以降、フロストシリーズだけを書き続けて、6作の長編を残して2007年に逝去されたそうです。
6作しか無いのは悲しいことですが、6作も残してくれたのは、大変に嬉しいことです。 -
Posted by ブクログ
クリスマスが近いということで読んだ本。
私は皆さんにお詫びしなければなりません。
今から20年以上も前にこれほどの傑作が刊行されていたにも関わらず、今日までご紹介することをできませんでした。(だってさっき読み終えたんだもん!)
自らの不明を恥じております。書店員として失格です!
読んでいないのに知ったかぶって、ああ、フロストね、いいよね、あれ、なんて顔もできなくもないのです。それなりの読書修行も積んだつもりです。
が!しかし、この作品だけはごまかせません!
にやりと不敵な笑みを浮かべることは、この本を読み終えないとできないのです。
一体どんな主人公なんだと疑問も浮かぶでしょう。
表紙をご覧下さい。
デスクの上をとっちらかし、くわえ煙草のむさくるしい風袋のおっさんが名刑事フロイトです。
どれくらいの名刑事か。例えるなら、刑事コロンボとリーサルウェポンのリッグスと、フーテンの寅さんを足して3で割って中途半端にしたような刑事です。
いいですねぇ、キャラがとっても際立ってますねぇ。
ヘタこくこともたびたびですが、勘の鋭さはピカイチです。誰もが賛同しかねる迷推理も、すべてすりっとまるっとお見通しだったことが最後にはわかります。
事件の内容には一切触れません。
でも太鼓判を押します -
Posted by ブクログ
何年ぶりか、というほど待ったフロスト警部シリーズ第4弾(かな)。
作者のウィングフィールド氏はすでにこの世を去っているので、あと2作あるという作品でこのシリーズは強制的に終わってしまうのが悲しい。
けれど、フロストにはたくさん、早く会いたいので、早く翻訳してほしい。
相変わらず、下品、お下劣、不潔、がさつ、セクハラ満載な男、フロスト警部。けれどどこか憎めない。そんな彼に今回もさまざまな事件が怒涛のごとく押し寄せる。幼い子供が誘拐、殺害されるという事件を皮切りに、若い娘が誘拐されるわ、ちんけな犯罪者が汚水の中から死体で見つかるわ、それはもうえらいことになっている。
そしてやっぱり相変わらずデントン署は人手不足。
署長の高級葉巻をくすねるために署を訪れた、休暇中のフロストの手を借りなければいけないほどなのだ。まさしく猫の手も借りたいというところだろう。(フロストと犬猿の仲のマレット署長なら猫のほうがいいというに違いない)
上下巻であることを感じさせないほどの圧倒的なスピード感、物語の面白さも相変わらず。
小さな小さなことを見逃さずにいるフロスト(たいてい、単なるあてにならないカンだったりするのだが)が、寝る間も惜しんで働いた結果、最後にはすべての糸がほぐれていく。
今までと少し違うのは、過去の作品ではワーカホリックで人使いが荒いと署内の鼻つまみ者だったはずのフロスト警部が、今回はどうも他の刑事たちから慕われているらしいということ。
いったい彼に何があったんだ!?
シリーズではありますが、この作品だけでも十分楽しめます(なんせ7年ぶりの新作なので、わたしも前の作品は覚えてません)。
が、愛すべきセクハラ親父であるフロストを気に入ったら、ぜひ、前の作品も読んでください。
アメリカの警察小説とはまた違って、イギリスの暗くじめっとした空気が伝わってきます。そういう読み方をしてみるのも、おもしろいですよ。 -
Posted by ブクログ
「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」に続くフロスト警部シリーズ第3弾。過去2作はそれぞれ「週間文春」、「このミステリーがすごい」のランキングで1位を獲得した作品である。
不屈の仕事中毒(プライベートの時間が描かれたことがない)、下品きわまる田舎町デントンの名物警部フロスト。
次々と降りかかる事件、ついでに掘り出してくる事件、などいくつもの事件が同時進行して、それをあっちへいったりこっちへいったり、ひっくりかえしながら最後にはきっちり解決するフロスト警部。
口を開けば下品なオヤジギャグの連発、気を抜いてる奴には浣腸攻撃、上司の命令もおかまいなし。上司や清潔感溢れ野心をみなぎらせた部下には嫌われつつ、しかし不眠不休で現場百回、直感をもとに捜査を行うフロストの魅力満載。
この文章を読んで、「下品なやつはな」と二の足を踏んでいるのであれば、それは損をしていること間違いなし(あたしが下品なジョークが好きだからというわけではないはず)。
なんせいくつもの事件が同時進行する上にフロストの迷走ぶりをあますことなく書いているため、分厚い(文庫なのに760ページもある)のだが、そんなことは気にならない面白さ。
下品なオヤジの姿の中に、妻に先立たれた仕事中毒の中年男の哀愁が感じられる(に違いない…?)。 -
Posted by ブクログ
やっと読み終わりました。750ページは若干骨が折れました。
フロストシリーズ第3作目。
よれよれの服装で、頭もさえず、下品な冗談を時と場所構わず連発し、常に煙草をふかしているフロスト警部。彼は一方で驚異のワーカホリック。とにかく現場と関係者の聞き込みが命。
デントン署は、インフルの影響で署員は半分しか出勤してない状況。でも、そこに起こるのは老女連続殺人、少女失踪殺害、放火殺人、そして闇ポルノ…。
これらの事件に対する彼の捜査手法は、「勘」と「思い込み」と「運」。自白を引き出すためにはハッタリも厭わない。1週間ぶっ通しで仮眠のみで捜査を続けるフロスト。署員も巻き込み大騒動です。
最後は全部の事件がなぜか解決してしまうんだけど、その終わり方は決してハッピーではありません。でも、フロストはへこたれないんだなぁ。
でも、警察の実際の捜査ってこんな感じかもよ。違ってたらごめんなさい。
原書名:NIGHT FROST(Wingfield,R.D.)
著者:R.D.ウィングフィールド(Wingfield, R. D, 1928-2007、イングランド・ロンドン、小説家)
訳者:芹澤恵(東京都、翻訳家)
解説:霞流一(1959-、岡山県、小説家)