松原秀行のレビュー一覧
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パスワードシリーズ第17作。
ビネガー6から、レイさんを誘拐したという挑戦状が届き、電子探偵団がビネガー6とパズルを解きながら対決する、いわばリアルRPGの話と、レイさんの学生時代の冒険&謎解きストーリーの2本柱。
レイさんが誘拐されたと言いつつ、ビネガー6との対決のパズルは、パズル自体が楽しくて、危機感はあまりなく、結末もにっこりほんわかな感じです。
レイさんの学生時代の話は、現代俳句が印象的でした。この辺は大人も楽しめるかも。レイさんの話の謎をマコトが解いてしまうのが、なかなか良かったです。先入観に縛られない立場のほうが、視野が広がるのかもしれませんが…(^^)。
細かい伏線が最後にまとまる感じで、読後感がなあなか良かったです。 -
Posted by ブクログ
“その瞬間。
クラリと。
めまいにも似た感覚がレイをおそった。あらっ、どうしたのかな、わたし?そのとき、伊藤晶子のアルト声のつぶやきが耳にとどいた。
「龍は怖いですわね、野沢レイさん」
えっ?なにをいわれたのか、レイはとっさに理解できなかった。
「あの……いま、なんと?」
「ほほほ、なんでもありませんわ。では、きょうはこれで」
伊藤晶子は教室の引き戸に向かっていく。あっと、そうだわ。ひとついいわすれたことがあったのを、レイは思いだした。
「山頭火ウォーズ!」
うしろから言葉をなげかける。伊藤晶子の足がとまった。ふり返ろうとはせず、背中ごしに問いかけてくる。
「山頭火ウォーズですって?なんですの、それは?」
「自由律俳句戦争のネーミングよ。ウチの今泉部長が考えたのだけれども。どうかしら、伊藤晶子さん?」
「ははあ……なるほどなるほど。ええ、よろしいのではございません。いい呼び名だと思いますわ。そうときけば、『∞』の四人の句士もいっそう士気が高まることでしょう。楽しみですわね、野沢レイさん」
いいのこすと、伊藤晶子は教室から消えた。レイはなおしばらく、その場にたたずんでいた。
なんだか、ずいぶんおおごとになってきたな。レイは前髪をかきあげる。さまざまな疑問だ、どっと頭に押し寄せてきた。”
あ、やばい。
前作の内容忘れてる……。
“午後二時。
イギリス埠頭の波止場に、レイはひとりで立ちつくしていた。月光横丁を通りぬけ、まっすぐここにやってきたのだ。
海面をわって吹きよせる風が、レイの髪をかき乱す。
レイの心も千々に乱れていた。
流川幻水からきかされた話。
古書店の名前同様、実態のないひとつのまぼろしみたいな話だった。
そんな話に乗れるわけがない。ふつうなら。
でも。
おもしろそう。
レイの頭のなかに、そうささやく声があった。もしかしたらレイの「探偵脳」が、そうと語りかけてきたのかもしれない。
どうしよう。
レイは迷った。
迷ったいっぽうで、レイは予感してもいたのだった。わたし、きっと、流川幻水と手を組むことになるのだろうな、と……。” -
Posted by ブクログ
パスワードシリーズ第10弾。
前作の『パスワード龍伝説』の続編ですが、別の話としてもちゃんと楽しめます。
前作の事件の続きを解決するためににロンドンに向かったレイと電子探偵団のメンバー。ロンドンで出迎えてくれるはずのアイザック・ホームズは何者かに誘拐され、アイザックは監禁されている場所で彼なりに事件を推理、レイは『パスワード龍伝説』で関係した“伯爵”に呼び出され単独行動しながら推理、そして電子探偵団のメンバーはホームズ家の執事カトーと一緒に赤いドラゴンの謎解きや、誘拐されたアイザックの居場所などを推理。彼らの推理が、最終的にウェールズのリデル城で合流し、過去の作品で出てきた田中一茶青年も登場して、事件を解決。という話。
舞台がロンドンだけに、マザーグースの詩の引用がそこかしこに登場していて、イギリスらしくもあり、マザーグース好きの血をくすぐられました。
事件はアーサー王伝説に擬えられているので、アーサー王伝説をしっていればもっと楽しめるかも。
全体的にパズルはいつもより少なめではありますが、推理が多めで心地よく、ストーリーも深くて大人まで楽しめる作品だと感じます。
赤いドラゴンの謎を解く時に、ダイや飛鳥の知識とマコトとみずきの勇気をまとめているのが、電子探偵団のチームワークの良さが出ていて良かったです。 -
Posted by ブクログ
“「いっしょにやらない?」
お菊はすごくびっくりしてた。及び腰で、いまにも逃げ出しそうに見えた。こいつはこういうときに遠慮するから友だちができないんだ。あたしはそう思って言った。
「自分から勇気を出して入っていかなきゃ、いつまでたっても自分の居場所は手に入らないよ。居場所は自分で作るもんなんだよ」
ボールを差し出すと、お菊はこわごわといった感じで受け取った。それがお菊が野球の輪に加わるきっかけだった。”
あさのあつこ「ヨキナマ、ヨキナマ」
椎名誠「働く子どもたち」
関口尚「代打の女神様」
宗田理「ネコになった少年」
はやみねかおる「幽霊屋敷にて人喰い鏡を見る」
松原秀行「キャベツ畑のトリケラトプス」
やっぱはやみねさんのが一番好きだ。
快人と春奈は楽しすぎる。
もちろん、長曽我部先輩も。
“そのとき、ぼくの母が、冷えた麦茶を持ってきた。
コンマ一秒の素早さで、春奈が正座する。フィンをつけたままで、この素早い動き。さすがだ。
「おばさま、おじゃましてます」
優雅に頭を下げる春奈は、どこからみても良家のお嬢様だ(頭に、水中眼鏡をのっけているけどね)。
そして、母に告げ口する。
「快人ったら、海に行かないって言うんですよ。残りの夏休みを、本を読んで過ごすって言って」
「あらあら、困った子ね」
溜息混じりに言う母。
「この子ったら、少しも外へ行こうとしないから……。漂白剤に浸したモヤシみたいに白いでしょ。春奈ちゃんみたいに、よく日焼けした子がうらやましいわ」
「日焼けは、歳をとってからシワやタルミの原因になる。皮膚ガンの心配もある。―――母さんは、ぼくが皮膚ガンで死んでもいいって言うの?」
「引きこもりの理屈オバケになられるよりは、ましよ」
ぼくの主張を、母は溜息で吹き飛ばす。
そして、春奈に飛び切りの笑顔を向けた。
「たいへんだけど、快人の面倒を見てあげてね」
「任せてください、おばさま」
全てわかっているという顔で、春奈がうなずいた。”