【感想・ネタバレ】角川つばさ文庫書き下ろし短編集 きみに贈る つばさ物語のレビュー

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Posted by ブクログ 2010年03月16日

“「いっしょにやらない?」
お菊はすごくびっくりしてた。及び腰で、いまにも逃げ出しそうに見えた。こいつはこういうときに遠慮するから友だちができないんだ。あたしはそう思って言った。
「自分から勇気を出して入っていかなきゃ、いつまでたっても自分の居場所は手に入らないよ。居場所は自分で作るもんなんだよ」
...続きを読むボールを差し出すと、お菊はこわごわといった感じで受け取った。それがお菊が野球の輪に加わるきっかけだった。”

あさのあつこ「ヨキナマ、ヨキナマ」
椎名誠「働く子どもたち」
関口尚「代打の女神様」
宗田理「ネコになった少年」
はやみねかおる「幽霊屋敷にて人喰い鏡を見る」
松原秀行「キャベツ畑のトリケラトプス」

やっぱはやみねさんのが一番好きだ。
快人と春奈は楽しすぎる。
もちろん、長曽我部先輩も。

“そのとき、ぼくの母が、冷えた麦茶を持ってきた。
コンマ一秒の素早さで、春奈が正座する。フィンをつけたままで、この素早い動き。さすがだ。
「おばさま、おじゃましてます」
優雅に頭を下げる春奈は、どこからみても良家のお嬢様だ(頭に、水中眼鏡をのっけているけどね)。
そして、母に告げ口する。
「快人ったら、海に行かないって言うんですよ。残りの夏休みを、本を読んで過ごすって言って」
「あらあら、困った子ね」
溜息混じりに言う母。
「この子ったら、少しも外へ行こうとしないから……。漂白剤に浸したモヤシみたいに白いでしょ。春奈ちゃんみたいに、よく日焼けした子がうらやましいわ」
「日焼けは、歳をとってからシワやタルミの原因になる。皮膚ガンの心配もある。―――母さんは、ぼくが皮膚ガンで死んでもいいって言うの?」
「引きこもりの理屈オバケになられるよりは、ましよ」
ぼくの主張を、母は溜息で吹き飛ばす。
そして、春奈に飛び切りの笑顔を向けた。
「たいへんだけど、快人の面倒を見てあげてね」
「任せてください、おばさま」
全てわかっているという顔で、春奈がうなずいた。”

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