西崎憲のレビュー一覧
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「あいつらにはジャズと呼ばせておけ」これは痺れる。
ジーン・リースについては、英国植民地ドミニカ生まれ育ちの白人に対する、本国イギリス人からの蔑視(こいつらは本物のイングランド人ではない)を抜きにしては語れない。
生まれ育った故郷であるカリブの島では支配層でありながら、母国であるはずのイギリスでは一段下の存在として扱われる。同時に、育った島は白人プランターへの憎悪を募らせてゆき、支配者としての一族は没落してゆく。
どこにも居場所がない感覚、帰属先を失った異邦人。
そしてもう一つは、女性が社会的、経済的に男性の管理下にあった時代への反逆だ。
コーラスガールやモデル(マヌカン)として働いたジー -
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フットサルの小説だけど、フットサル以上のものがたくさんあった。
主人公は、大学受験に二度失敗し、浪人をしながらアルバイトを転々として暮らしている松永おん。おんはかつて双子の弟がいたことから、自分は半分だけの存在だという意識を持って生きている。彼の日常に起こるささやかな出来事と心の動きを解像度高く綴っている。
ファンタジーノベル大賞を受賞してデビューされた方だけど、本作は純文学に近いと思う。
何をやっても、どこかどんくさい主人公。自分に自信はない。二浪しているにも関わらず、焦りは少なく、実家から出て弁当屋のアルバイトと仕送りで生計を立てている。
ある日、おんは高校時代の部活・写真部の集ま -
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代表作「キュー植物園」など20篇を収録した短篇集。
以前から唱えている〈ヴァージニア・ウルフ=少女漫画説〉が、この短篇集を読んでより自分のなかで強固なものになった。小動物や植物、世間的には取るに足らないとされる小さなものたちにシンパシーを感じ、そこに個人的な象徴や啓示を見いだしていくモチーフの使い方。ディテールに注ぐ偏執的な凝視。言葉になる前の不定形な感情をとらえようとしてあふれだす、言いさしのような未然の文体。
これらはみな、萩尾望都や大島弓子などの作品にある謎めいたほのめかしや、わかりきれないけど「わかる」と思わされてしまうモノローグの魅力にとても近いのではないか。漫画家が絵と言葉を組 -
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東京創元社のSFアンソロジーの二巻目。二〇一九年十二月刊行。まだコロナ禍やリモートばかりの生活を知る前の作品だけど、「あれ、なんだか今っぽい」と感じられるものもあって、フィクションの奥深さを思った。一巻を読んだときに比べて私のSF受容力も上がったのか、どれもそれぞれ大変楽しめた。
■高島雄哉『配信世界のイデアたち』
昔、かこさとしの『ほしのほん』シリーズを読んで、宇宙には「銀河」というものがたくさんあるということを知ったとき、もしかしたらはるかかなたの銀河のどこかに、私みたいな女の子がいて今同じように宇宙の本を読んでいるかもしれない…という想像をした。そんなことを思い出した。
■石川宗生『モ -
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浪人生の「おん」は、弁当屋でアルバイトしながら、漠然と受験勉強をする毎日。でも4か月前からフットサルのスクールに通いはじめて、目に見えないくらいじわじわと世界が広がりはじめる。
大きなドラマがある小説ではない。でも、多くの人の人生がそうであるように、日々のほんの小さなできごとの積み重ねで、ほんの少しずつ何かが変わっていく。そのようすが静かな筆致で、でもときにぐふっと笑ってしまうようなユーモアを交えながら描かれているのがとても好きだった。
おんは、自分は頭もとりたててよくはなく、「自分にしかできないこと」というような才能もない、と劣等感を抱えている。しかも生まれたときは双子だったのに、片割れ -
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なんか最近、アンソロジーばっか読んでるような…。
2019年12月刊行の日本SFアンソロジー。短編7編とエッセイ2編が載っています。
第1集の『一万年の午後』のレビューで書いたのですが、ちょっと良いレストランで頼む「おまかせコース」がまさにアンソロジーだと思います。
「おまかせ」とは言え、オードブルからデザートまで全てパイ包み焼きだったらイヤだし、全部がココナッツ風味だったらもっとイヤな訳です(笑 たとえ、どれも単品としては超美味しかったとしても!
その意味では編集者(本著エッセイで言うところの「アンソロジスト」)の役割は非常に大きく、しかも料理とは違って、「これはケーキだからデザート」的な -
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ヴァージニア・ウルフの本は2冊目。
ウルフは「意識の流れ」という文学的手法を使ったことで有名。
調べてみたら、意識の流れとは、人物の思考や感情が、川の流れのように途切れなく変化していく様子を表現する方法。出来事を客観的に書くのではなく、人物の主観的な視点から、思考や感情の動きを直接的に書くことが特徴。
という説明があったけど、個人的には客観的に感じちゃったな。
思考や感情が途切れなく変わっていくところがのめり込めなかったのか、フィルターを通して世界を見ているような、夢の中にいるような、そんな感覚がずっと続く。
話は入ってきにくかったから読み切れるか心配だったけど、読み心地は嫌いじゃない。
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絶版のちくま文庫版と収録作品はほぼ同じ。以前読んだとき同様、やはり「キュー植物園」の完成度がとびぬけてすばらしい。園を行き交う人びとが、ありえたかもしれない過去に思いをよせたり、でもいま手にしているこの現実でよかったんだと思いなおしたりする意識の流れが、花々や蝸牛の描写をおりまぜつつ見事に点描されている。絵で喩えるならジョルジュ・スーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」のよう。
他には「堅固な対象」「池の魅力」も好み。一方、焦点のない構図で撮影された写真みたいに、とりとめがなくてよくわからない話も。
【ノーツ】
▶20世紀は「メタ」の時代
・訳者解説によると、ブルームズベリー・グ -
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浪人生の日常の物語。
フットサルや読書サークルという新しい環境に自らを置き、何か大きな出来事がある訳ではないけど、ちょっとずつ緩やかに変化していく主人公。
浪人生だけど、あまり受験勉強とかのシーンはありません。フットサルのシーンがメインかな。
何となく、こんなゆるゆるだらだらした雰囲気、嫌いじゃない。実際大学生とかもこんな感じだよね。主人公は大学生じゃないけど。でも、リアル。
自分も浪人してたから、既に大学生になっている友達や社会人に対しての妙な劣等感というかちょっとモヤモヤした気持ちよく分かる。
19歳とか20歳って、いちばん中途半端な期間な気がする。
大学生になっていればまだしも、浪人 -
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