あらすじ
――わたしはどこにも属していないし、属すためのやりかたを買うお金もない。
カリブ海生まれのジーン・リースは、ヨーロッパでは居場所を見出せない、疎外された人であった。しかも女性である。
自身の波乱に富んだ人生を下敷きにした、モデル、老女、放浪者などの主人公たちは、困窮、飲酒、刑務所暮らし、戦争と数々の困難を生きる。
だが彼女らはけっして下を向かない。
慣習と怠惰と固定観念をあざ笑うように、したたかに生きる。
《いま新たな光を浴びる、反逆者リースの本邦初、珠玉の作品集》
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【目次】
■あの人たちが本を焼いた日……The Day They Burned the Books
■あいつらにはジャズって呼ばせておけ……Let Them Call It Jazz
■心霊信奉者……A Spiritualist
■マヌカン……Mannequin
■フランスの刑務所にて……From a French Prison
■母であることを学ぶ……Learning to Be a Mother
■シディ……The Sidi
■飢え……Hunger
■金色荘にて……At the Villa d'Or
■ロータス……The Lotus
■ではまた九月に、ペトロネラ……Till September Petronella
■よそ者を探る……I Spy a Stranger
■堅固な家……A Soild House
■機械の外側で……Outside the Machine
■「ジーン・リース」へのピクニック……西崎憲
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感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「あいつらにはジャズと呼ばせておけ」これは痺れる。
ジーン・リースについては、英国植民地ドミニカ生まれ育ちの白人に対する、本国イギリス人からの蔑視(こいつらは本物のイングランド人ではない)を抜きにしては語れない。
生まれ育った故郷であるカリブの島では支配層でありながら、母国であるはずのイギリスでは一段下の存在として扱われる。同時に、育った島は白人プランターへの憎悪を募らせてゆき、支配者としての一族は没落してゆく。
どこにも居場所がない感覚、帰属先を失った異邦人。
そしてもう一つは、女性が社会的、経済的に男性の管理下にあった時代への反逆だ。
コーラスガールやモデル(マヌカン)として働いたジーン・リースは、パトロン気取りの男性による、若さや美しさへの賞賛の裏に、女性の知性や下層階級への嘲りが併存することを鋭敏に察している。
「あいつらにはジャズと呼ばせておけ」にも、これらの要素が盛り込まれている。
肌の色の差別、階級差別、女性蔑視、貧困と飲酒癖に飲み込まれて、足場を失いずるずると“堕ちてゆく”ような生活。
でも、僕が痺れたのは、逆境への反抗、不屈といった文脈ではない。
白色/有色、富裕/貧困、男性性/女性性、これらは相対性の概念に過ぎない。
主人公の内にに呼び覚まされた歌は、相対性で象られた世界と壁を飛び越えて、その外へと繋がっている。
カテゴライズやレッテルは、鮮やかに無効化される。
彼女を取り巻く人びとの悪意も、得た金の出どころも、狭量な社会規範も、もはや彼女を傷つけ、損なうことはない。
だからこの短編を、民族的アイデンティティの発露とは読まない。黒人奴隷の歌/白人のジャズ、ほんもの/にせものといったレッテルもまた、無意味なカテゴライズだろう。
もはや、どこかに属すことなど求めない。その孤高と不遜なまでの逞しさ。
“もしトランペットであれを吹いたとしても、たとえわたしが望むように、正しく吹いたとしても簡単に崩れる壁などない。「だから、あいつらには、ジャズって呼ばせておけ」と私は思う。間違ったまま吹かせておけばいい。それはわたしが聞いた歌を傷つけることはできない。”
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“あの嫌なじいさんは、自分がむしろ好かれているのだと知ったらなんと言うだろうか。包み隠さないあの憎しみや侮りはむしろ気晴らしになるのだ。新聞記事の行間や本の表紙で蛇みたいな声をあげている憎悪に比べれば。ずるい笑みの奥に潜む憎悪に比較すれば。女? ああ、女か。 女はこうしなければ、女はそうしたいだろう、女はこうするだろう。”
Posted by ブクログ
鈴木いづみを思わせる感じ。強そうで脆い、メチャクチャなのに彼女の中には切実で変えられないものがある、それが文章から伝わってくる。女嫌いなのに女に注目する感じも似ている。
鈴木いづみは空虚な時代に生まれたと感じていたけどジーンさんは激動の時代と激動の人生を生きた。鈴木いづみはジーン・リースを読んだのだろうか?読んでいたら自分のことのように感じたのではないか。
危うげで、強かで、嘆いてるけど笑ってる。
周りを見るときの目が似ているのかな。
Posted by ブクログ
そう言えばジーン・リースって短篇を読んだことなかったなあと思っていたら、それもそのはず、本邦初だそう。
結構無頼だなと思うんだけれど、時々クスッと笑ってしまうユーモアもあるんだよ。